リスペクタビリティとスノビズム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 00:22 UTC 版)
「家事使用人」の記事における「リスペクタビリティとスノビズム」の解説
ヴィクトリア朝における家事使用人の急増を理解するためにはリスペクタビリティとスノビズムについて理解する必要がある。リスペクタビリティとはイギリスにおける社会的立場を示す「立派さ」のことであり、家事使用人の雇用にみられる衒示的消費はリスペクタビリティを示す手段の一つであった。家事使用人を雇用し家事労働からの解放を示すことは、下層中流階級にとって辛うじて可能な衒示的消費であった。 当時のイギリス社会では、社会的により上層のリスペクタブルである(立派な)文化や生活様式を模倣することで、階級的な差別化を図るスノビズムと言われる行動が広く行われており、ヴィクトリア朝において未曾有の繁栄を遂げた中流階級はジェントルマンたちの生活をこぞって模倣した。今日の耐久消費財のようにステータス・シンボルとなったそれらは旅行であったり、馬車であったりしたが、中でも最も一般的であったのが家事使用人である。上流階級とは即ち有閑階級であり、「働かない人々」であった。上流階級の様に家事使用人を使役することによって、生活のための労働から解放された存在であることを誇示し、リスペクタブルな身分であることを周囲に示そうとした。勿論、十分な数の使用人を雇うことが出来る上層中流階級以上の人々ならともかく、たった一人の使用人を雇うのがやっと、という最下層の中流階級の家庭であれば、家事からの解放など望むべくもなかった。しかし、彼らは救貧院から就業可能年齢の13歳に達したばかりの少女を極めて安価に雇い入れてまで中流階級としての体面を保とうとしたのである。
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