ワラング・クシティ文字 (Unicodeのブロック)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > ワラング・クシティ文字 (Unicodeのブロック)の意味・解説 

ワラング・クシティ文字 (Unicodeのブロック)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/18 08:52 UTC 版)

ワラング・クシティ文字 (Unicodeのブロック)
Warang Citi
範囲 U+118A0..U+118FF
(96 個の符号位置)
追加多言語面
用字 ワラング・クシティ文字
主な言語・文字体系
割当済 84 個の符号位置
未使用 12 個の保留
Unicodeのバージョン履歴
7.0 84 (+84)
公式ページ
コード表 ∣ ウェブページ
テンプレートを表示

ワラング・クシティ文字(ワラング・クシティもじ、英語: Warang Citi)は、Unicodeブロックの一つ。

解説

主にインド中東部のジャールカンド州オリッサ州西ベンガル州で話される、オーストロアジア語族ムンダ語派に属するホー語を表記するために1950年ごろにホー族のコミュニティ指導者であったラコ・ボドラによって、キリスト教宣教師の言語学者が使用する文字を改良する形で考案された[1]ワラング・クシティ文字(ワラン・チティ文字)を収録している。ただし、ホー語は長らく口語として文字を持たずに用いられていたためこの文字の識字率は限定的であり[1]、多くの場合ホー語はデーヴァナーガリーオリヤー文字或いはラテン文字で書かれている。

ワラング・クシティ文字は音素文字のうち子音と母音とに独立した文字が割り当てられているアルファベットに分類される。ラテン文字などと同様に左から右への横書き(左横書き)であり、単語毎に分かち書きをする。ラテン文字と同様に大文字・小文字の区別を有する。

ただし、子音字は部分的にアブギダの性質を有しており、語末以外では暗黙の随伴母音/-a/(通常[a]または[ɔ]と発音され、まれに[ɛ]と発音される)を持っている。この随伴母音は明示的に現れないため、特定の単語の読み方が曖昧になる場合がある。ラテン転写においてはこの随伴母音はA/aと表記され、明示的な母音字A(U+118A1 𑢡 WARANG CITI CAPITAL LETTER A)はÅ/åと書かれ区別される[1]

加えて、アラビア文字タイ文字などと同様に独自の数字体系(ワラング・クシティ数字)を有している。

符号位置の順序はおおむね伝統的なワラング・クシティ文字の順序に従っている。

Unicodeのバージョン7.0において初めて追加された。

収録文字

コード 文字 文字名(英語) 用例・説明 ラテン文字転写
大文字の母音字
U+118A0 𑢠 WARANG CITI CAPITAL LETTER NGAA 母音を鼻母音で発音することを表す。

アヌスヴァーラとして機能する[2]

U+118A1 𑢡 WARANG CITI CAPITAL LETTER A 母音[a]を表す。 Å[1]
U+118A2 𑢢 WARANG CITI CAPITAL LETTER WI 短母音[i]を表す。 I
U+118A3 𑢣 WARANG CITI CAPITAL LETTER YU 短母音[u]を表す。 U
U+118A4 𑢤 WARANG CITI CAPITAL LETTER YA 母音の後に声門破裂音[ʔ]を伴うことを表す。

𑢠(Ṃ)+𑢠(Ṃ)の合字に由来する[1]

ʔ
U+118A5 𑢥 WARANG CITI CAPITAL LETTER YO 半母音[j]を表す。

𑢡(A)+𑢡(A)の合字に由来する[1]

Y
U+118A6 𑢦 WARANG CITI CAPITAL LETTER II 長母音[iː]或いは二重母音[ai̯][1]を表す。

𑢢(I)+𑢢(I)の合字に由来する[1]

Ī
U+118A7 𑢧 WARANG CITI CAPITAL LETTER UU 長母音[uː]或いは二重母音[au̯][1]を表す。

𑢣(U)+𑢣(U)の合字に由来する[1]

