並進された状態の位置と運動量の期待値
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/09 14:53 UTC 版)
「並進演算子 (量子力学)」の記事における「並進された状態の位置と運動量の期待値」の解説
1次元における1つの粒子を考える。古典力学とは違い、量子力学において粒子ははっきり定まった位置も運動量も持たない。量子力学の定式化では、期待値が古典変数として働く。たとえば粒子が状態 | ψ ⟩ {\displaystyle |\psi \rangle } にあったとき、位置の期待値は ⟨ ψ | r ^ | ψ ⟩ {\displaystyle \langle \psi |{\boldsymbol {\hat {r}}}|\psi \rangle } である。ここで ^r は位置演算子である。 並進演算子 T ^ ( x ) {\displaystyle {\hat {T}}({\boldsymbol {x}})} が状態 | ψ ⟩ {\displaystyle |\psi \rangle } に作用したとき、新しい状態 | ψ 2 ⟩ {\displaystyle |\psi _{2}\rangle } が作られる。このとき | ψ 2 ⟩ {\displaystyle |\psi _{2}\rangle } の位置の期待値は、 | ψ ⟩ {\displaystyle |\psi \rangle } の位置の期待値にベクトルxを加えたものである。この結果は粒子をその量だけシフトさせる操作から予想されるものと一致している。 並進演算子が予想通りに位置の期待値を変えることの証明:上述したとおり | ψ 2 ⟩ = T ^ ( x ) | ψ ⟩ {\displaystyle |\psi _{2}\rangle ={\hat {T}}({\boldsymbol {x}})|\psi \rangle } と仮定する。 ⟨ ψ 2 | r ^ | ψ 2 ⟩ = ( ⟨ ψ | T † ( x ) ) r ^ ( T ( x ) | ψ ⟩ ) = ⟨ ψ | r ^ | ψ ⟩ + x {\displaystyle {\begin{aligned}\langle \psi _{2}|{\hat {\boldsymbol {r}}}|\psi _{2}\rangle &=(\langle \psi |T^{\dagger }({\boldsymbol {x}})){\hat {\boldsymbol {r}}}(T({\boldsymbol {x}})|\psi \rangle )\\&=\langle \psi |{\hat {\boldsymbol {r}}}|\psi \rangle +{\boldsymbol {x}}\end{aligned}}} ここで正規化条件 ⟨ ψ | ψ ⟩ = 1 {\displaystyle \langle \psi |\psi \rangle =1} と、前節で証明した交換子の結果を用いた。 一方で、並進演算子が状態に作用したとき、運動量の期待値は変わらない。このことは同じように証明できるが、並進演算子が運動量と交換することを用いる。この結果も予想と一致している。つまり並進によって粒子の速度や質量は変わらず、運動量も変わらない。
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