ミステリー・トレイン (曲)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/22 15:03 UTC 版)
「ミステリー・トレイン」 | ||||||||
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リトル・ジュニアズ・ブルー・フレイムズ の シングル | ||||||||
B面 | ラヴ・マイ・ベイビー | |||||||
リリース | ||||||||
規格 | 7インチシングル | |||||||
録音 | ||||||||
ジャンル | ||||||||
時間 | ||||||||
レーベル | サン・レコード (192) | |||||||
作詞・作曲 | ジュニア・パーカー | |||||||
プロデュース | サム・フィリップス | |||||||
リトル・ジュニアズ・ブルー・フレイムズ シングル 年表 | ||||||||
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ミステリー・トレイン(Mystery Train)は、アメリカ合衆国のブルース・ミュージシャンであるジュニア・パーカーが作曲し、1953年にレコーディングした楽曲。メンフィス・ブルースあるいはリズム・アンド・ブルースのスタイルで演奏されており、より古い楽曲にインスピレーションを受けている。
エルヴィス・プレスリーによって歌われたのを皮切りに多くのカバーが生まれており、ポピュラーなロカビリーの楽曲として知られるようになり[3]、今や「不朽の名曲」と評価されている[4]。プレスリーが全米規模のカントリー・ミュージックのスターの座に押し上げた最初の曲でもある[5]。
楽曲とレコーディング
音楽歴史家のコリン・エスコットは以下の通り述べている。「『ミステリー・トレイン』に関するミステリーのひとつは、この題名の由来である。というのも、歌詞の中には題名はどこにも登場しないのだ[6]」。この曲の歌詞にはアメリカのフォーク・ミュージックのグループ、カーター・ファミリーの「Worried Man Blues」と似通った部分が存在する。同曲は古いケルティックのバラードが元となっており[3]、彼らが1930年に発表したレコードの中で一番売れたものとなっている[7]。
16両編成の列車が到着した
16両編成の列車が到着した
私の愛した女性はあの列車に乗って行ってしまった
一方、パーカーの歌には以下の歌詞がある:
私の乗る列車は16両編成
私の乗る列車は16両編成
あー、あの長くて黒い列車が私のベイビーを連れて帰るんだ
パーカーはリトル・ジュニアズ・ブルー・フレイムズ名義で、サン・レコードのプロデューサー兼社主のサム・フィリップスのために「ミステリー・トレイン」をレコーディングした[8]。レコーディング・セッションは、フィリップスの所有するテネシー州メンフィスのメンフィス・レコーディング・サーヴィスにて1953年の9月から10月の間に行なわれた。パーカーのヴォーカルのバックを務めたのは彼のバンドであるブルー・フレイムズで、参加したと思われる当時のメンバーはフロイド・マーフィー(ギター)[注釈 1]、ウィリアム・ジョンソン(ピアノ)、ケネス・バンクス(ベース)、ジョン・バウアーズ(ドラムス)、そしてレイモンド・ヒル(テナー・サックス)といった面々である[6]。
「ミステリー・トレイン」は1953年にR&Bチャート5位のヒットとなった「フィーリン・グッド (Sun 187)」に続くジュニア・パーカーのシングルだったが、この曲はシングル・チャート入りすることはなかった。
エルヴィス・プレスリーのバージョン
「ミステリー・トレイン」 | ||||||||
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エルヴィス・プレスリー の シングル | ||||||||
A面 | アイ・フォーガット・トゥ・リメンバー・トゥ・フォーゲット | |||||||
リリース | ||||||||
規格 | 7インチシングル | |||||||
録音 | ||||||||
ジャンル | ロカビリー | |||||||
時間 | ||||||||
レーベル | サン・レコード (223) | |||||||
作詞・作曲 | ||||||||
プロデュース | サム・フィリップス | |||||||
エルヴィス・プレスリー シングル 年表 | ||||||||
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エルヴィス・プレスリーによる「ミステリー・トレイン」は、シングル『アイ・フォーガット・トゥ・リメンバー・トゥ・フォーゲット』のB面収録曲として1955年8月20日に発表された(Sun 223)。同シングルはビルボードのカントリー&ウェスタン・チャートのトップ10に食い込んだ[10]。2003年、ローリング・ストーン誌はオールタイム・グレイテスト・ソング500において、この曲を77位にランク付けした[11]。
サム・フィリップスはパーカーのレコーディングに続いて、このレコーディングでもプロデュースを行なった。プレスリーがヴォーカルとリズム・ギター、スコティ・ムーアがリード・ギター、ビル・ブラックがベースを務めた。ムーアはカントリー調のリードのブレイク、それにフィンガー・ピッキングにスラップバック・エコーを効かせている[12]。ムーアはまた、ジュニア・パーカーの「Love My Baby」(1953年)でパット・ヘアが弾いたギター・リフや[13]、マール・トラヴィスの「16トン (Sixteen Tons)」など、既存曲の要素を散りばめている[14][15]。
