一点における微分可能性と微分係数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 04:41 UTC 版)
「微分」の記事における「一点における微分可能性と微分係数」の解説
関数 f(x) が開区間 I ⊂ R {\displaystyle I\subset \mathbb {R} } において定義されているとする。そのとき、 a ∈ I {\displaystyle a\in I} に対し、極限 lim h → 0 f ( a + h ) − f ( a ) h {\displaystyle \lim _{h\to 0}{\frac {f(a+h)-f(a)}{h}}} が存在するとき、f(x) は x = a において微分可能であるという(極限は有限確定値であることを要請する。すなわち、正の無限大や負の無限大であることは許容しない)。またそのとき、上記の極限を x = a における f(x) の微分係数とよび、f′(a) によって表す。 これにともない、f(x) のグラフ上の点 (a, f(a)) を通り傾き f′(a) をもつ直線のことを、f(x) のグラフの x = a における接線という。つまり、x = a における接線とは、y = f′(a)(x − a) + f(a) によって与えられる直線のことである。 上述の微分係数の定義に現れる分数 f ( a + h ) − f ( a ) h {\displaystyle {\frac {f(a+h)-f(a)}{h}}} は差分商とよばれる。これは関数 f(x) のグラフ上の2点 (a, f(a)) と (a + h, f(a + h)) を通る直線(割線という)の傾きを表している。あるいは、変数 x の値が a から a + h まで変化するあいだの、関数の値の平均変化率を表しているとみることもできる。これらの見方によれば、微分係数の定義について、次のような解釈を与えることができる。 グラフ上の2点 (a, f(a)), (a + h, f(a + h)) を通る割線が、h を 0 へと近づけたときにある直線に近づくならば、それを接線とみなすのが妥当であろう。この意味での接線の傾きが、微分係数 f′(a) である。 「変数 x の値が a から a + h まで変化するあいだの関数値の平均変化率」が、h を 0 へと近づけたときにある数に近づくならば、それを瞬間変化率とみなすのが妥当であろう。この瞬間変化率が、微分係数 f′(a) である。 なお、上述の微分可能性の定義では h が 0 にどのようにして近づいても差分商が一定の値に収束することを要請したが、近づき方を限定することも考えられる。h が正の値をとりながら 0 に近づいたときの片側極限 lim h ↘ 0 f ( a + h ) − f ( a ) h {\displaystyle \lim _{h\searrow 0}{\frac {f(a+h)-f(a)}{h}}} が存在するとき、f(x) は x = a において右側微分可能であるといい、この片側極限を右側微分係数とよぶ。同様に、h が負の値をとりながら 0 に近づいたときの片側極限 lim h ↗ 0 f ( a + h ) − f ( a ) h {\displaystyle \lim _{h\nearrow 0}{\frac {f(a+h)-f(a)}{h}}} が存在するとき、f(x) は x = a において左側微分可能であるといい、この片側極限を左側微分係数とよぶ。f(x) が x = a において微分可能であるためには、「f(x) が x = a において右側微分可能かつ左側微分可能で、かつ右側微分係数と左側微分係数が一致する」ということが必要十分である。
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