スターシップ (バンド)とは? わかりやすく解説

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スターシップ (バンド)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/17 08:41 UTC 版)

スターシップ
ボストン公演(2012年6月)
基本情報
別名 スターシップ・フィーチャリング・ミッキー・トーマス
出身地 アメリカ合衆国 カリフォルニア州サンフランシスコ
ジャンル
活動期間
レーベル
公式サイト Starship.com
メンバー
  • ミッキー・トーマス
  • ステファニー・カルヴァート
  • ジョン・ロス英語版
  • ジェフ・アダムズ
  • フィル・ベネット
  • ダレル・ヴェルドゥスコ
旧メンバー 別記参照
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スターシップStarship)は、アメリカ合衆国出身のロックバンド

1985年に、同国のロックバンド「ジェファーソン・スターシップ」が改名する形で誕生した。1990年に解散したが、1992年に旧メンバーのミッキー・トーマスが結成したスターシップ・フィーチャリング・ミッキー・トーマスが名跡を継いで、今日に至っている。

経歴と変遷

ジェファーソン・スターシップの改名(1984年 - 1985年)

1985年

1984年6月、ジェファーソン・エアプレインのオリジナル・メンバーで1973年にジェファーソン・スターシップを結成したポール・カントナー英語版が脱退した。彼は同時に「ジェファーソン・スターシップ」の名称の使用を巡って法的措置に訴え、残ったメンバー達に申し立てを行なった。そして1985年3月[3]、法廷での和解に応じて、「ジェファーソン・エアプレイン・インクのビル・トンプソン英語版、ポール・カントナー、グレイス・スリックヨーマ・カウコネン英語版ジャック・キャサディ英語版が同意しない限り、誰も『ジェファーソン』もしくは『エアプレイン』の名を使用しない」という裁定に署名した。

カントナー無きジェファーソン・スターシップのメンバーはスリック(ボーカル)、デイヴィッド・フライバーグ英語版(キーボード、ボーカル)、ミッキー・トーマス(ボーカル)、グレイグ・チャキーソ英語版(ギター)、ピート・シアーズ英語版(ベース)、ドニー・ボールドウィン英語版(ドラムス)だった。彼等はごく短い間「スターシップ・ジェファーソン」として活動した[4]が、それは法的決定が下される以前のことだった。結局、最終的に名前は「スターシップ」に縮められた[4]

スターシップ(1985年 - 1989年)

左からグレイス・スリック、ミッキー・トーマス(1985年)

フライバーグはスターシップに残り、新作アルバムの最初のセッションに参加した。しかしピーター・ウルフ英語版[注釈 1]が自分を差し置いてキーボードの全てのパートを演奏したために不満を抱いて[5]、結局脱退した[4]。アルバム『フープラ』は残った5人とウルフによって仕上げられた。1984年から1986年末までに行われたライブセッションでは、ガブリエル・カトーナがサポートメンバーとしてキーボードとサクソフォーンを演奏した。

『フープラ』は1985年10月に発売された。同アルバムからは「シスコはロック・シティ」と「セーラ」の2曲のNo.1ヒットが生まれた。前者はバーニー・トーピンマーティン・ペイジ、デニス・ランバート、ウルフらの共作、グラミー賞受賞プロデューサーであるビル・ボトレル英語版のエンジニアリング、ボトレルとジェイスン・マーツ英語版のアレンジによる楽曲だった。彼等はオリジナル・メンバーからなるジェファーソン・スターシップが1975年にセカンド・『レッド・オクトパス英語版』で全米1位を獲得して以来、ようやくNo.1ヒットを出したのだった。『フープラ』は全米最高7位まで上昇し、プラチナディスクとなった。さらに「トゥモロー・ダズント・マター・トゥナイト」と「ビフォー・アイ・ゴー」がシングルカットされ、それぞれ最高26位、68位を記録した。

