とうきょうだいがく‐アタカマてんもんだい〔トウキヤウダイガク‐〕【東京大学アタカマ天文台】
読み方:とうきょうだいがくあたかまてんもんだい
東京大学アタカマ天文台
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/09 07:27 UTC 版)

東京大学アタカマ天文台[1](とうきょうだいがくアタカマてんもんだい、Tokyo-Atacama Observatory Project)は、口径6.5mの光学式光赤外線天体望遠鏡を南米チリ共和国北部アタカマ砂漠のチャナントール山山頂(標高5,640m)に建設する計画のこと。略称はTAO計画[1]。2022年度中のファーストライト、2023年度から本格運用を目指して建設が続けられている。ダークエネルギー、銀河・惑星系の起源などの解明を目的とし、東京大学天文学教育研究センターが国立天文台などの協力して進めている。
建設
1993年から1999年までの気象データを元に雲量等を調査、1999年から2004年にかけて8回の地形調査を実施した[2]。風速、気温、湿度などの気象データやシーイングの計測により、可視光・赤外線観測に適した土地であることが確認された[2]。晴天率は70%とマウナケアの50%より高く、シーイングは中間値で0.69秒角と世界の名だたる観測サイトに勝るとも劣らないことがわかり、光・赤外線天体望遠鏡の設置に最も適した箇所であることが示された[3]。
2007年春より、地元の協力を得てチャナントール山へアクセス道路の整備を開始し、望遠鏡の設置の準備を進めている。
6.5m望遠鏡の建設に先駆け、そのパイロット的な観測を行うために口径1mの光学式反射天体望遠鏡(miniTAO望遠鏡)が現地に設置され、2009年から観測を行った。観測装置は、近赤外線カメラと中間赤外線カメラである[4]。
- 1m望遠鏡 (miniTAO) [5]
- 光学系 :リッチークレチアン型反射式赤外線望遠鏡
- 有効口径:1000mm
- 副鏡口径:222.88mm
- 合成焦点:120000mm(F12.0)
- 焦点系 :カセグレン焦点
- 観測波長:可視光, 近赤外線, 中間赤外線
- 架台 :経緯台式
- 駆動 :フリクションドライブ
- 制御 :自動制御
- 観測機器:近赤外線カメラANIR, 中間赤外線カメラMAX38
2014年11月、アントファガスタ州サンペドロ・デ・アタカマ (San Pedro de Atacama) 山麓研究施設が完成[6]。山頂施設の完成まで建設拠点として、その後は研究施設として使用される。
6.5m望遠鏡は東大天文学教育研究センターが日本国内で完成させ、2018年1月に報道機関へ公開された[7]。
望遠鏡仕様
主鏡にはオハラ社のボロシリケイト製ハニカム軽量鏡が用いられる。自重を支えるのに十分な厚みを持ちながら、ハニカム構造によって重量を抑えている[8]。主鏡のパラメータはラス・カンパナス天文台の2台の6.5 m反射望遠鏡の1つマゼラン2 クレイ望遠鏡のものを基本的に踏襲しているため、製作時の検査機器の流用で製作費用が節減された[8]。主鏡の蒸着は現地で行われ、可視・近赤外線を広く観測するため、また将来的に近紫外線まで観測範囲を広げる可能性も視野に入れて、銀や金ではなくアルミニウムを蒸着する[9]。
- 光学系:リッチークレチアン型反射式天体望遠鏡
- 有効口径:6.5m
- 主鏡材質 :低膨張ガラス(オハラ社BSCガラス)
- 焦点系 :3箇所(ナスミス焦点2箇所、カセグレン焦点)
- 合成焦点:F12.2
- 架台 :経緯台式
- 制御 :自動制御
- 観測装置:近赤外線2色同時多天体分光器SWIMS, 中間赤外線分光撮像装置MIMIZUKU
脚注
出典
- ^ a b “東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画”. 東京大学大学院理学系研究科 TAO計画推進グループ. 2018年2月3日閲覧。
- ^ a b “観測条件の調査”. 東京大学大学院理学系研究科 TAO計画推進グループ. 2021年9月14日閲覧。
- ^ 東京大学大学院理学系研究科 TAO計画推進グループ 2012, pp. 186–187.
- ^ “1m望遠鏡”. 東京大学大学院理学系研究科 TAO計画推進グループ. 2021年9月14日閲覧。
- ^ 東京大学大学院理学系研究科 TAO計画推進グループ 2012, pp. 197–216.
- ^ “サンペドロ市にてTAO山麓研究施設の開所式を開催”. 東京大学大学院理学系研究科 TAO計画推進グループ (2014年11月21日). 2021年9月14日閲覧。
- ^ “世界「最高」の大型望遠鏡完成=銀河誕生の謎迫る、チリで観測へ-東大”. 時事通信社. (2018年1月28日). オリジナルの20180204時点におけるアーカイブ。 2018年2月3日閲覧。
- ^ a b 東京大学大学院理学系研究科 TAO計画推進グループ 2012, pp. 123–124.
- ^ “6.5m望遠鏡”. 東京大学大学院理学系研究科 TAO計画推進グループ. 2021年9月14日閲覧。
参考文献
- 東京大学大学院理学系研究科 TAO計画推進グループ (2012-03). TAOプロジェクトブック第2版
関連項目
- 推進組織
- 技術指導など
- 設備
- 先行研究
- 関連観測装置
- 設置場所
- 研究分野
外部リンク
固有名詞の分類
- 東京大学アタカマ天文台のページへのリンク