催眠誘導=弛緩、という誤解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/11 09:53 UTC 版)
催眠誘導とは、被験者に催眠をかける手法のことである。一般に「催眠誘導には弛緩や閉眼が必須である」と言われることが多いが、これは誤りである。もちろん弛緩を用いて催眠誘導する方法もあるが、それが全てではない。睡眠や弛緩を用いずに催眠誘導を行う手法として、覚醒状態催眠がある。 九人の受刑者に対して覚醒状態催眠を行った実験がある。受刑者には、緊張や刺激性を高める暗示を与え部屋を見つめながら回転させた。本誘導を五~二十五分続けた後、標準的な催眠感受性テストを受刑者に受けさせた。このテストの点数と、伝統的催眠を行った群の、テストの点数に差は見られなかった。 加えて、催眠誘導における暗示は命令ではない。催眠誘導は被験者に暗示を与え、暗示に対する反応を観察し、暗示を与える作業の繰り返しである。本質的には、催眠をかける者と被験者のコミュニケーションといえる。 スピーゲル(Spiegel Herbert)とスピーゲル(Spiegel David)は、自著Trance and Treatment: Clinical Uses of Hypnosisで次のように述べている。 トランス能力(催眠感受性)は各々の個人に内在するものであり、催眠者は単に被験者が自分の思い通りにその能力を探求する適切な機会を提供するだけにすぎない。(引用注:中略)催眠者がもつ権威や統制力などによって被験者が催眠にかかるなどと信じたりすると、[…]いずれ催眠感受性に乏しい被験者に遭遇した際、自分が失敗したと思い込んでしまうことは目に見えている。 — 高石昇、大谷彰、『現代催眠原論』(Kindle版、位置No. 1549/7373)
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