1987年初頭、アルバート・ハモンドダイアン・ウォーレンの共作による「愛はとまらない(原題:Nothing's Gonna Stop Us Now)」が映画『マネキン』の主題歌となり、シングルチャートで1位に輝いた。しかしミュージック・ビデオにはスリックとトーマスの2人にギターのチャキーソを加えた3人だけが出演している。当時47歳だったスリックは「『ビルボードホット100』の第一位を獲得した曲を歌う歌手の中で最も年長の女性歌手」になった[注釈 2]。翌1988年には、ビルボードのシングルチャートで73位まで上昇した「ワイルド・アゲイン」が映画『カクテル』で使用されている。

2枚目のアルバム『ノー・プロテクション英語版』が発売されるまでに、ベースとキーボードを担当していたシアーズが音楽性の変化に不満を抱いて脱退[注釈 3]。同アルバムは収録曲の中で最も有名な「愛は止まらない」がNo.1ヒットとなった後にようやく発売され、ゴールドディスクを獲得している。「愛は止まらない」に続いて「イッツ・ノット・オーヴァー」(最高第9位)、「ビート・パトロール」(最高第46位)が発売されている。アルバムの最後に収録された「今夜はミュージックナイト(Set the Night to Music)」は、1991年にロバータ・フラックのアルバム『ナイト・トゥ・ミュージック』においてフラックとマキシ・プリーストのデュオでカヴァーされ、全米6位の大ヒットとなる[6]。プロモーション・ツアーには、シアーズの後任としてブレット・ブルームフィールドが正式メンバーとして加わり、また、フライバーグ以来の正式メンバーであるキーボーディストとしてマーク・モーガンが加入した。

1988年、スリックが再結成されたジェファーソン・エアプレインに加わるため脱退。彼女は再結成ジェファーソン・エアプレインが1989年にアルバム1枚を発表した後、音楽業界から引退した。カントナーがジェファーソン・スターシップ、フライバーグとシアーズがスターシップを辞めた後、新たに加入したメンバーは皆、彼女より一回り以上若い人間ばかりだった。彼女は今日に至るまで「年寄りはロックンロールの舞台に上がってはダメ」を守っている[7]

スターシップはトーマス一人をリード・ボーカルとして、刷新された顔ぶれで1989年8月に3枚目のアルバム『ラヴ・アマング・ザ・カニバルズ英語版』を発売し、販促のためにツアーを行ったものの、以前のように高い評価を得ることはできなかった。1989年9月24日、ライブのためにペンシルヴァニア州スクラントンに滞在していた際に、トーマスはボールドウィンとの激しい口論の末に殴打され、頭蓋および顔面の手術を余儀なくされるほどの重傷を負った。この手術の結果、彼の頭蓋骨には2枚のチタンプレートが埋め込まれた。ボールドウィンは即座にバンドを解雇された[8]。ツアーの残りの日程は、トーマスがライヴを行うことができるように回復するまで延期された。

解散(1990年)

トーマスが回復した時点で、スターシップは『ラヴ・アマング・ザ・カニバルズ』のツアーを再開した。ボールドウィンに代わりケニー・ステイリポラスがツアーメンバーとしてドラムを演奏。さらにスリックに代わってクリスティーナ・マリー・サクストンとメリッサ・ケアリーという2人の女性バック・ボーカリストが加わった。1990年に同ツアーが終わった後、ジェファーソン・スターシップのオリジナルメンバーで最後まで残っていたチャキーソが辞めることになった。トーマスは『ラヴ・アマング・ザ・カニバルズ』の売れ行きがかなり悪かったことについて、ツアーを中断したことが主な原因だと考えている。彼によれば、このアルバムは個人的に最も好きな作品だという[9]

1991年の初頭、RCAレコードからベスト・アルバム『スターシップ・グレイテスト・ヒッツ 10イヤーズ・アンド・チェンジ1979-1991』が発売される。このアルバムには2曲の新曲が含まれており、1曲はトーマスとチャキーソが前に出て演奏し、もう1曲ではトーマスだけが目立つ内容だった。同アルバム発表後しばらくの間はトーマスがスターシップを続けていくものと見られていたが、マネージャーのビル・トンプソンは解散を決め、RCAレコードにその旨を告げた。

スターシップ・フィーチャリング・ミッキー・トーマス(1992年 - 現在)

