ナブラ記号
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 15:21 UTC 版)

記号 ∇(ナブラ、英: nabla)の呼び名は、似た形のヘブライの竪琴のギリシャ語名 νάβλα に由来する(アラビア語とヘブライ語での呼び名とも関係がある)。数学記号としてこれを用いたのはハミルトンだが、横向き楔形 ⊲ としてである。 他にも稀に、ギリシャ文字 Δ (delta) の逆さまであるということで、逆さ綴りにしたアトレッド (atled) を呼び名とすることもある。あるいは実際のギリシャ語での呼び名は「逆さまのデルタ」(ανάδελτα) である。
別系統の呼び名として、∇ が心臓を横から見た形に似ていることから「心臓」を意味するペルシャ語の دل(デル)がある。
ナブラ記号は標準の HTML でも ∇
と書いて、あるいは LaTeX でも \nabla
と書けば利用できる。ユニコードでは16進で U+2207, 10進で 8711 にコードポイントを持つ。
なお、海面近くで小魚の群れが波を立てる様子を「なぶら」と呼ぶ地域があるが、これは魚群 (なむら) の転訛であり、数学記号とは無関係である[1]。
数学における用例
∇ は数学において勾配、発散、回転を取る演算を指し示す微分作用素としてのナブラ演算を表すのに用いられる。微分幾何学における接続や、差分法における(前進差分 Δ の逆としての)後退差分、あるいは主に束論における(相等関係 Δ の逆としての)全関係を表すのにも用いられる。記号の導入者はアイルランドの数学・物理学者ハミルトンで、1837年のことである[2]。ウィリアム・トムソンは1884年に
"I took the liberty of asking Professor Bell whether he had a name for this symbol ∇ and he has mentioned to me nabla, a humorous suggestion of Maxwell's. It is the name of an Egyptian harp, which was of that shape"(「ベル教授にこの記号 ∇ の名付けについて尋ねる機会を得たとき、先生はマクスウェルの愉快な提案である『ナブラ』について私に教えてくれました。同じ形をしたエジプトの竪琴の名だというのです[訳語疑問点]」)
と書いている[3]。
1901年にギブズとウィルソンは
"This symbolic operator ∇ was introduced by Sir W. R. Hamilton and is now in universal employment. There seems, however, to be no universally recognized name for it, although owing to the frequent occurrence of the symbol some name is a practical necessity. It has been found by experience that the monosyllable del is so short and easy to pronounce that even in complicated formulae in which![]()
- ナブラ記号のページへのリンク