幾つかの定理について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/17 04:16 UTC 版)
「完備距離空間」の記事における「幾つかの定理について」の解説
距離空間 X が完備となる必要十分条件は、X の空でない閉部分集合からなり、差し渡しの長さが 0 に収束するような任意の減少列が、必ず空でない交わりを持つことである。式で書けば、Fn を空でない閉集合とし、各 n について Fn+1 ⊂ Fn かつ diam(Fn) → 0 を満たすならば、適当な点 x ∈ X が存在して、x は全ての Fn に属する。 任意のコンパクト距離空間は完備であるが、逆は必ずしも成立しない(完備距離空間はコンパクトであるとは限らない)。実は、距離空間がコンパクトとなることと、完備かつ全有界となることとは同値である。これは、ℝn の任意の有界閉集合がコンパクト、従って完備であることを述べるハイネ・ボレルの被覆定理の一般化である。 完備距離空間の閉部分空間はまた完備である。逆に、距離空間の完備部分集合は必ず閉である。 集合 X と完備距離空間 M に対し、X から M への有界関数全体の成す集合 B(X, M) は完備距離空間である。ただし B(X, M) における距離は M における距離から上限ノルムを用いて d ( f , g ) ≡ sup { d ( f ( x ) , g ( x ) ) : x ∈ X } {\displaystyle d(f,g)\equiv \sup\{d(f(x),g(x)):x\in X\}} と定義する。X が位相空間でもあるとき、X から M への有界連続写像全体の成す集合 Cb(X, M) は B(X, M) の閉部分空間であり、従ってこれも完備距離空間になる。 ベールの範疇定理によれば任意の完備距離空間はベール空間である。つまり、この空間の可算個の疎 (nowhere dense) な部分集合の合併は空でない内部を持つ。 バナハの不動点定理は、完備距離空間上の縮小写像が不動点を持つことを述べる。この不動点定理は、バナハ空間のような完備距離空間上の逆写像定理の証明に良く用いられる。 距離空間の拡大定数(英語版)とは、閉球体族 { B ¯ ( x α , r α ) } {\textstyle \{{\overline {B}}(x_{\alpha },\,r_{\alpha })\}} がどの二つも交わりを持つ限りにおいて、交わり ⋂ α B ¯ ( x α , μ r α ) {\textstyle \bigcap _{\alpha }{\overline {B}}(x_{\alpha },\mu r_{\alpha })} が空とならないような定数 μ すべての下限として与えられる。距離空間が完備となる必要十分条件は、その拡大定数が ≤ 2 となることである。
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