Ū
U+118A8 𑢨 WARANG CITI CAPITAL LETTER E 母音[e]を表す。 E
U+118A9 𑢩 WARANG CITI CAPITAL LETTER O 母音[o]を表す。 O
大文字の子音字
U+118AA 𑢪 WARANG CITI CAPITAL LETTER ANG 子音[ŋ]を表す。
U+118AB 𑢫 WARANG CITI CAPITAL LETTER GA 子音[ɡ]を表す。 G
U+118AC 𑢬 WARANG CITI CAPITAL LETTER KO 子音[k]を表す。 K
U+118AD 𑢭 WARANG CITI CAPITAL LETTER ENY 子音[ɲ]を表す。 Ñ
U+118AE 𑢮 WARANG CITI CAPITAL LETTER YUJ 子音[d͡ʑ]を表す。 J
U+118AF 𑢯 WARANG CITI CAPITAL LETTER UC 子音[t͡ɕ]を表す。 C
U+118B0 𑢰 WARANG CITI CAPITAL LETTER ENN 子音[ɳ]を表す。
U+118B1 𑢱 WARANG CITI CAPITAL LETTER ODD 子音[ɖ]を表す。
U+118B2 𑢲 WARANG CITI CAPITAL LETTER TTE 子音[ʈ]を表す。
U+118B3 𑢳 WARANG CITI CAPITAL LETTER NUNG 子音[n]を表す。 N
U+118B4 𑢴 WARANG CITI CAPITAL LETTER DA 子音[d]を表す。 D
U+118B5 𑢵 WARANG CITI CAPITAL LETTER AT 子音[t]を表す。 T
U+118B6 𑢶 WARANG CITI CAPITAL LETTER AM 子音[m]を表す。 M
U+118B7 𑢷 WARANG CITI CAPITAL LETTER BU 子音[b]を表す。

二重音字𑢹𑢷(HB)はしばしば子音[w]を表すことがある[1]

B
U+118B8 𑢸 WARANG CITI CAPITAL LETTER PU 子音[p]を表す。 P
U+118B9 𑢹 WARANG CITI CAPITAL LETTER HIYO 子音[h]を表す。

母音の後に書かれた場合、長母音化、或いは[h]を語末に伴うこと(ヴィサルガ)を表す[1]

H
U+118BA 𑢺 WARANG CITI CAPITAL LETTER HOLO 子音[l]を表す。 L
U+118BB 𑢻 WARANG CITI CAPITAL LETTER HORR 子音[ɽ]を表す。
U+118BC 𑢼 WARANG CITI CAPITAL LETTER HAR 子音[ɾ]を表す。 R
U+118BD 𑢽 WARANG CITI CAPITAL LETTER SSUU 子音[ʂ]を表す。
U+118BE 𑢾 WARANG CITI CAPITAL LETTER SII 子音[s]を表す。 S
U+118BF 𑢿 WARANG CITI CAPITAL LETTER VIYO 子音[w]を表す。

𑢡(A)と𑢹(H)の合字に由来する。

V
小文字の母音字
U+118C0 𑣀 WARANG CITI SMALL LETTER NGAA 母音を鼻母音で発音することを表す。
U+118C1 𑣁 WARANG CITI SMALL LETTER A 母音[a]を表す。 å[1]
U+118C2 𑣂 WARANG CITI SMALL LETTER WI 短母音[i]を表す。 i
U+118C3 𑣃 WARANG CITI SMALL LETTER YU 短母音[u]を表す。 u
U+118C4 𑣄 WARANG CITI SMALL LETTER YA 母音の後に[ʔ]を伴うことを表す。

𑣀(ṃ)+𑣀(ṃ)の合字に由来する[1]

ʔ
U+118C5 𑣅 WARANG CITI SMALL LETTER YO 半母音[j]を表す。

𑣁(a)+𑣁(a)の合字に由来する[1]

y
U+118C6 𑣆 WARANG CITI SMALL LETTER II 長母音[iː]或いは二重母音[ai̯][1]を表す。

𑣂(i)+𑣂(i)の合字に由来する[1]

ī
U+118C7 𑣇 WARANG CITI SMALL LETTER UU 長母音[uː]或いは二重母音[au̯][1]を表す。

𑣃(u)+𑣃(u)の合字に由来する[1]

