タークリー文字_(Unicodeのブロック)とは? わかりやすく解説

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タークリー文字 (Unicodeのブロック)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/17 16:26 UTC 版)

タークリー文字 (Unicodeのブロック)
Takri
範囲 U+11680..U+116CF
(80 個の符号位置)
追加多言語面
用字 タークリー文字
主な言語・文字体系
割当済 68 個の符号位置
未使用 12 個の保留
Unicodeのバージョン履歴
6.1 66 (+66)
12.0 67 (+1)
14.0 68 (+1)
公式ページ
コード表 ∣ ウェブページ
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タークリー文字(タークリーもじ、英語: Takri)は、Unicodeブロックの一つ。

解説

17世紀から20世紀半ばごろにかけて、南アジア北西部の、主にインド最北部のジャンムー・カシミール州ヒマーチャル・プラデーシュ州パンジャブ州、及び現在のウッタラーカンド州において、いずれもインド・ヨーロッパ語族インド・イラン語派インド語群に属するドーグリー語パンジャーブ語チャンバリ語英語版、及びいくつかのパハール語群(ネパール語などと近縁の言語)の言語の表記に用いられたタークリー文字を収録している[1]

現在、ドーグリー語や多くのパハール語群の言語はデーヴァナーガリーで、パンジャーブ語はグルムキー文字或いはアラビア文字の派生であるシャームキー文字で書かれるが、2004年にインド政府がドーグリー語を指定言語として正式に認定したことを受けて、ドーグリー語にタークリー文字の使用を復活させようとする試みが進行している[1]

タークリー文字はブラーフミー文字(及びその派生文字であるシャーラダー文字)から派生した所謂ブラーフミー系文字(インド系文字)の一つであり、音素文字のうち子音字単独では暗黙の随伴母音/-a/を伴って発音され、別の母音にする際に母音記号を付加することで発音を切り替えるアブギダに分類される。ラテン文字などと同様に左から右への横書き(左横書き)であり、単語毎に分かち書きをする。

加えて、アラビア文字タイ文字などと同様に独自の数字体系(タークリー数字)を有している。

符号位置の順序はおおむねブラーフミー文字の順序に従っている。

Unicodeのバージョン6.1において初めて追加された。

収録文字

ラテン文字転写」の列はブラーフミー系文字のラテン文字への翻字方式の一つであるISO 15919(及び一部はIAST)に従う。

コード 文字 文字名(英語) 用例・説明 ラテン文字転写
独立母音字
U+11680 𑚀 TAKRI LETTER A 短母音[a]を表す。 a
U+11681 𑚁 TAKRI LETTER AA 長母音[aː]を表す。 ā
U+11682 𑚂 TAKRI LETTER I 短母音[i]を表す。 i
U+11683 𑚃 TAKRI LETTER II 長母音[iː]を表す。 ī
U+11684 𑚄 TAKRI LETTER U 短母音[u]を表す。 u
U+11685 𑚅 TAKRI LETTER UU 長母音[uː]を表す。 ū
U+11686 𑚆 TAKRI LETTER E 長母音[eː]を表す。 e
U+11687 𑚇 TAKRI LETTER AI 長母音二重母音[ai̯]を表す。 ai
U+11688 𑚈 TAKRI LETTER O 長母音[oː]を表す。 o
U+11689 𑚉 TAKRI LETTER AU 二重母音[au̯]を表す。 au
子音字
U+1168A 𑚊 TAKRI LETTER KA 子音[k]を表す。 k
U+1168B 𑚋 TAKRI LETTER KHA 子音[kʰ]を表す。

かつては子音[ʂ](ISO 15919: ṣ)を表していた[2]

