ペガシステムズ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/20 17:46 UTC 版)
ペガシステムズ(英語: Pegasystems Inc.)は、米国マサチューセッツ州ウォルサムに本拠を置くグローバルソフトウェア企業である。1983年にアラン・トレフラーによって設立され、ビジネス向けのワークフロー自動化、生成AIを活用した意思決定、および顧客エンゲージメントのためのプラットフォームを提供している。1996年よりNASDAQに上場している。2022年5月に本社をケンブリッジから現在のウォルサムに移転した。 同社の製品は、金融、保険、ヘルスケア、通信、政府機関など多くの業界で利用されている。
沿革
創業から株式公開まで
ペガシステムズは、1983年にアラン・トレフラーが27歳のときマサチューセッツ州ケンブリッジに設立された[1]。創業当初は、アメリカン・エキスプレスなどの企業向けにケース管理ソフトウェアの提供に注力した。1996年には新規および二次株式公開を経て、NASDAQでPEGAの銘柄コードで取引を開始した。
2010年代の拡大戦略
2010年代には、積極的な企業買収を通じて事業を拡大した。2010年にはエンタープライズソフトウェア企業のChordiantを約1億6150万ドルで買収[2]し、顧客関係管理(CRM)技術を統合してオンライン研修、通信、ヘルスケア市場へ参入。2013年にはモバイルアプリケーション開発のAntenna Softwareを2770万ドルで買収[3][4]し、海外拠点も獲得した。
2014年には、クラウドサービスを強化するため、北米とインドのネットワーク事業に投資した[5]。さらに、テキストマイニングおよび分析ソフトウェアのMeshLabs[6]と、コブラウジングツールのFireflyを買収した[7]。2015年にはロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)を専門とするOpenSpan Inc.を買収[8]し、その技術を自社の製品に組み込んだ。その後も、ビジネスアナリティクス企業のInfruid Labs[9]や、デジタルメッセージングプラットフォームのIn The Chatを買収[10]し、多角的な事業展開を進めた。 また、Hexaware、NIIT Incessant Technologies、タタ・コンサルタンシー・サービシズ、インフォシス、ウィプロ、HCLテクノロジーズ、アクセンチュア、コグニザントなどのITサービス企業と積極的なパートナーシップを築いた。
2020年以降
2020年には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに対応するため、金融機関向けの緊急融資管理アプリケーションを開発するなど、社会貢献活動にも注力した。同年、ボストンを拠点とするパンクバンド、ドロップキック・マーフィーズがフェンウェイ・パークで開催した慈善コンサートを後援[11]し、70万ドル以上の支援基金を集めた。
2021年1月には、音声通話をリアルタイムで分析するクラウドサービスを提供するQurious.ioを買収[12]。同年、本社をマサチューセッツ州ケンブリッジからマサチューセッツ州ウォルサムに移転した。また、ライダーカップの公式サプライヤーとなり、プロゴルファーのスポンサーを務める[13]など、スポーツ分野でのマーケティングも開始した。
2022年5月、競合企業であるアピアン・コーポレーションから営業秘密不正流用を理由に訴えられ、20億3600万ドルの損害賠償を命じられる陪審員評決が下されたが、ペガシステムズは控訴を提起している[14][15]。同年には、プロセス・マイニング企業であるブラジルのEverflowを買収[16]し、ハイパーオートメーション事業を強化した。
製品とサービス
Pega Infinity
ペガシステムズの主要製品は、Pega Infinityというアプリケーション群である。これは、AI、ローコード、自動化の機能を統合し、企業が業務を効率化するための包括的なソリューションを提供する[17]。
Pega Infinityは、以下の主要製品で構成されている。
Pega Platform: 業務アプリケーションを構築・実行するための基盤となるプラットフォームである[18]。
Pega Customer Decision Hub: AIが顧客一人ひとりの状況を分析し、最適なマーケティング施策をリアルタイムで提示するツールである[19]。
Pega Customer Service: 顧客からの問い合わせを効率化する顧客関係管理 (CRM) 製品である。AIが最適な回答や手順を提示し、顧客満足度の向上と業務負担の軽減に貢献する[20]。
Pega Infinityを用いることで以下のことが実現できる。
- 顧客対応の自動化: 電話、メール、チャットなど、複数のチャネルから寄せられる顧客からの問い合わせを一元管理し、その後の契約手続きやサービス変更といった業務まで自動で処理する。これにより、顧客は迅速な対応を受けられ、企業は業務効率を大幅に向上させることができる。
- ローコード開発: プログラミングの知識がなくても、直感的な操作で業務アプリケーションを作成できる。現場の従業員が業務に合わせたアプリを迅速に作ったり、IT部門が複雑なシステムを短期間で構築したりすることが可能である。
- AIの活用: PegaのAIは、顧客との会話をリアルタイムで分析し、次に取るべき最適な行動を提案する。例えば、「契約内容を変更したい」という顧客の言葉に合わせ、AIが自動的に関連画面を表示し、必要な情報を提案するといった機能を持つ。
クラウドサービス
Pega Cloudを利用すれば、自社でサーバーを構築・管理することなく、Pegaの製品をクラウド上で手軽に利用できる[21]。Pegaのアプリケーションは、Google Cloud、Microsoft Azure、Amazon Web Servicesといった主要なパブリッククラウド上でも動作する。
生成AI(Pega GenAI)
2023年に発表されたPega GenAIは、Pegaの製品群に統合された生成AIの機能である[22]。これにより、以下のツールが利用できるようになった。
Pega GenAI Blueprint: アプリケーションの企画・設計をAIがサポートするツールである。作りたいアプリの目的や機能を説明すると、AIが最適な設計案やワークフローを提案する[23]。
Pega GenAI Knowledge Buddy: 社内に蓄積されたマニュアルや資料を利用して、ユーザーの質問に回答するAIアシスタントである。回答の根拠となる情報源が明確に示される[24]。
Pega GenAI Socrates: Pegaソフトウェアの使い方を教えるAIチューターである。単に情報を与えるだけでなく、対話を通じてユーザーのスキルレベルやニーズを把握し、個別に最適化された学習プロセスを提供する[25]。
ペガジャパン株式会社
種類 | 株式会社 |
---|---|
市場情報 | 非上場 |
本社所在地 | ![]() 〒102-0093 東京都千代田区平河町1-1-1 平河町コート8階 |
代表者 | 小沢 匠 |
資本金 | 1,100万円 |
純利益 | 1億2,219万9,000円(2023年12月31日時点)[26] |
総資産 | 30億7,363万9,000円(2023年12月31日時点)[26] |
決算期 | 12月末日 |
