原資産生産者に於けるリスクヘッジ(生産農家)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 22:49 UTC 版)
「先物取引」の記事における「原資産生産者に於けるリスクヘッジ(生産農家)」の解説
例えば、大規模な農場があったとする。 農場ではトウモロコシを生産している。 トウモロコシは市場価格で売却している。 トウモロコシが1ブッシェルあたり2ドル以下になると赤字になる。 年間に100万ブッシェル生産する。 農場経営者は、来年のトウモロコシの価格が気になる。もし、来年の価格が2ドルを下回れば、赤字になってしまう。そこで、農場経営者は先物市場でトウモロコシを「100万ブッシェル売る権利」を買う。受け取るのは「来年決済時点のトウモロコシ100万ブッシェルを売る権利」である。 一年後、現物市場のトウモロコシ価格が期日前4ドルになってそのまま期日を迎えた場合の決算 農場経営者は、先物市場で受け取った「トウモロコシを売る権利」とは別に、期日前に「トウモロコシ100万ブッシェルを買う権利」も買う。このことで決算時に250万ドルの収入と400万ドルの支出となる。差額150万ドルが証拠金から差し引かれ、証拠金で足りない分は追加で支払う(証拠金には価格変動による追加あり)。差し引き150万ドルの損失である。一方、実際に生産したトウモロコシを現物市場で売却する。単価4ドルで100万ブッシェル売るため400万ドルの受取である。先ほど、先物市場で失った150万ドルの損失と相殺して、差し引き250万ドルの収入となる。これで事実上、単価が2.5ドルになったことになる。農場経営者が先物取引をしていなければより利益があったが、赤字にはならなかった。 農場経営者は先物市場で売るためトウモロコシを指定倉庫に運搬する。決済時に250万ドルの収入となる。これで単価が2.5ドルになる。農場経営者が先物取引をしていなければより利益があったが、赤字にはならなかった。(先渡し契約を伴う先物取引:現物の受け渡しは指定倉庫など) 一年後、現物市場のトウモロコシ価格が期日前1.5ドルになってそのまま期日を迎えた場合の決算 農場経営者は、先物市場で受け取った「トウモロコシを売る権利」とは別に、期日前に「トウモロコシ100万ブッシェルを買う権利」も買う。このことで決算時に250万ドルの収入と150万ドルの支出となる。差額の100万ドルが証拠金とともに支払われる。差し引き100万ドルの利益である。一方、実際に生産したトウモロコシを現物市場で売却する。単価1.5ドルで100万ブッシェル売るため150万ドルの収入である。先ほど、先物市場で得た100万ドルと合算して、250万ドルの収入となる。これで事実上、単価が2.5ドルになる。農場経営者が先物取引をしていなければ赤字になっていた。 このようにリスクヘッジ目的に先物取引をすることは、投機的なより高い利益を求めるためではなく、経営構造を安定化させるために行なう。一年後、価格がどうなるか分からない状況では計画が立たないが、先物取引を行なうことで見通しを立てることができるようになる。
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