じょ‐し〔ヂヨ‐〕【女史】
女史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/14 16:44 UTC 版)
女史(じょし)とは、学者、芸術家、政治家などの社会的地位や名声のある女性に対する敬称である[1][2]。
もともとは中国古代の女官名である[1]。日本でも女官の一つ(令外官)で、内侍司に属し文書のことをつかさどった[1]。平安時代中期以降は博士命婦と呼ばれるようになった[1]。国語学者の大野晋は、「『女史』という言葉はもともとは中国で女性の書記を表した。日本では、明治時代に、学者や文筆活動をする女性が出てきて使われ始めた。明治時代は、学問をしている女性は傑出しているわけで、女性を一人前に扱う、ということから出てきている。尊敬語だが、『女だから』という思いは入っている」と述べている[3]。
男女共同参画視点における問題視
内閣府の促進する男女共同参画社会において、「性別に基づく固定観念に捉われない,男女の多様なイメージを社会に浸透させる」視点に立った表現を取り入れるよう働きかけが行われており[4]、この施策に基づく考慮対象として敬称としての「女史」が触れられることがある。
各自治体における男女共同参画ガイドラインにおいても考慮が必要である代表的な用語のひとつとして挙がっており、「見直したい表現」(大阪府)[5]、「気になる表現」(小金井市)[6]、「さけたい表現」(可児市)[7]など、具体的な表現こそややばらつくものの、多数の自治体での言及がみられる。
関連して、文化庁の文化審議会が2022年に各府省庁等が作成する文書の留意点をまとめる目的で作成した公用文作成手引「公用文作成の考え方(建議)」においては、「偏見や差別につながる表現を避ける」の項にて「男性側に対応する語がない」という理由で「性別を示すことが必要であるかどうか、慎重に判断する」べき語であるとして、「女医」「女流」とともに列挙されている[8]。
メディアでの動き
共同通信社の『記者ハンドブック』では1997年発行の第8版からこの言葉が新たに「差別にあたる言葉」として記載された。第13版(2016年)でも「差別語、不快用語」欄において「女史→〇〇〇〇さん」との書き換えが例示されている[9]。
時事通信社の『最新用字用語ブック』第7版(2016年)には「女史〈使わない。「〇〇さん」「〇〇氏」とする〉」と記載されている[10]。
三省堂の『マスコミ用語担当者がつくった 使える!用字用語辞典』(2020年)では、「女史→〇〇さん(具体名で書く)*男性側に対語がなく、女性を特別視した表現」と書かれている[11]。
ガイドライン外における具体的な言及例としては、朝日新聞における連載『ことばマガジン』では1932年の同紙記事を振り返って解説する内容で、村岡花子を指しての当時の「村岡女史」という表現について「今ではほとんど使いません。『村岡花子さん』にしてもらいます。」と触れており、2014年時点の同紙において敬遠される表現であることが示唆されている[12]。
脚注
- ^ a b c d 「女史」『精選版 日本国語大辞典』小学館 。コトバンクより2025年2月17日閲覧。
- ^ 「女史」『デジタル大辞泉』小学館 。コトバンクより2025年2月17日閲覧。
- ^ 高木正幸『差別用語の基礎知識’99 何が差別語・差別表現か?』土曜美術社出版販売、1999年、151頁
- ^ “第2節 国の行政機関の作成する広報・出版物等における男女共同参画の視点に立った表現の促進”. www.gender.go.jp. 2025年6月15日閲覧。
- ^ “男女共同参画社会の実現をめざす表現ガイドライン”. 大阪府 府民文化部. p. 7 (2021年11月). 2025年6月15日閲覧。
- ^ “男女共同参画の視点からの表現の手引 ~市刊行物に適切な言葉や表現を使いましょう~”. 小金井市企画財政部企画政策課男女共同参画室. p. 3 (2012年3月). 2025年6月15日閲覧。
- ^ “気づいて、変えて、その表現 ~男女共同参画の視点から考える~”. 可児市市民文化部 地域協働課 人権・国際係. p. 10 (2017年2月). 2025年6月15日閲覧。
- ^ “公用文作成の考え方(建議)”. 文化審議会 (2022年1月7日). 2025年6月15日閲覧。
- ^ 一般社団法人共同通信社編『記者ハンドブック 新聞用字用語集』第13版、共同通信社、2016年、494頁
- ^ 時事通信社編『最新用字用語ブック』時事通信社、第7版、2016年、515頁
- ^ 前田安正他編『マスコミ用語担当者がつくった 使える!用字用語辞典』三省堂、2020年、324頁
- ^ “「ラジオのおばさん」朝日新聞への登場は - ことばマガジン:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2025年6月15日閲覧。
関連項目
女史(じょし)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 17:05 UTC 版)
社会的な地位が高い女性に対して用いる女性用の敬称だったが、現在では死語となっており、場合によって揶揄的にのみ用いられる。しかし、稀に書籍(特に和訳されたもの)において本来の意味で用いられる場合がある。
※この「女史(じょし)」の解説は、「敬称」の解説の一部です。
「女史(じょし)」を含む「敬称」の記事については、「敬称」の概要を参照ください。
「女史」の例文・使い方・用例・文例
- >> 「女史」を含む用語の索引
- 女史のページへのリンク