松井昇_(画家)とは? わかりやすく解説

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松井昇 (画家)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/14 15:47 UTC 版)

松井 昇(まつい のぼる、1853年嘉永6年)12月17日[1] - 1932年[2]、ないし、1933年[3])は、明治から昭和初年にかけて活動した日本洋画家

経歴

但馬国出石藩城下町であった出石(後の豊岡市の一部)に、出石藩士・松井雄記の長男として生まれたが、両親を早くに亡くし、弟とともに、叔父にあたる中村家に引き取られて育つ[1]

明治維新の後、上京して川上冬崖の私塾であった聴香読画館に学び、日本における草創期の洋画の第一人者であった冬崖の下で、実用的な写実を重んじる形で、西洋絵画の技法を学んだ[1]

1876年11月、工部美術学校(後の工部大学校)に、創設とともに入学し、アントニオ・フォンタネージの指導を受けた[2]1881年の時点では、東京大学小石川植物園画工兼事務掛として勤務していた[4]

1887年東京府の工芸共進会以降、様々な展示会に出品し、浅井忠小山正太郎らと並んで、洋風美術家の代表格と目されるようになっていった[2][5]1889年には、浅井、小山らとともに明治美術会を結成し[2][6]印象派の影響が日本にも及ぶようになる以前の洋画界において、中核的な地位を占めた[2]

松井は、美術教育の教鞭を執る機会もあり、明治女学校滋賀県師範学校東京高等商業学校などで教壇に立った[2]1901年から1912年にかけて西洋画を教えた日本女子大学校における教え子のひとりが、長沼智恵子(後に高村光太郎の妻となり高村智恵子として知られる)で、智恵子は後には松井の助手も務め、松井の影響もあって明治美術会の後身にあたる太平洋画会に入会したものと考えられている[7]

松井は、同郷の妻とともに、プロテスタントの信仰をもったキリスト教徒であり、本郷教会牧師であった海老名弾正とも交流があった[2]。また夫婦とも佐佐木信綱門下の歌人であった[8]

彫刻家荻原碌山とは家族ぐるみの親交があった[9]。碌山は、1899年明治女学校の校長であった巌本善治から、絵画教師の適任者について問われた際に、松井を推したことを日記に書き残しており、「松井氏は極めて温好の人、決して名を求めず、依て第一流には出でざるも手腕決して二流に下らず。人物に於て温厚、一点の申分なし。依て同氏に付きて学ぶをよしとす。」と松井の人物評を記した[10]

松井は、最期は静岡県で没した[2][3]。没年については1932年とする資料[2]のほか、1933年とするものもある[3]

代表作

松井が小石川植物園の画工として制作した植物画は、東京大学大学院理学系研究科附属植物園のオリジナルグッズにも流用されている[12]

脚注

  1. ^ a b c 岡本,1986,p.490
  2. ^ a b c d e f g h i j k 岡本,1986,p.491
  3. ^ a b c 松井昇」『ART PLARFORM JAPAN』国立美術館国立アートリサーチセンター(NCAR)。2025年8月14日閲覧
  4. ^ 藏田愛子「明治10年代の東京大学理学部と画工」『生物学史研究』第94巻、日本科学史学会生物学史分科会、2016年8月31日、37頁、 CRID 1390564238097393152 
  5. ^ 隈元,1957,p.5 (p.99)
  6. ^ 隈元,1957,p.6 (p.100)
  7. ^ 二本松市智恵子講座’15 「松井昇と太平洋画会研究所」。」高村光太郎連翹忌運営委員会、2015年12月21日。2025年8月14日閲覧 - 講座の講師は坂本富江。
  8. ^ 岡本,1986,p.492
  9. ^ 岡本,1986,pp.491-492
  10. ^ 喜田敬「碌山の言葉 “LOVE IS ART, STRUGGLE IS BEAUTY.”の考察(前編)」『聖学院大学論叢』第6巻、1994年、100頁、 CRID 1050001202555464576 
  11. ^ 徳武敏夫二章 わたしと教科書 / 8 「F項パージ」事件」北山敏和。2025年8月13日閲覧 - 初出:徳武敏夫『母と子でみる私たちの教科書』草の根出版会、1997年。 
  12. ^ 植物園オリジナルグッズ・出版物東京大学大学院理学系研究科附属植物園。2025年8月14日閲覧

参考文献




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