他山の石以て玉を攻むべしとは? わかりやすく解説

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他山(たざん)の石(いし)以(もっ)て玉(たま)を攻(おさ)むべし

読み方:たざんのいしもってたまをおさむべし

《「詩経小雅鳴から》よその山から出た質の悪いでも、自分の玉を磨くのに役立てることができる。転じて他人誤った言行でも、自分修養助けとなるということ。→他山の石[補説]


他山の石

(他山の石以て玉を攻むべし から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/13 18:07 UTC 版)

他山の石(たざんのいし)は、四書五経のひとつ『詩経』の記述に基づく故事慣用句。「他人のつまらない言行、誤りや失敗なども、自分を磨く助けとなる」といった意味であるが[1]、現代の日本語話者の間では、誤った意味で用いることも少なくない表現となっている[2]

出典と解釈

詩経』(小雅・鶴鳴篇)には、「他山之石可以攻一レ玉」とあり、通常はこれを「他山の石 以て玉を攻むべし」(たざんのいしもってたまをおさむべし)と読み下す[1]。「玉を攻む」は「玉を磨く」という意味であり、この成句は字義通りには、「他の山からもたらされた粗悪な、磨いても玉にはならない石は、然るべき山から産する玉を磨くのに使え」といった意味であるが、ここから転じて、「他人のつまらない言行、誤りや失敗などにも、そこから学んで自分の知恵や徳を磨く助けとなるところがある」といった意味になった[2]

この成句にちなんだ名称の代表的な例である攻玉社(より正確には前身の「攻玉塾」)の名は、成句の後半から採られたものであり、「外国の技術で日本をみがこう」という含意で名付けられたものとされている[3][4]

誤釈の拡大

文化庁が実施している国語に関する世論調査が、2004年の調査で「他山の石」の意味について尋ねたところ、回答者の26.8%は正答である「他人の間違った言行も自分の行いの参考となる」を選んだが、18.1%は誤答である「他人の良い言行は自分の行いの手本となる」を選び、その他では、やはり誤りである「両方の意味で使う」が 5.5%、「どちらの意味でも使わない」が 22.4%、そして「分からない」が 27.2%であった[2]。50代以上では正答を選んだ者が最も多かったが、30代、40代で正答を選んだ者は誤答を選んだものより多かったものの「分からない」とした者より少なかった[2]。10代(16歳から19歳)では誤答を選んだ者が最も多く、20代では正答・誤答が拮抗し、「分からない」が多かった[2]2013年の同調査でも、正答とされた「他人の誤った言行も自分の行いの参考となる」が 30.8%、誤答の「他人の良い言行は自分の行いの手本となる」が22.6%などと、同様の結果になった[5]

広辞苑』第6版(2008年)は、説明の中でわざわざ「本来,目上の人の言行について、また、手本となる言行の意では使わない。」と記しており、「先生の生き方を他山の石として...」のような誤用が広がっていることを示唆している[2]

文化庁文化部国語課は、類似した意味の「人のふり見て我がふり直せ」が文字通りの意味で了解できるのに対し、「他山の石」は知識がないと意味が了解できないため、使われる機会が減っており、正しく理解する者が世代が下がるにつれ減っているのではないかと分析している[2]

書名などへの流用

「他山の石」という語句は、様々な書籍類の題名(の一部)や、副題に用いられている。

桐生悠々は、外国の書籍の抄訳紹介を主な内容として晩年の1934年から1941年にかけて発行した個人雑誌を『他山の石』と名付けており、同誌により軍部批判を継続したとされる[6]

船田中は、1937年にまとめたドイツ事情についての著書を『他山の石 敗戦独逸から第三帝国建設へ』と題した[7]

脚注

  1. ^ a b デジタル大辞泉『他山の石以て玉を攻むべし』 - コトバンク
  2. ^ a b c d e f g 文化部国語課. “連載「言葉のQ&A」「他山の石」の意味”. 文化庁. 2020年5月25日閲覧。 - 初出は、『文化庁月報』平成23年10月号 (No.517)
  3. ^ 小正展也「矢島錦蔵小論―東京府尋常師範学校教諭に就任するまでの経歴を中心に―」『大学史資料室報』第4号、東京学芸大学大学史資料室、11頁。 
  4. ^ ただし攻玉社では、後半を「以て玉を攻(みが)くべし」と読ませている。:校章・校旗・校歌・制服”. 攻玉社. 2020年5月25日閲覧。
  5. ^ デジタル大辞泉『他山の石』 - コトバンク
  6. ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『桐生悠々』 - コトバンク
  7. ^ 他山の石 敗戦独逸から第三帝国建設へ”. 国立国会図書館. 2020年5月25日閲覧。


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