和に対する指数函数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/06 07:15 UTC 版)
任意の実数(あるいはスカラー)x, y について、通常の指数関数が ex + y = exey を満たすことはよく知られている。同じことは可換な行列に対しても成り立つ。即ち、行列 X, Y が交換可能(XY = YX)ならば e X + Y = e X e Y {\displaystyle e^{X+Y}=e^{X}\mathrm {e} ^{Y}} が成り立つ。しかし可換でない行列については上記の関係は成り立たない。この場合、ベイカー=キャンベル=ハウスドルフの公式(英語版)が eX + Y の計算に利用できる。 逆は一般には成り立たない。即ち、等式 eX + Y = eXeY は X と Y とが可換であることを意味しない。 エルミート行列について、行列指数関数の跡に関係する二つの注目すべき定理を挙げる。ゴールデン–トンプソン不等式(英語版) は以下のような定理である。 定理 (Golden–Thompson) A と H がエルミートであるとき、次の不等式が成り立つ。 tr exp ( A + H ) ≤ tr ( exp ( A ) exp ( H ) ) . {\displaystyle \operatorname {tr} \exp(A+H)\leq \operatorname {tr} (\exp(A)\exp(H)).} ここで可換性は要求されないことに注意する。 ゴールデン–トンプソン不等式を 3 つの行列に対するものに拡張できないことを示す反例が知られている。そもそもエルミート行列 A, B, C に対して tr(exp(A)exp(B)exp(C)) が実になること自体が保証されないのだが、次に示すリーブの定理(エリオット・リーブ(英語版)に因む)はある意味でそのような保証を与える: 定理 (Lieb) 固定されたエルミート行列 H について、関数 f ( A ) = tr exp ( H + log A ) {\displaystyle f(A)=\operatorname {tr} \,\exp \left(H+\log A\right)} は正定値行列錐上の凹関数である。
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