海員閣
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/20 08:12 UTC 版)
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海員閣(2024年2月24日撮影)
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| 種類 | 特例有限会社 |
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| 本社所在地 | 〒231-0023 神奈川県横浜市中区山下町147番地 北緯35度26分35秒 東経139度38分45秒 / 北緯35.44306度 東経139.64583度座標: 北緯35度26分35秒 東経139度38分45秒 / 北緯35.44306度 東経139.64583度 |
| 設立 | 1936年 |
| 業種 | 小売業 |
| 法人番号 | 9020002041924 |
| 事業内容 | 広東料理の中華料理店 |
| 外部リンク | www7b |
海員閣(かいいんかく)は、神奈川県横浜市中区山下町の横浜中華街・香港路にある広東料理の中華料理店[1][2]。1936年創業の老舗として知られる[3][4]。
中華街大通りから香港路に入った路地に位置し[3][5]、かつては平日でも行列ができる[1][6]「中華街屈指の行列店」と評されていたが[2][7]、2022年9月以降は完全予約制となっている[8]。
歴史
1936年(昭和11年)創業[3][8]。初代は聘珍楼の料理長だった張汝琛(中国出身[3])で[9][7]、店名は、外国船の船員を主な客として始めたことに由来する[3]。
2017年7月から長期休業し、代替わり・厨房改装を経て[3]、2018年5月に昼のみ・1階席のみの「試運転営業」を再開した[10][11]。創業以来コークス窯を用いていたが[2][7]、維持管理の事情などから2017年6月末の閉店時に使用を終了し[12]、再開後はガス火に転換した[3][13]。
2022年9月以降、店主1名による体制となり、完全予約制でコース料理の提供と焼売の土産販売を行っている[8]。
主なメニュー
長く継承されている品として、豚バラ・牛バラの煮込み(そば・飯)、焼売[14]、車海老の殻煮などがある[4][10][15]。豚バラ肉は塊のまま茹で、揚げたのちに煮込む調理法が用いられており[3]、牛バラは八角や桂皮などの香辛料とともに加熱され、口の中でほろりと崩れる軟らかさになる[15][7]。
文化における言及
- 小津安二郎の日記には、同店での食事の記述が繰り返し見られ、サンマーメンと焼売を好んでいたという[16][17]。小津は松竹関係者や俳優、共同脚本家の野田高梧らとともに、同店をよく訪れ、くつろいだ雰囲気の中で食事や酒を楽しんでいたという[16]。『小津安二郎の食卓』を著した貴田庄も同店を訪れており[16]、同書で「海員閣こそが『秋刀魚の味』の脚本に登場するサンマーメンの出どころに違いない」と述べている[17][18]。
- 獅子文六は海員閣を称賛しており、エッセイ『二人の中国料理人』では創業者の張汝琛を紹介している[7]。また、小説『やっさもっさ』には「水師閣」の名で登場する[7][9]。
- 漫画『美味しんぼ』2巻「手間の価値」(1985年刊)に登場する店「大南楼」のモデルとされる[10]。作中では、主人公・山岡士郎が接客に不満を募らせる場面が描かれているが[10]、後年の報道では温かい雰囲気の店として紹介されている[10][15]。
出来事
2020年3月3日、新型コロナウイルス流行下で、中国人を中傷する匿名の手紙が店舗に届いた事案が報じられた[19][20][21]。その後、SNS上の応援や「料理を食べて応援しよう」という支援の動きが伝えられた[22][23][24]。
ギャラリー
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店舗外観(2014年10月)
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店内と豚バラ飯(2014年10月)
脚注