ū
U+118C8 𑣈 WARANG CITI SMALL LETTER E 母音[e]を表す。 e
U+118C9 𑣉 WARANG CITI SMALL LETTER O 母音[o]を表す。 o
小文字の子音字
U+118CA 𑣊 WARANG CITI SMALL LETTER ANG 子音[ŋ]を表す。
U+118CB 𑣋 WARANG CITI SMALL LETTER GA 子音[ɡ]を表す。 g
U+118CC 𑣌 WARANG CITI SMALL LETTER KO 子音[k]を表す。 k
U+118CD 𑣍 WARANG CITI SMALL LETTER ENY 子音[ɲ]を表す。 ñ
U+118CE 𑣎 WARANG CITI SMALL LETTER YUJ 子音[d͡ʑ]を表す。 j
U+118CF 𑣏 WARANG CITI SMALL LETTER UC 子音[t͡ɕ]を表す。 c
U+118D0 𑣐 WARANG CITI SMALL LETTER ENN 子音[ɳ]を表す。
U+118D1 𑣑 WARANG CITI SMALL LETTER ODD 子音[ɖ]を表す。
U+118D2 𑣒 WARANG CITI SMALL LETTER TTE 子音[ʈ]を表す。
U+118D3 𑣓 WARANG CITI SMALL LETTER NUNG 子音[n]を表す。 n
U+118D4 𑣔 WARANG CITI SMALL LETTER DA 子音[d]を表す。 d
U+118D5 𑣕 WARANG CITI SMALL LETTER AT 子音[t]を表す。 t
U+118D6 𑣖 WARANG CITI SMALL LETTER AM 子音[m]を表す。 m
U+118D7 𑣗 WARANG CITI SMALL LETTER BU 子音[b]を表す。

二重音字𑣙𑣗(hb)はしばしば子音[w]を表すことがある[1]

b
U+118D8 𑣘 WARANG CITI SMALL LETTER PU 子音[p]を表す。 p
U+118D9 𑣙 WARANG CITI SMALL LETTER HIYO 子音[h]を表す。

母音の後に書かれた場合、長母音化、或いは[h]を語末に伴うことを表す[1]

h
U+118DA 𑣚 WARANG CITI SMALL LETTER HOLO 子音[l]を表す。 l
U+118DB 𑣛 WARANG CITI SMALL LETTER HORR 子音[ɽ]を表す。
U+118DC 𑣜 WARANG CITI SMALL LETTER HAR 子音[ɾ]を表す。 r
U+118DD 𑣝 WARANG CITI SMALL LETTER SSUU 子音[ʂ]を表す。
U+118DE 𑣞 WARANG CITI SMALL LETTER SII 子音[s]を表す。 s
U+118DF 𑣟 WARANG CITI SMALL LETTER VIYO 子音[w]を表す。

𑣁(a)と𑣙(h)の合字に由来する。

v
数字
U+118E0 𑣠 WARANG CITI DIGIT ZERO 数字の0 0
U+118E1 𑣡 WARANG CITI DIGIT ONE 数字の1 1
U+118E2 𑣢 WARANG CITI DIGIT TWO 数字の2 2
U+118E3 𑣣 WARANG CITI DIGIT THREE 数字の3 3
U+118E4 𑣤 WARANG CITI DIGIT FOUR 数字の4 4
U+118E5 𑣥 WARANG CITI DIGIT FIVE 数字の5 5
U+118E6 𑣦 WARANG CITI DIGIT SIX 数字の6 6
U+118E7 𑣧 WARANG CITI DIGIT SEVEN 数字の7 7
U+118E8 𑣨 WARANG CITI DIGIT EIGHT 数字の8 8
U+118E9 𑣩 WARANG CITI DIGIT NINE 数字の9 9
数値
U+118EA 𑣪 WARANG CITI NUMBER TEN 単位数字の10
U+118EB 𑣫 WARANG CITI NUMBER TWENTY 単位数字の20
U+118EC 𑣬 WARANG CITI NUMBER THIRTY 単位数字の30
U+118ED 𑣭 WARANG CITI NUMBER FORTY 単位数字の40
U+118EE 𑣮 WARANG CITI NUMBER FIFTY 単位数字の50
U+118EF 𑣯 WARANG CITI NUMBER SIXTY 単位数字の60
U+118F0 𑣰 WARANG CITI NUMBER SEVENTY 単位数字の70
U+118F1 𑣱 WARANG CITI NUMBER EIGHTY 単位数字の80
U+118F2 𑣲 WARANG CITI NUMBER NINETY 単位数字の90
記号
U+118FF 𑣿 WARANG CITI OM ヒンドゥー教などにおける聖音のオームを表す記号。