kh / ṣ[2]
U+1168C 𑚌 TAKRI LETTER GA 子音[ɡ]を表す。 g
U+1168D 𑚍 TAKRI LETTER GHA 子音[ɡʱ]を表す。 gh
U+1168E 𑚎 TAKRI LETTER NGA 子音[ŋ]を表す。
U+1168F 𑚏 TAKRI LETTER CA 子音[c]を表す。 c
U+11690 𑚐 TAKRI LETTER CHA 子音[cʰ]を表す。 ch
U+11691 𑚑 TAKRI LETTER JA 子音[ɟ]を表す。 j
U+11692 𑚒 TAKRI LETTER JHA 子音[ɟʱ]を表す。 jh
U+11693 𑚓 TAKRI LETTER NYA 子音[ɲ]を表す。 ñ
U+11694 𑚔 TAKRI LETTER TTA 子音[ʈ]を表す。
U+11695 𑚕 TAKRI LETTER TTHA 子音[ʈʰ]を表す。 ṭh
U+11696 𑚖 TAKRI LETTER DDA 子音[ɖ]を表す。
U+11697 𑚗 TAKRI LETTER DDHA 子音[ɖʱ]を表す。 ḍh
U+11698 𑚘 TAKRI LETTER NNA 子音[ɳ]を表す。
U+11699 𑚙 TAKRI LETTER TA 子音[t]を表す。 t
U+1169A 𑚚 TAKRI LETTER THA 子音[tʰ]を表す。 th
U+1169B 𑚛 TAKRI LETTER DA 子音[d]を表す。 d
U+1169C 𑚜 TAKRI LETTER DHA 子音[dʱ]を表す。 dh
U+1169D 𑚝 TAKRI LETTER NA 子音[n]を表す。 n
U+1169E 𑚞 TAKRI LETTER PA 子音[p]を表す。 p
U+1169F 𑚟 TAKRI LETTER PHA 子音[pʰ]を表す。 ph
U+116A0 𑚠 TAKRI LETTER BA 子音[b]を表す。 b
U+116A1 𑚡 TAKRI LETTER BHA 子音[bʱ]を表す。 bh
U+116A2 𑚢 TAKRI LETTER MA 子音[m]を表す。 m
U+116A3 𑚣 TAKRI LETTER YA 子音[j]を表す。 y
U+116A4 𑚤 TAKRI LETTER RA 子音[r]を表す。 r
U+116A5 𑚥 TAKRI LETTER LA 子音[l]を表す。 l
U+116A6 𑚦 TAKRI LETTER VA 子音[ʋ]を表す。 v
U+116A7 𑚧 TAKRI LETTER SHA 子音[ɕ]を表す。 ś
U+116A8 𑚨 TAKRI LETTER SA 子音[s]を表す。 s
U+116A9 𑚩 TAKRI LETTER HA 子音[h]を表す。 h
U+116AA 𑚪 TAKRI LETTER RRA 子音[ɽ]を表す。
各種記号
U+116AB 𑚫 TAKRI SIGN ANUSVARA アヌスヴァーラ

直後に音節が後続する子音字に付き、直後の子音と同じ調音点鼻音が挿入されることを表す。日本語における「」に相当する。

U+116AC 𑚬 TAKRI SIGN VISARGA ヴィサルガ

音節末に[h]を伴うことを表す。

従属母音記号
U+116AD 𑚭 TAKRI VOWEL SIGN AA 長母音[aː]を表す。 ā
U+116AE 𑚮 TAKRI VOWEL SIGN I 短母音[i]を表す。

文字の左側にレンダーされるため、符号上の文字順序と表示上の順序とが入れ替わる。

i
U+116AF 𑚯 TAKRI VOWEL SIGN II 長母音[iː]を表す。 ī
U+116B0 𑚰 TAKRI VOWEL SIGN U 短母音[u]を表す。 u
U+116B1 𑚱 TAKRI VOWEL SIGN UU 長母音[uː]を表す。 ū
U+116B2 𑚲 TAKRI VOWEL SIGN E 長母音[eː]を表す。 e
U+116B3 𑚳 TAKRI VOWEL SIGN AI 長母音二重母音[ai̯]を表す。 ai
U+116B4 𑚴 TAKRI VOWEL SIGN O 長母音[oː]を表す。 o
U+116B5 𑚵 TAKRI VOWEL SIGN AU 二重母音[au̯]を表す。 au
ヴィラーマ
U+116B6 𑚶 TAKRI SIGN VIRAMA ヴィラーマ。殺母音記号。母音/-a/を発音せず子音のみが読まれることを表す。

レンダー上は、子音連続を表す場合次の文字と縦に並べて繋がったような合字を形成するための不可視の制御文字として機能する。

ヌクター
U+116B7 𑚷 TAKRI SIGN NUKTA ヌクター。子音字を拡張して新たな発音を表す際に用いられる。
子音字
U+116B8 𑚸 TAKRI LETTER ARCHAIC KHA U+1168B 𑚋 TAKRI LETTER KHAが [ʂ]を表していた時代に子音[kʰ]を表すために用いられた[2]
約物
U+116B9 𑚹 TAKRI ABBREVIATION SIGN 略語を表す省略記号
数字
U+116C0 𑛀 TAKRI DIGIT ZERO 数字の0 0
U+116C1 𑛁 TAKRI DIGIT ONE 数字の1 1
U+116C2 𑛂 TAKRI DIGIT TWO 数字の2 2
U+116C3 𑛃 TAKRI DIGIT THREE 数字の3 3
U+116C4 𑛄 TAKRI DIGIT FOUR 数字の4 4
U+116C5 𑛅 TAKRI DIGIT FIVE 数字の5 5
U+116C6 𑛆 TAKRI DIGIT SIX 数字の6 6
U+116C7 𑛇 TAKRI DIGIT SEVEN 数字の7 7
U+116C8 𑛈 TAKRI DIGIT EIGHT 数字の8 8
U+116C9 𑛉 TAKRI DIGIT NINE 数字の9 9