1955年11月、本曲はプレスリーとの契約締結によってレコーディングの権利を得たRCAビクターよって再発され(#47-6357)、全米ビルボードカントリー・チャートの11位を記録した。
その他のバージョン
- RCAビクターはプレスリー・バージョンを再発したのと同じ月に、ザ・タートルズ[注釈 2][16]によるポップス・バージョンを発売している(#47-6356)[17]。ここではヒューゴ・ウィンターホルターと彼のオーケストラがバックを付けている。
- 1973年、ザ・バンドは本曲をアルバム『ムーンドッグ・マチネー』のためにレコーディングした。メンバーのロビー・ロバートソンは、サム・フィリップスの承認を得たうえで追加の歌詞を書いた[18][注釈 3]。彼らは1976年のフェアウェル・コンサート『ラスト・ワルツ』でポール・バターフィールドと本曲を演奏している[19]。
脚注
注釈
出典
- ^ 45cat - Little Junior's Blue Flames - Mystery Train / Love My Baby - Sun - USA - 192
- ^ Bill Dahl. “Junior Parker | Biography & History”. AllMusic. 2016年7月25日閲覧。
- ^ a b Herzhaft, Gerard (1992). "Mystery Train". Encyclopedia of the Blues. アーカンソー州フェイエットヴィル: アーカンソー大学出版局. p. 463. ISBN 1-55728-252-8。
- ^ Burke, Ken and Griffin, Dan. The Blue Moon Boys - The Story of Elvis Presley's Band. Chicago Review Press, 2006, p.46. ISBN 1-55652-614-8
- ^ Collins, Ace (1996). The Stories Behind Country Music's All-time Greatest: 100 Songs. New York: The Berkeley Publishing Group. pp. 94–96. ISBN 1-57297-072-3
- ^ a b Escott, Colin (1990). Mystery Train (Album notes). Junior Parker, James Cotton, Pat Hare. Cambridge, Massachusetts: Rounder Records. pp. 1–2. CD SS 38。
- ^ “American Experience | The Carter Family: Will the Circle Be Unbroken”. Pbs.org. 2010年11月29日閲覧。
- ^ Robert Palmer (1981). Deep Blues. Penguin Books. p. 237. ISBN 978-0-14-006223-6
- ^ Burke, Ken and Dan Griffin. The Blue Moon Boys - The Story of Elvis Presley's Band. Chicago Review Press, 2006. pg. 48. ISBN 1-55652-614-8
- ^ Billboard, December 17, 1955. Reviews of New Pop Records. pp. 56および61.
- ^ “Search Articles, Artists, Reviews, Videos, Music and Movies”. Rolling Stone. 2007年5月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年11月29日閲覧。
- ^ Blue Moon Boys, p. 48
- ^ “PARKER, Little Junior : MusicWeb Encyclopaedia of Popular Music”. 2006年6月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年7月3日閲覧。
- ^ Gillett, Charlie (1984). The Sound of the City: The Rise of Rock and Roll (Rev. ed.). New York City: Pantheon Books. ISBN 0-394-72638-3 2012年7月6日閲覧. "特に「ラヴ・マイ・ベイビー」はパット・ヘアの激しいギター・プレイがフィーチャーされており、各所で語られることとなるロカビリー・スタイルに影響を与えている。"
- ^ Tosches, Nick. Country - the Twisted Roots of Rock 'n' Roll. DeCapo Press, 1985. pg 54. ISBN 0-306-80713-0
- ^ “Discogs”. 2025年3月22日閲覧。
- ^ “Discogs”. 2025年3月22日閲覧。
- ^ Robertson, Robbie (2017). Testimony. Windmill Books. p. 410. ISBN 978-0099510956
- ^ 『ムーンドッグ・マチネー』(1973年)ライナー・ノーツより。
外部リンク
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