ペガジャパン株式会社は、米国Pegasystems Inc. (NASDAQ: PEGA)の日本法人で、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するソフトウェアソリューションを提供する企業である。2011年1月に東京都千代田区で設立された。
ペガジャパンの顧客には、金融、保険、製造、通信など幅広い業界の大手企業が含まれ、みずほ銀行や東京海上日動火災保険[27]、NTT東日本[28]などの導入事例がある。
アライアンスパートナーとの協業を強化しており、インフォテック、日本インサイトテクノロジー、PKUTECH、富士ソフト、TIS、ベイカレント・コンサルティング、SHIFT、日鉄ソリューションズ、NTTデータ、アクセンチュア、キャップジェミニ、日立製作所など、国内およびグローバルのシステムインテグレーターやコンサルティングファームとアライアンス契約を締結している。これにより、各パートナーが持つ業界知識や技術力、顧客基盤を活かし、Pega Platformを活用したソリューションの共同開発や提供を推進している。
脚注
出典
- ^ “Our founder, CEO looks back on Pega's history”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pegasystems To Buy Chordiant For $161.5 Million”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pegasystems CEO Alan Trefler on raising the BPM game”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pegasystems acquires Antenna Software”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Why Pegasystems CEO Alan Trefler has learned to think smaller”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pegasystems Inc. acquires Meshlabs Software Private Limited”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pegasystems Acquires Co-Browsing Tool Firefly, The First Investment By First Round’s Dorm Room Fund”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Term Sheet — Wednesday, April 13”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pegasystems acquiert l'outil de dataviz d'Infruid Labs”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Businesses develop apps quickly to manage disruption of Covid-19”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Dropkick Murphys Announce 'Streaming Outta Fenway' Concert”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pegasystems acquires Qurious.io to apply speech analytics to customer service”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pegasystems is sponsoring the Ryder Cup, but what exactly do they do?”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Appian wins $2B-plus verdict against Pegasystems in trade secrets case”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pegasystems files appeal in $2B-plus trade secrets case”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pega acquires Everflow to advance its process mining and hyper-automation ambitions”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pega Infinity™”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pega Platform™”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pega Customer Decision Hub™”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pega Customer Service™”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pega Cloud™”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pega GenAI:初のエンタープライズ向け生成AI”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pega GenAI Blueprint”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pega GenAI Knowledge Buddy”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pega Transforms Corporate Learning with Pega GenAI Socrates”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ a b “ペガジャパン株式会社 決算公告”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “ペガジャパン株式会社 - 導入事例”. 2025年9月21日閲覧。
- ^ “Pegaの業務アプリケーションを活用し、NTT東日本が「業務効率化」と「お客さま満足度向上」を実現”. 2025年9月21日閲覧。
外部リンク
ペガジャパンPegaJapan K.K. - YouTubeチャンネル
- ペガシステムズのページへのリンク