会計大学院定員割れ問題
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会計大学院定員割れ問題(かいけいだいがくいんていいんわれもんだい)は、日本の教育機関においての問題。
概要
会計士の養成を目指す会計大学院が不人気から定員割れとなっている問題である。2005年に会計大学院が9校開設されたのであるが、そのうちの6校が定員割れとなった。中には定員60人に対して22人しか新入生が集まらなかったというところもある。このような惨憺たる状況となっているのは、合格を目指す資格試験とのリンクが極めて弱かったことにある。司法試験は法科大学院を卒業できなければ受験資格を得られないことに対して、会計士試験は会計大学院を卒業したならば短答試験の一部が免除されるのみと極めて限定的であったためである。社会的な重要性の違いもあり、会計の社会的重要性も認知はされているものの、司法はそれよりもはるかに大きく職域も極めて大きいということもある[1]。
会計大学院の経営に携わる者は、会計大学院が厳しい状況に置かれているのは、国家試験の受験要因と大学院修了の関係が連動していないということが最大の理由であるとする。国家経済を支える会計専門職になるうとする者が受験勉強だけに特化して、その職業に関わる高等教育をまともに受けていないということを批判する。医師や教員は資格試験受験に教育・訓練を要件としているのだが、会計士試験にはこのような要件が無いことを批判する。会計大学院協会は金融庁に対してこのことを何度も申し上げて改善を求めてきて法の改正に取り組んでいただいたが実現しなかった[2]。
2008年の時点でも会計大学院の苦戦は続いており、この年はデータのある13校のうち5校が定員割れとなっていた。ある会計大学院は在籍29人のうち16人が予備校職員でありしかも授業料を一部免除しているという形であった。この年に新設であった会計大学院では、定員の1割ほどしか新入生が集まらなかったというところもある。この時期は会計士試験の合格者が多くなっていることからも会計大学院に入学する必要は無いのではとされていた。2007年の会計士試験の合格率は前年の8パーセントから15パーセントへと上がっていた。これだけ受かりやすいならば、2年間に高い金をかけて会計大学院に行くというのは遠回りであり、学部在学時に予備校に通いながら合格することも可能なほどでった。大学卒業後に1年勉強する覚悟さえあれば合格できるほどであった。合格率で見れば、むしろ税理士の方が受かりにくい試験となっていた[3]。
2015年は13校中の9校が定員割れとなり、早稲田大学会計大学院までも開設以来初の定員割れとなる。この時期は金融危機後の監査法人の採用が縮小している時代であり、会計士は就職難であるというイメージが強くなっており、このことから会計士という職業そのものの人気が落ちていた。だが実際は国際会計基準が導入されたり、合併や買収が増加しておることなどから会計士の需要は増加しており、この状態が続けば企業活動への支障が懸念されていた[4]。2015年には3校が募集停止となる。存続する会計大学院も苦戦が続いており、募集人数を減少させるというところもある[5]。2017年には最初に会計大学院を設置した中央大学国際会計研究科が募集停止となる[6]。中央大学の2016年の入学は5人であった[7]。法政大学の会計大学院は2015年に募集停止となる。教授はこれにあたり専門職になるために大学院教育よりも受験勉強を重視している日本の今後を心配する[8]。
会計大学院の中には厳しい状況の中で生き残りをかけて、税理士試験の科目免除が行えることを魅力とするようになっているところもある。税理士試験は大学院での論文を執筆することで、設定されている科目のうちからいくつかが免除されるのである。税理士試験とは長期間の勉強をすることになり、その中でつまづきを感じやすいために、試験で合格するよりも論文執筆で科目免除を受けようとする人は多い。そして多くの会計大学院は社会人も通えるように夜間や週末に講義を集中させている所も多い。これは働きながら資格取得をしようと思っている人にとってのメリットである。このようにより需要が多い税理士試験免除へと舵を切って、税理士を養成することを目的とする形に変容した会計大学院もある[9]。
脚注
- ^ “アカウンティング・スクールの苦戦:2匹目のドジョウはいる?”. 駒澤大学 (2005年10月6日). 2005年8月31日閲覧。
- ^ “会計大学院協会ニュースNo.18”. 会計大学院協会. 2025年8月31日閲覧。
- ^ “続 アカウンティング・スクールの苦戦-真価が問われる-”. 駒澤大学 (2008年6月15日). 2025年8月31日閲覧。
- ^ Inc, Nikkei (2015年6月12日). “会計大学院、誤算続く 15年度、13校中9校定員割れ 「就職難」印象なお”. 日本経済新聞. 2025年8月31日閲覧。
- ^ “会計大学院陰り鮮明”. 税理士法人はるか. 2025年8月31日閲覧。
- ^ “会計離れ - 会計・税務人財養成推進協議会”. www.zb.em-net.ne.jp. 2025年8月31日閲覧。
- ^ Inc, Nikkei (2016年4月2日). “中央大、会計大学院を18年3月に閉鎖へ”. 日本経済新聞. 2025年8月31日閲覧。
- ^ “会計大学院協会ニュースNo.19”. 会計大学院協会. 2025年8月31日閲覧。
- ^ “会計専門職大学院の落日 税理士養成で存続を図る | KaikeiZine|“会計人”のための税金・会計専門メディア”. KaikeiZine | 税金・会計に関わる“会計人”がいま必要な情報をお届けします! (2017年9月8日). 2025年8月31日閲覧。
関連項目
- 会計大学院定員割れ問題のページへのリンク