USA・ロチェスター公演 (2010年8月)

1992年、トーマスはスターシップを独自に再興し、「ミッキー・トーマス&スターシップ」として活動を再開した。最終的には「スターシップ・フィーチャリング・ミッキー・トーマス」という名前に落ち着き、それ以来、以前とは異なるメンバーで堅実にツアーを行っている。

2012年7月、日本公演を開催[10]2000年以降からメンバーであったギタリストのマーク・アブラハミアンが、9月2日のコンサートの終了後、心臓発作で死去(享年46歳)[11]。後任には、ジョン・ロスが加入した。

2013年、前作から24年ぶりのスタジオ・アルバム『Loveless Fascination』を発表[12]

メンバー

現ラインナップ

  • ミッキー・トーマス (Mickey Thomas) - ボーカル (1984年–1991年、1992年– )
  • ステファニー・カルヴァート (Stephanie Calvert) - ボーカル (2006年– )
  • ジョン・ロス英語版 (John Roth) - ギター (2012年– )
  • ジェフ・アダムズ (Jeff Adams) - ベース (2000年– )
  • フィル・ベネット (Phil Bennett) - キーボード (1995年– )
  • ダレル・ヴェルドゥスコ (Darrell Verdusco) - ドラムス (1993年– )

旧メンバー

※サポートメンバーは除き、正式メンバーとして参加した人物のみを記載。

クレイグ・チャキーソ(1986年)
  • クレイグ・チャキーソ (Craig Chaquico) - ギター (1984年–1990年)
  • ピート・シアーズ (Pete Sears) - ベース/キーボード (1984年–1987年)
  • デヴィッド・フライバーグ (David Freiberg) - キーボード (1984年–1985年)
  • ドニー・ボールドウィン (Donny Baldwin) - ドラムス (1984年–1989年)
  • ブレット・ブルームフィールド (Brett Bloomfield) - ベース (1988年–1990年、1992年–1998年)
  • マーク・モーガン (Mark Morgan) - キーボード (1988年–1990年)
  • メリッサ・ケイリー (Melisa Kary) - ボーカル (1992年–1996年)
  • ジェフ・タラマイヤー (Jeff Tamelier) - ギター (1992年–1997年)
  • ジョン・サンデルシス (John Lee Sanders) - キーボード (1992年–1996年)
  • T・モラン (T. Moran) - ドラムス (1992年–1996年)
  • クリスティーナ・マリー・サクストン (Christina Marie Saxton) - ボーカル (1996年–2006年)
  • エリック・トーイェセン (Eric Torjesen) - ギター (1997年–2000年)
  • ジョン・ガルナッシュ (John Garnache) - ベース (1998年–2000年)
  • マーク・アブラハミアン (Mark Abrahamian) - ギター (2000年–2012年) ♰RIP.2012年

ディスコグラフィ

スタジオ・アルバム

コンピレーション・アルバム

  • 『スターシップ・グレイテスト・ヒッツ 10イヤーズ・アンド・チェンジ1979-1991』 - Greatest Hits (Ten Years and Change 1979–1991) (1991年、RCA)
  • The Best of Starship (1993年、RCA/BMG)
  • 『ベスト・セレクション』 - Best Selection (1994年、BMG Victor Inc.)
  • 『ベスト・オブ・スターシップ』 - The Best of Starship (1998年、BMG)
  • Forever Gold (2003年、Delta/Brilliant)
  • Platinum and Gold Collection (2004年、RCA/BMG)
  • 『シスコはロック・シティ - スターシップ・ベスト』 - We Built This City (2008年、BMG)
  • 『ベスト』 - Playlist: The Very Best of Starship (2012年、RCA)
  • Starship Enterprise: The Best of Jefferson Starship and Starship (2019年、Rhino Entertainment)

シングル

  • シスコはロック・シティ」 - "We Built This City" / "Private Room" (1985年、RCAレコード、RPS-190)
  • セーラ」 - "Sara" / "Prete Sears" (1985年、RCAレコード、RPS-201)
  • 「トゥモロー・ダズント・マター・トゥナイト」 - "Tomorrow Doesn't Matter Tonight" / "Love Rusts" (RCAレコード、RPS-212)
  • 愛はとまらない」 - "Nothing's Gonna Stop Us Now" / "Layin' It On The Line" (1987年3月21日、RCAレコード、RPS-237) - 映画『マネキン』のテーマ曲。アルバート・ハモンドダイアン・ウォーレンの共作による楽曲。
  • 「イッツ・ノット・オーヴァー」 - "It's Not Over ('Til It's Over)" / "Babyron" (1987年、RCAレコード、RPS-249)
  • 「ビート・パトロール」 - "Beat Patrol" / "Girls Like You" (RCAレコード、RPS-256)
  • 「ワイルド・アゲイン」 - "Wild Again" (1988年1月25日、PRS-2009)
  • 「イッツ・ノット・イナフ」 - "It's Not Enough" / "Love Amang" (1989年)
  • 「少しだけそばにいて」 - "I Didn't Mean to Stay All Night" / "We Dream In Color" (1989年)
  • 「グッド・ハート」 - "Good Heart" / "Excerpts -Jane -We Built This City -Sara" (1991年)

日本公演

スターシップ

出典[13]

1986年

  • 4月8日 東京・中野サンプラザ
  • 4月9日 名古屋・名古屋市公会堂
  • 4月10日 大阪・東京厚生年金会館
  • 4月12日 東京・中野サンプラザ
  • 4月14日 東京・NHKホール
  • 4月16日 東京・東京厚生年金会館

脚注

注釈

  1. ^ ジェファーソン・スターシップのアルバム『ニュークリア・ファーニチャー』のセッションに参加後、同アルバムのツアーの短い期間だけ加入した。
  2. ^ この記録は1999年に52歳のシェールが「ビリーヴ」を歌うまで破られなかった。
  3. ^ 彼は脱退後、元ジェファーソン・エアプレインのヨーマ・カウコネンとジャック・キャサディが結成した「ホット・ツナ英語版」で10年間キーボードを担当した。

出典

  1. ^ a b Starship – Biography”. thevogue.com. Forty5. 2023年4月5日閲覧。
  2. ^ Ruhlmann, William. Starship Biography, Songs, & Albums - オールミュージック. 2023年4月5日閲覧。
  3. ^ Tamarkin (2024), pp. 330–331.
  4. ^ a b c Tamarkin (2024), p. 331.
  5. ^ interview”. 2012年2月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月27日閲覧。 “Well, because they want me in, and I didn't want to be there because they were doing 'We Built This City' and all. It was at the point where they were going to the studio, and nobody in the band was playing anything. Maybe if they needed a guitar… Craig would play it. It was all producing and it was all hot stuff keyboard players and that is what I was basically playing with them…you know…and that wasn't me. Why have me around? Why should I be around?”
  6. ^ Set the Night to Music - Roberta Flack | Awards | AllMusic
  7. ^ "Jefferson Airplane". Baker's Biographical Dictionary of Musicians, Centennial Edition. Nicolas Slonimsky, Editor Emeritus. Schirmer, 2001.
  8. ^ Tamarkin (2024), pp. 348–350.
  9. ^ Over the Edge: Mickey Thomas – The voice of Starship returns”. melodicrock.com. 2014年8月27日閲覧。
  10. ^ スターシップ featuring ミッキー・トーマスの日本公演が7月に開催”. amass (2012年5月15日). 2018年9月30日閲覧。
  11. ^ スターシップ featuring ミッキー・トーマスのマーク・アブラハミアン(g)が死去”. amass (2012年9月4日). 2018年9月30日閲覧。
  12. ^ ミッキー・トーマス率いるスターシップが24年ぶりの新作『Loveless Fascination』を今秋発売”. amass (2013年6月30日). 2018年9月30日閲覧。
  13. ^ www.setlist.fm”. 2025年3月4日閲覧。

引用文献

  • Tamarkin, Jeff (2024). Got a Revolution!: The Turbulent Flight of Jefferson Airplane. Atria Books. ASIN B00AK80EKI 

外部リンク



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