小分類

このブロックの小分類は「大文字の母音字」(Uppercase vowels)、「大文字の子音字」(Uppercase consonants)、「小文字の母音字」(Lowercase vowels)、「小文字の子音字」(Lowercase consonants)、「数字」(Digits)、「数値」(Numbers)、「記号」(Sign)の7つとなっている[2]

大文字の母音字(Uppercase vowels

この小分類にはワラング・クシティ文字のうち、大文字の母音字が収録されている。

大文字の子音字(Uppercase consonants

この小分類にはワラング・クシティ文字のうち、大文字の子音字が収録されている。

小文字の母音字)(Lowercase vowels

この小分類にはワラング・クシティ文字のうち、小文字の母音字が収録されている。

小文字の子音字(Lowercase consonants

この小分類にはワラング・クシティ文字のうち、小文字の子音字が収録されている。

数字(Digits

この小分類にはワラング・クシティ文字で用いられる固有の数字が収録されている。

数値(Numbers

この小分類にはワラング・クシティ文字のうち、位取り記数法を用いず、単位数字を並べて表現する数値記号(Unicode上では10進法の位取り記数法を用いる"digit"とは区別される)が収録されている。

記号(Sign

この小分類にはワラング・クシティ文字のうち、様々な記号類が収録されている。

文字コード

ワラング・クシティ文字(Warang Citi)[1]
Official Unicode Consortium code chart (PDF)
  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
U+118Ax 𑢠 𑢡 𑢢 𑢣 𑢤 𑢥 𑢦 𑢧 𑢨 𑢩 𑢪 𑢫 𑢬 𑢭 𑢮 𑢯
U+118Bx 𑢰 𑢱 𑢲 𑢳 𑢴 𑢵 𑢶 𑢷 𑢸 𑢹 𑢺 𑢻 𑢼 𑢽 𑢾 𑢿
U+118Cx 𑣀 𑣁 𑣂 𑣃 𑣄 𑣅 𑣆 𑣇 𑣈 𑣉 𑣊 𑣋 𑣌 𑣍 𑣎 𑣏
U+118Dx 𑣐 𑣑 𑣒 𑣓 𑣔 𑣕 𑣖 𑣗 𑣘 𑣙 𑣚 𑣛 𑣜 𑣝 𑣞 𑣟
U+118Ex 𑣠 𑣡 𑣢 𑣣 𑣤 𑣥 𑣦 𑣧 𑣨 𑣩 𑣪 𑣫 𑣬 𑣭 𑣮 𑣯
U+118Fx 𑣰 𑣱 𑣲 𑣿
注釈
1.^バージョン17.0時点


履歴

以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。

バージョン コードポイント[a] 文字数 L2 ID ドキュメント
7.0 U+118A0..118F2,118FF 84 L2/11-444 SEI / Michael Everson (3 January 2012), Revised proposal for encoding the Warang Citi script in the SMP (WG2 N4176) (英語)
L2/12-118 SEI / Michael Everson (20 April 2012), Final proposal for encoding the Warang Citi script (WG2 N4259) (英語)
  1. ^ 提案されたコードポイントと文字の名前は、最終決定と異なる場合がある。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u SEI / Michael Everson (2012年4月20日). “Final proposal for encoding the Warang Citi script (WG2 N4259)” (英語). Unicode. 2025年9月18日閲覧。
  2. ^ a b “The Unicode Standard, Version 17.0 - U118A0.pdf” (PDF). The Unicode Standard (英語). 2025年9月18日閲覧.

関連項目




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  ワラング・クシティ文字 (Unicodeのブロック)のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ワラング・クシティ文字 (Unicodeのブロック)」の関連用語

ワラング・クシティ文字 (Unicodeのブロック)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ワラング・クシティ文字 (Unicodeのブロック)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのワラング・クシティ文字 (Unicodeのブロック) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS