側方注視麻痺
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/10 15:30 UTC 版)
側方注視中枢は前頭葉、後頭葉及び橋の傍正中橋網様体(PPRF)にある。前頭葉の側方注視中枢は対側橋のPPRFを介して衝動的に眼球を対側方向に動かす(サッケード運動)。後頭葉の側方注視中枢は同側のPPRFを介して緩やかに眼球を同側方向に動かす。すなわち、前頭葉の側方注視中枢で物体を素早く捉え、後頭葉の側方注視中枢で動く物体を無意識に追跡することになる。従って、共同偏視があれば、前頭葉の側方注視中枢か橋のPPRFまたは両者を結ぶ神経路の障害を考える。両者の鑑別としては共同偏視では対側半身に片麻痺を認めることが多く、これが参考になる。前頭葉の注視中枢は眼球を対側にむけ、PPRFは同側に眼球を向けるので、その障害では逆方向への共同偏視が起きる。即ち、前頭葉障害では片麻痺の反対側への共同偏視、PPRFでは片麻痺側への共同偏視が起きる。特徴的な注視麻痺に核間性眼筋麻痺またはMLF症候群というものがある。内側縦束(MLF)はPPRFから出て、すぐに対側に交叉し動眼神経外側核へ結ぶ部分である。橋の橋網様体傍正中部(PPRF)は中脳の動眼神経外側核と橋の外転神経核、および前庭神経及び頸部筋をMLFなどを介して連結している。MLF障害は、側方の注視で内転障害と外転眼に眼振を呈する。要するに片眼ずつ眼球運動を見れば正常であるのも拘わらず、両眼で一方向を見た時、内転するべき眼球が内転しないというのがMLF症候群の特徴である。動眼神経は障害されていないので輻輳は正常である。多発性硬化症では両側性MLF症候群が起きることが多い。
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