三角化可能性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/26 18:32 UTC 版)
三角行列と相似な行列は三角化可能 (triangularizable) であるという。抽象的には完全旗を固定することに同値である。上三角行列とは標準基底 (e1, …, en) により与えられる標準旗 ⟨ e 1 ⟩ < ⟨ e 1 , e 2 ⟩ < ⋯ < ⟨ e 1 , e 2 , … , e n − 1 ⟩ {\displaystyle \langle e_{1}\rangle <\langle e_{1},e_{2}\rangle <\dotsb <\langle e_{1},e_{2},\dotsc ,e_{n-1}\rangle } を保つ行列に他ならない。完全旗は互いに共役なので(一般線形群が基底に推移的に作用するから)、ある完全旗を固定する行列は標準旗を固定する行列と相似である。 任意の複素正方行列は三角化可能である。実際には行列 A が、その固有値すべてを含む体(たとえば代数的閉体)上で三角行列と相似であることが示せる。これは帰納法により証明できる。行列 A は固有ベクトルをもつので、その生成系による商空間を考え、帰納法によって完全旗を固定することを示すことにより、その基底に関して三角化可能であることがわかる。より精密な主張がジョルダン標準形の理論により与えることができ、行列は非常に特別な形の上三角行列(ジョルダン標準形)と相似である。けれども、より単純な三角化で多くの場合は用が足りる。いずれにせよジョルダン標準形の存在を示すときには三角化が必要となる。 複素行列の場合には三角化に関してより強い主張ができる。任意の複素正方行列 A はシューア分解をもつ。つまり A が上三角行列とユニタリ同値(ユニタリ行列による基底変換で相似)である。これは完全旗の正規直交基底をとることで得られる。 代数閉体上の互いに可換な正方行列は同時三角化可能である。
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