- ^ a b “横浜中華街老舗路地裏の名店「旧海員閣」”. 横浜中華街ガイドマップ. 2018年7月8日閲覧。
- ^ a b c “チャイナタウン・ヒストリア Vol.1 海員閣〜80年以上受け継がれるコークスの窯”. 横浜中華街発展会協同組合. 2018年7月8日閲覧。
- ^ a b c d e f g h “神奈川・横浜中華街で大人気の「豚バラそば」…肉は麺が隠れるほどの大きさ”. 読売新聞 (2022年4月8日). 2025年10月7日閲覧。
- ^ a b “中華料理 海員閣 コンセプト”. 海員閣. 2018年7月8日閲覧。
- ^ “横浜中華街への「知的空腹」を満たす 山下清海著『横浜中華街』”. 好書好日 朝日新聞 (2022年1月26日). 2025年10月7日閲覧。
- ^ “横浜ランチlog Vol.06「海員閣」(中華街)”. 公益財団法人横浜市芸術文化振興財団 (2014年5月16日). 2018年7月8日閲覧。
- ^ a b c d e f 今柊二「海員閣 27年間食べなかったことを後悔する「名門」の味」『土曜の昼は中華街』神奈川新聞社、2013年12月1日、176-177頁。ISBN 978-4876455119。
- ^ a b c “トップページ”. 海員閣. 2025年10月7日閲覧。
- ^ a b 櫻井澄夫. “時代の変化を感じることへの 反省と今だからこその重要性” (PDF). 月刊消費者信用 2022年7月号. 2025年10月7日閲覧。
- ^ a b c d e Taka (2018年10月7日). “「早く席についてよ、忙しいんだからッ!」 美味しんぼに出てきた横浜中華街の伝説のお店は今”. ガジェット通信. 2025年10月7日閲覧。
- ^ “試運転営業詳細”. 海員閣 (2018年5月28日). 2018年7月8日閲覧。
- ^ “代替わりに伴いリニューアル 横浜中華街老舗路地裏の名店「旧海員閣」”. 横浜中華街ガイドマップ. 2018年7月8日閲覧。
- ^ “代替わりに伴いリニューアル 新海員閣の再開予定”. 横浜中華街ガイドマップ. 2018年7月8日閲覧。
- ^ シュウマイ潤 (2021年6月3日). “横浜とシュウマイと私「中華街は多様でシュウマイ」”. タウンニュース 中区・西区・南区版. 2025年10月7日閲覧。
- ^ a b c “横浜中華街ぶらり散策(3)海員閣【牛バラそば】伝承の秘伝スープ絶品”. 神奈川新聞 (2015年4月23日). 2025年10月7日閲覧。
- ^ a b c 斎藤博美 (8 February 2015). “(小津安二郎がいた時代)横浜中華街 大勢での食事が好き”. 朝日新聞・朝刊・首都4県. p. 36. - 朝日新聞クロスサーチにて閲覧
- ^ a b 原達郎 (12 February 2004). “ラーメン人模様 小津監督と「サンマーメン」”. 読売新聞・西部夕刊. p. 3. - ヨミダス歴史館にて閲覧
- ^ 貴田庄「味の散歩<横浜・中華街のサンマーメン>」『小津安二郎の食卓』Jパブリッシング、2000年8月1日、76-81頁。 ISBN 978-4826101523。
- ^ “「中国人はゴミだ!」 横浜中華街の老舗に中傷の手紙”. 神奈川新聞 (2020年3月4日). 2025年10月7日閲覧。
- ^ “横浜中華街の老舗にヘイト封書 「中国人はゴミだ!」 店主「お客さんのため頑張る」”. 毎日新聞 (2020年3月4日). 2025年10月7日閲覧。
- ^ “横浜中華街ヘイト封書 飲食店組合、県警に被害相談”. 毎日新聞 (2020年3月7日). 2025年10月7日閲覧。
- ^ “「アジア人差別報道を許すな」米ジャーナリスト協会が警告”. Newsweek (2020年3月5日). 2025年10月7日閲覧。
- ^ “名物料理〝食べて〟応援しよう ヘイト手紙届いた老舗に列”. 神奈川新聞 (2020年3月8日). 2025年10月7日閲覧。
- ^ “横浜中華街の老舗店 コロナ誹謗中傷から一転、応援客で長蛇の列”. 週刊ポスト (2020年3月21日). 2025年10月7日閲覧。
外部リンク
- 中華料理 海員閣公式サイト
- 海員閣 (@kaiinkaku) - X
- 海員閣のページへのリンク