小分類

このブロックの小分類は「独立母音字」(Independent vowels)、「子音字」(Consonants)、「各種記号」(Various signs)、「従属母音記号」(Dependent vowel signs)、「ヴィラーマ」(Virama)、「ヌクター」(Nukta)、「約物」(Punctuation)、「数字」(Digits)の8つとなっている[2]。本ブロックでは、Unicodeのバージョン更新時の文字追加が隙間を埋める形で行われた影響で、同一の小分類に属する文字が飛び飛びの符号位置に割り当てられていることがある。また、収録文字が1文字しかない小分類については小分類名が単数形で表現されているが、本記事では単数形か複数形かによる小分類名の表記ゆれについては別の小分類として扱わず、同一の小分類として扱うこととする。

独立母音字(Independent vowels

この小分類にはタークリー文字のうち、頭子音のない母音の音節を表す際に用いられる独立した母音字が収録されている。

子音字(Consonants

この小分類にはタークリー文字のうち、基本的な子音字が収録されている。

各種記号(Various signs

この小分類にはタークリー文字のうち、母音字や子音字に結合する発音記号などの様々な記号が収録されている。

従属母音記号(Dependent vowel signs

この小分類にはタークリー文字のうち、子音字に結合する母音記号が収録されている。

ヴィラーマ(Virama

この小分類にはタークリー文字のうち、ヴィラーマ(殺母音記号)と呼ばれる、子音字の持つ暗黙の随伴母音/-a/を読まずに子音のみを発音することを表す記号が収録されている。

ヌクター(Nukta

この小分類にはタークリー文字のうち、子音字を拡張して新たな発音を表す際に用いられるヌクターという記号1つのみが収録されている。

約物(Punctuation

この小分類にはタークリー文字で用いられる句読点などの約物類が収録されている。

数字(Digits

この小分類にはタークリー文字で用いられる固有の数字が収録されている。

文字コード

タークリー文字(Takri)[1]
Official Unicode Consortium code chart (PDF)
  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
U+1168x 𑚀 𑚁 𑚂 𑚃 𑚄 𑚅 𑚆 𑚇 𑚈 𑚉 𑚊 𑚋 𑚌 𑚍 𑚎 𑚏
U+1169x 𑚐 𑚑 𑚒 𑚓 𑚔 𑚕 𑚖 𑚗 𑚘 𑚙 𑚚 𑚛 𑚜 𑚝 𑚞 𑚟
U+116Ax 𑚠 𑚡 𑚢 𑚣 𑚤 𑚥 𑚦 𑚧 𑚨 𑚩 𑚪 𑚫 𑚬 𑚭 𑚮 𑚯
U+116Bx 𑚰 𑚱 𑚲 𑚳 𑚴 𑚵 𑚶 𑚷 𑚸 𑚹
U+116Cx 𑛀 𑛁 𑛂 𑛃 𑛄 𑛅 𑛆 𑛇 𑛈 𑛉
注釈
1.^バージョン17.0時点


履歴

以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。

バージョン コードポイント[a] 文字数 L2 ID ドキュメント
6.1 U+11680..116B7,116C0..116C9 66 L2/09-111 Anshuman Pandey (9 April 2009), Proposal to Encode the Takri Script (英語)
L2/09-424 Anshuman Pandey (31 December 2009), Proposal to Encode the Takri Script (WG2 N3758) (英語)
L2/12-029 Ken Whistler (26 January 2012), Error in ScriptExtensions.txt (Takri use of dandas) (英語)
12.0 U+116B8 1 L2/17-209 Srinidhi A; Sridatta A (29 June 2017), Proposal to encode the TAKRI LETTER SSA (英語)
L2/17-231 Shriramana Sharma (19 July 2017), Feedback on L2/17-209 on Takri SSA (英語)
L2/17-279 Shriramana Sharma (1 August 2017), Proposal to encode 116B8 TAKRI LETTER ARCHAIC KHA (英語)
14.0 U+116B9 1 L2/19-264 Srinidhi A; Sridatta A (15 July 2019), Proposal to encode the Abbreviation Sign for Takri (英語)
(提案中或いは却下済みの提案) 1 L2/18-084 Srinidhi A; Sridatta A (28 March 2018), Proposal to encode the TAKRI VOWEL SIGN VOCALIC R (英語)
L2/18-247 Deborah Anderson (27 July 2018), Additional information on L2/18-084 TAKRI VOWEL SIGN VOCALIC R (revised) (英語)
  1. ^ 提案されたコードポイントと文字の名前は、最終決定と異なる場合がある。

出典

  1. ^ a b Anshuman Pandey (2009年4月9日). “Proposal to Encode the Takri Script” (英語). Unicode. 2025年9月17日閲覧。
  2. ^ a b c d “The Unicode Standard, Version 17.0 - U11680.pdf” (PDF). The Unicode Standard (英語). 2025年9月17日閲覧.

関連項目




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