忍刀とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 文化 > 武具 > > 忍刀の意味・解説 

忍刀

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/29 01:15 UTC 版)

忍刀

忍刀(しのびがたな・にんとう)は、忍者が使用したとされるであり、忍者刀(にんじゃとう)ともいう。実際に忍者がこの刀を使っていたかどうか、疑わしいとする考察がある(後述)。

形状

現在「忍刀(忍者刀)」として伝えられているものは、普通の打刀脇差の中間の長さ、長脇差と分類されるサイズのものが大半である。日本刀独自の反りは少なく、「直刀」に分類される刀身形状である。

は大き目で角張っており、下緒は普通の刀のものより長く、鞘は光を反射して目立たないように艶消しに仕上げられ、先端の鐺(こじり)は金属製で鋭角に仕上げられている。

用法

忍刀のは大き目で角張っており、ここに足をかけて踏み台代わりにも使用された。刀には普通鞘に下げ緒という紐がついているが、忍刀のそれは普通の刀のものより長く、刀を1mほどの踏み台代わりに使った後、回収するのに利用できた。鞘は黒塗りだが反射して目立たないように艶消しされ、先端の鐺(こじり)は地面に突き立てやすくしたり、武器として使用するために金属製で鋭角に仕上げられていた。また、これを取り外すことができるものもあり、ここに薬などを収納したり、また筒状になった鞘をシュノーケルのように使って水中に隠れるときに使ったともいう。しかし物理的にみて、鞘はシュノーケル代わりに使うには長すぎて、よほどの肺活量をもつ者でなければ呼吸が難しくなるため、現在ではその方法は実際には用いられなかったのではないかと考えられている(分解できた可能性はあるが現存しない)。

忍刀を用いての戦い方に、「座探りの術」といわれる技術がある。暗闇の中で戦う時、鞘を刀の先に引っかけて相手の位置を探るのである。先に引っかけるので当然長さは2倍になる。この時、下げ緒の端を口にくわえる。鞘の先が相手に当たって外れたとき、または鞘を相手が切り払ったところで直進して刺す。鞘は吹き飛ぶが、下げ緒を口にくわえてあるので暗くても回収できる。

もっとも、忍者は直接戦闘することを極力避けた。侍が用いる普通の刀に比べ忍刀は短く、反りが少ないために切断力が劣る。極端に狭い場所を除き、技量が拮抗していれば明らかに不利である。

忍刀の携行方法

野太刀の背負い方を示した図
(江戸時代に描かれたもの)

フィクションでは忍者は忍刀を右肩から左腰にかけているが、このような方法で忍刀を携行すると長さにより抜けない。よって大太刀の携行方法と同様に、刃を上に向けて左肩から右腰に背負う場合が多い。抜き方も大太刀と同様であり、右利きの場合は左手で鞘の鯉口近くを掴み、刃を上に、鯉口を相手の正面側に向け、右手で柄を持って鯉口を切り、右手を前に伸ばしながら抜く。忍刀の使い手によっては忍刀を抜きながら右手だけで左袈裟斬りをする場合もある。

実在についての考察

「忍刀(忍者刀)」と呼ばれる刀剣は実在してはいる。しかし

  • 庶民に紛れ人目を忍んで任務に当たる者がそのような特殊な造りの刀を携行すれば無意味に人目について目立ってしまうこと
  • 前述のように鍔を踏み台にするといくら身軽でも構造的に柄や鞘が破損する。
  • 『忍秘伝』や『万川集海』といった忍術書には忍刀の記載がなく「折れにくいよう重ね厚く幅広い脇差および錐刀を用いる」という内容が剣術の項にあること(江戸時代以降は、武士階級以外の庶民でも役所に届出がありさえすれば、旅の護身用や仇討ち認可などの理由により大脇差までの携行が許された)
  • 伊賀流甲賀流といった一部を除き、他のほとんどの忍術流派がこのような特殊な刀を剣術の際には用いず、脇差および打刀を使用すること
  • 現存している物の多くは明治時代以降に観光施設の展示用として製作された物と言われていること

から、現実に忍がこの形状の刀を装備していたのかについては疑問とする説もある[1][2]。また、同時期に脇差鉄砲や十手鉄砲など蒐集家向けに実用に耐えないネタ武器・秘密兵器が生産されている(一方実用性もある仕込み刀もほぼ同時期に多く生産されている)[要出典]

「忍刀(忍者刀)」の実在については、実際に製作はされていたが徳川幕府に対する反乱のシンボルとして団結のために持っていたという説、山田風太郎の小説『忍法帖シリーズ』で誇張されて登場したものが定着したという説など、諸説が存在する[要出典]

現在でも実在についての真偽は確定していないが、映像作品などに登場する「忍者」は大概がこの「忍刀」を携行するものとして描かれ、観賞用として作られた模擬刀が観光地の土産物や演劇コスプレ用の小道具として、またコレクション用のレプリカ品として販売されている。

国によっては忍刀の所持や販売が禁止されている場合もあり、一例として、イギリスでは2022年に忍刀による殺人事件が発生したことを受けて、2025年8月から同国での所持や販売(製造及び輸入を含む)が禁止される[3]

脚注

  1. ^ 名和弓雄著『間違いだらけの時代劇』『続間違いだらけの時代劇』『図解 隠し武器百科』『絵でみる時代考証百科 日本刀・火縄銃・忍び道具編』
  2. ^ 初見良昭著『戸隠流忍法体術』
  3. ^ 日本テレビ (2025年3月28日). “イギリスで“忍者刀”の所持や販売が違法に 16歳の少年が忍者刀で殺害された事件が契機”. 日テレNEWS NNN. 2025年3月29日閲覧。

関連項目


忍刀

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 14:12 UTC 版)

落第忍者乱太郎」の記事における「忍刀」の解説

狭地で使用できるように通常の刀より短い刀いわゆる小太刀類。その下げ尾の紐通常よりも長く万能なことに使用される

※この「忍刀」の解説は、「落第忍者乱太郎」の解説の一部です。
「忍刀」を含む「落第忍者乱太郎」の記事については、「落第忍者乱太郎」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「忍刀」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



忍刀と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「忍刀」の関連用語

忍刀のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



忍刀のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの忍刀 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの落第忍者乱太郎 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS