ハニーフィー・ロヒンギャ文字_(Unicodeのブロック)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > ハニーフィー・ロヒンギャ文字_(Unicodeのブロック)の意味・解説 

ハニーフィー・ロヒンギャ文字 (Unicodeのブロック)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/23 07:44 UTC 版)

ハニーフィー・ロヒンギャ文字 (Unicodeのブロック)
Hanifi Rohingya
範囲 U+10D00..U+10D3F
(64 個の符号位置)
追加多言語面
用字 ハニーフィー・ロヒンギャ文字
主な言語・文字体系
割当済 50 個の符号位置
未使用 14 個の保留
Unicodeのバージョン履歴
11.0 50 (+50)
公式ページ
コード表 ∣ ウェブページ
テンプレートを表示

ハニーフィー・ロヒンギャ文字(ハニーフィー・ロヒンギャもじ、英語: Hanifi Rohingya)は、Unicodeブロックの一つ。

解説

ミャンマーラカイン州などに居住する少数民族ロヒンギャが話すインド・ヨーロッパ語族インド・イラン語派インド語派に属する、ベンガル語などと近縁のロヒンギャ語を表記するために1980年代にマウラナ・モハメッド・ハニフ(Maulana Mohammed Hanif)によって考案されたハニーフィー・ロヒンギャ文字を収録している。なお、この文字が考案される以前のロヒンギャ語はラテン文字アラビア文字ビルマ文字が用いられていた[1]

ハニーフィー・ロヒンギャ文字は音素文字のうち子音と母音とに独立した文字が割り当てられているアルファベットに分類される。アラビア文字やヘブライ文字などと同様に右から左への横書き(右横書き)であり、単語毎に分かち書きをする。

直接の系統的な関係は無いが、一部の文字の外観はアラビア文字、ビルマ文字、ラテン文字の影響がみられる[1]

アラビア文字のように一つの単語は繋げて書かれ、単語内の位置(独立・語頭・語中・語末)によって字形が変化する。なお、文字の語内位置による字形変化を説明する場合はゼロ幅接合子(U+200D; ZWJ)を用いることで、その字形を表現することができる。例えば字母U+10D14 𐴔の語中形は‍𐴔‍U+200D U+10D14 U+200Dの形で表すことができる。

また、強調のため文字と文字とを繋ぐ線を引き延ばして書かれることがあるが、Unicodeではアラビア文字で同様の用途で用いられるU+0640 ـ ARABIC TATWEEL(タットウィール)を使用してこれを表現する[1]

加えて、アラビア文字タイ文字などと同様に独自の数字体系(ハニーフィー・ロヒンギャ数字)を有している。

符号位置の順序はおおむね伝統的なハニーフィー・ロヒンギャ文字の順序に従っている。

文字名はブラーフミー文字由来の南アジアの文字のUnicode命名規則に従っている[1]

Unicodeのバージョン11.0において初めて追加された。

収録文字

コード 文字

(独立形)

文字名(英語) 語頭形 語中形 語末形 用例・説明 対応するアラビア文字 対応するビルマ文字 ラテン文字転写
字母
U+10D00 𐴀 HANIFI ROHINGYA LETTER A 𐴀‍ ‍𐴀‍ ‍𐴀 頭子音が無いことを表す。 ا/ع
U+10D01 𐴁 HANIFI ROHINGYA LETTER BA 𐴁‍ ‍𐴁‍ ‍𐴁 子音[b]を表す。 ب b
U+10D02 𐴂 HANIFI ROHINGYA LETTER PA 𐴂‍ ‍𐴂‍ ‍𐴂 子音[p]を表す。 پ p
U+10D03 𐴃 HANIFI ROHINGYA LETTER TA 𐴃‍ ‍𐴃‍ ‍𐴃 子音[t]を表す。 ت/ط t
U+10D04 𐴄 HANIFI ROHINGYA LETTER TTA 𐴄‍ ‍𐴄‍ ‍𐴄 子音[ʈ]を表す。 ٹ th
U+10D05 𐴅 HANIFI ROHINGYA LETTER JA 𐴅‍ ‍𐴅‍ ‍𐴅 子音[ɟ]を表す。 ج j
U+10D06 𐴆 HANIFI ROHINGYA LETTER CA 𐴆‍ ‍𐴆‍ ‍𐴆 子音[c]を表す。 چ ch
U+10D07 𐴇 HANIFI ROHINGYA LETTER HA 𐴇‍ ‍𐴇‍ ‍𐴇 子音[h]を表す。 ح/ه h'
U+10D08 𐴈 HANIFI ROHINGYA LETTER KHA 𐴈‍ ‍𐴈‍ ‍𐴈 子音[x]を表す。 خ kh
U+10D09 𐴉 HANIFI ROHINGYA LETTER FA 𐴉‍ ‍𐴉‍ ‍𐴉 子音[f]を表す。 ف f
U+10D0A 𐴊 HANIFI ROHINGYA LETTER DA 𐴊‍ ‍𐴊‍ ‍𐴊 子音[d]を表す。 د/ض d
U+10D0B 𐴋 HANIFI ROHINGYA LETTER DDA 𐴋‍ ‍𐴋‍ ‍𐴋 子音[ɖ]を表す。

かつてはアラビア文字のطのように書かれていたが、字母rra(U+10D0D 𐴍)との区別のため字形が変更された[1]

ڈ dh
U+10D0C 𐴌 HANIFI ROHINGYA LETTER RA 𐴌‍ ‍𐴌‍ ‍𐴌 子音[ɾ]を表す。 ر r
U+10D0D 𐴍 HANIFI ROHINGYA LETTER RRA 𐴍‍ ‍𐴍‍ ‍𐴍 子音[ɽ]を表す。 ڑ ç
U+10D0E 𐴎 HANIFI ROHINGYA LETTER ZA 𐴎‍ ‍𐴎‍ ‍𐴎 子音[z]を表す。 ز/ذ/ظ z
U+10D0F 𐴏 HANIFI ROHINGYA LETTER SA 𐴏‍ ‍𐴏‍ ‍𐴏 子音[s]を表す。 س/ث/ص s
U+10D10 𐴐 HANIFI ROHINGYA LETTER SHA 𐴐‍ ‍𐴐‍ ‍𐴐 子音[ʃ]を表す。 ش c
U+10D11 𐴑 HANIFI ROHINGYA LETTER KA 𐴑‍ ‍𐴑‍ ‍𐴑 子音[k]を表す。 ک‌/ق က k
U+10D12 𐴒 HANIFI ROHINGYA LETTER GA 𐴒‍ ‍𐴒‍ ‍𐴒 子音[ɡ]を表す。 گ g
U+10D13 𐴓 HANIFI ROHINGYA LETTER LA 𐴓‍ ‍𐴓‍ ‍𐴓 子音[l]を表す。

末端が渦巻き状になっている異体字も存在する[1]

ل l
U+10D14 𐴔 HANIFI ROHINGYA LETTER MA 𐴔‍ ‍𐴔‍ ‍𐴔 子音[m]を表す。

他の文字と比べて語頭形・語中形が独立形と大きく異なる形状をとる[1]

م m
U+10D15 𐴕 HANIFI ROHINGYA LETTER NA 𐴕‍ ‍𐴕‍ ‍𐴕 子音[n]を表す。 ن n
U+10D16 𐴖 HANIFI ROHINGYA LETTER WA 𐴖‍ ‍𐴖‍ ‍𐴖 子音[ʋ]を表す。 و v
U+10D17 𐴗 HANIFI ROHINGYA LETTER KINNA WA 𐴗‍ ‍𐴗‍ ‍𐴗 子音[u̯]を表す。二重母音などに用いられる[1] و u
U+10D18 𐴘 HANIFI ROHINGYA LETTER YA 𐴘‍ ‍𐴘‍ ‍𐴘 子音[j]を表す。 ي y
U+10D19 𐴙 HANIFI ROHINGYA LETTER KINNA YA 𐴙‍ ‍𐴙‍ ‍𐴙 子音[i̯]を表す。二重母音などに用いられる[1] ي i
U+10D1A 𐴚 HANIFI ROHINGYA LETTER NGA 𐴚‍ ‍𐴚‍ ‍𐴚 子音[ŋ]を表す。

文字名はganとも呼ばれる[2]

ڠ ng
U+10D1B 𐴛 HANIFI ROHINGYA LETTER NYA 𐴛‍ ‍𐴛‍ ‍𐴛 子音[ɲ]を表す。

文字名はnayyaとも呼ばれる[2]

ني ny
追加の文字
U+10D1C 𐴜 HANIFI ROHINGYA LETTER VA 𐴜‍ ‍𐴜‍ ‍𐴜 外来語などの子音[v]を表す[1]

広く使用されておらず、使用が中止されている[2]

v
母音字
U+10D1D 𐴝 HANIFI ROHINGYA VOWEL A 𐴝‍ ‍𐴝‍ ‍𐴝 母音[ɔ][1]或いは[a]を表す。 ◌َ a
U+10D1E 𐴞 HANIFI ROHINGYA VOWEL I 𐴞‍ 𐴞‍‍ ‍𐴞 母音[i]を表す。 ◌ِ i
U+10D1F 𐴟 HANIFI ROHINGYA VOWEL U 𐴟‍ ‍𐴟‍ ‍𐴟 母音[u]を表す。 ◌ُ u
U+10D20 𐴠 HANIFI ROHINGYA VOWEL E 𐴠‍ ‍𐴠‍ ‍𐴠 母音[e]を表す。 ◌ࣦ e
U+10D21 𐴡 HANIFI ROHINGYA VOWEL O 𐴡‍ ‍𐴡‍ ‍𐴡 母音[o]を表す。 ◌ࣤ/◌ࣥ o
殺母音記号
U+10D22 𐴢 HANIFI ROHINGYA MARK SAKIN 𐴢‍ ‍𐴢‍ ‍𐴢 文字を単独で扱う場合や、単語の末子音を表すために用いられることがある。ただし、ハニーフィー・ロヒンギャ文字はアブギダではなくアルファベットのためこの文字の使用は任意である[1] ◌ۡ
鼻音化記号
U+10D23 𐴣 HANIFI ROHINGYA MARK NA KHONNA 𐴣‍ ‍𐴣‍ ‍𐴣 母音の鼻母音化を表す。 ں ñ
声調記号
U+10D24 𐴤 HANIFI ROHINGYA SIGN HARBAHAY 高調(IPA:[˥])の短母音を表す[2] ◌࣪ / ◌࣭ ́
U+10D25 𐴥 HANIFI ROHINGYA SIGN TAHALA 下降調(IPA:[˥˩])の長母音を表す[2] ◌࣫ / ◌࣮ (母音を2回繰り返し、前の方に鋭アクセント記号を付ける)
U+10D26 𐴦 HANIFI ROHINGYA SIGN TANA 上昇調(IPA:[˨˦])を表す[2] ◌࣬ / ◌࣯ (母音を2回繰り返し、後の方に鋭アクセント記号を付ける)
促音記号
U+10D27 𐴧 HANIFI ROHINGYA SIGN TASSI ◌ّ
数字
U+10D30 𐴰 HANIFI ROHINGYA DIGIT ZERO 数字の0 ٠ 0
U+10D31 𐴱 HANIFI ROHINGYA DIGIT ONE 数字の1 ١ 1
U+10D32 𐴲 HANIFI ROHINGYA DIGIT TWO 数字の2 ٢ 2
U+10D33 𐴳 HANIFI ROHINGYA DIGIT THREE 数字の3 ٣ 3
U+10D34 𐴴 HANIFI ROHINGYA DIGIT FOUR 数字の4 ٤ 4
U+10D35 𐴵 HANIFI ROHINGYA DIGIT FIVE 数字の5 ٥ 5
U+10D36 𐴶 HANIFI ROHINGYA DIGIT SIX 数字の6 ٦ 6
U+10D37 𐴷 HANIFI ROHINGYA DIGIT SEVEN 数字の7 ٧ 7
U+10D38 𐴸 HANIFI ROHINGYA DIGIT EIGHT 数字の8 ٨ 8
U+10D39 𐴹 HANIFI ROHINGYA DIGIT NINE 数字の9 ٩ 9

小分類

このブロックの小分類は「字母」(Letters)、「追加の文字」(Additional letter)、「母音字」(Vowels)、「殺母音記号」(Vowel silencer)、「鼻音化記号」(Nasalization mark)、「声調記号」(Tone signs)、「促音記号」(Gemination sign)、「数字」(Digits)の8つとなっている[2]

字母(Letters

この小分類にはハニーフィー・ロヒンギャ文字のうち、基本的な字母が収録されている。

追加の文字(Additional letter

この小分類にはハニーフィー・ロヒンギャ文字のうち、/v/を表す、現在は使われていない字母が収録されている。

母音字(Vowels

この小分類にはハニーフィー・ロヒンギャ文字のうち、基本的な母音字が収録されている。

殺母音記号(Vowel silencer

この小分類にはハニーフィー・ロヒンギャ文字のうち、単語の末子音を表すために任意で用いられるsakinと呼ばれる文字一つのみが収録されている。

鼻音化記号(Nasalization mark

この小分類にはハニーフィー・ロヒンギャ文字のうち、鼻音化を表す文字一つのみが収録されている。

声調記号(Tone signs

この小分類にはハニーフィー・ロヒンギャ文字のうち、なんちゃらかんちゃらが収録されている。

促音記号(Gemination sign

この小分類にはハニーフィー・ロヒンギャ文字のうち、子音字を長子音として読むための結合記号ダイアクリティカルマーク)が収録されている。

数字(Digits

この小分類にはハニーフィー・ロヒンギャ文字で用いられる固有の数字が収録されている。

必須の合字

字母da(U+10D0A 𐴊)と殺母音記号sakin(U+10D22 𐴢)が連続すると特殊な合字を形成する[1]

必須の合字
独立形 語頭形 語中形 語末形
da+sakin 𐴊𐴢 𐴊𐴢‍ ‍𐴊𐴢‍ ‍𐴊𐴢

文字コード

ハニーフィー・ロヒンギャ文字(Hanifi Rohingya)[1]
Official Unicode Consortium code chart (PDF)
  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
U+10D0x 𐴀 𐴁 𐴂 𐴃 𐴄 𐴅 𐴆 𐴇 𐴈 𐴉 𐴊 𐴋 𐴌 𐴍 𐴎 𐴏
U+10D1x 𐴐 𐴑 𐴒 𐴓 𐴔 𐴕 𐴖 𐴗 𐴘 𐴙 𐴚 𐴛 𐴜 𐴝 𐴞 𐴟
U+10D2x 𐴠 𐴡 𐴢 𐴣 𐴤 𐴥 𐴦 𐴧
U+10D3x 𐴰 𐴱 𐴲 𐴳 𐴴 𐴵 𐴶 𐴷 𐴸 𐴹
注釈
1.^バージョン16.0時点


履歴

以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。

バージョン コードポイント[a] 文字数 L2 ID ドキュメント
11.0 U+10D00..10D27,10D30..10D39 50 L2/16-311 Anshuman Pandey (25 January 2017), Revised proposal to encode Hanifi Rohingya (revised (英語)
  1. ^ 提案されたコードポイントと文字の名前は、最終決定と異なる場合がある。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m Anshuman Pandey (2017年1月25日). “Revised proposal to encode Hanifi Rohingya (revised” (英語). Unicode. 2025年5月23日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g "The Unicode Standard, Version 15.1 - U10D00.pdf" (PDF). The Unicode Standard (英語). 2025年5月23日閲覧

関連項目




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  ハニーフィー・ロヒンギャ文字_(Unicodeのブロック)のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ハニーフィー・ロヒンギャ文字_(Unicodeのブロック)」の関連用語

ハニーフィー・ロヒンギャ文字_(Unicodeのブロック)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ハニーフィー・ロヒンギャ文字_(Unicodeのブロック)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのハニーフィー・ロヒンギャ文字 (Unicodeのブロック) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS