カレンニー諸民族防衛隊
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/31 08:39 UTC 版)
カレンニー諸民族防衛隊 | |
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ကရင်နီအမျိုးသားများကာကွယ်ရေးတပ်ဖွဲ့ | |
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カレンニー諸民族防衛隊軍旗
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活動期間 | 2021年5月31日 | – 現在
活動目的 | フェデラル連邦主義 民主主義 少数者の権利 |
創設指導者 | クン・べドゥ[1] |
活動地域 | カヤー州 シャン州 カレン州 タイ・ミャンマー国境 |
関連勢力 |
その他同盟 |
敵対勢力 |
敵対勢力 ![]() |
戦闘 | |
ウェブサイト | https://kndf.org/ |
カレンニー諸民族防衛隊(カレンニーしょみんぞくぼうえいたい、ビルマ語: ကရင်နီအမျိုးသားများကာကွယ်ရေးတပ်ဖွဲ့、英語: Karenni Nationalities Defence Force、略称: KNDF)は、2021年ミャンマークーデター直後に結成されたカレンニーPDF(KPDF)を発展解消したもので、2021年5月31日に結成された。
NUGの指揮下にあり、KNPPとカレン民族同盟(KNU)から支援を受け、三兄弟同盟からも物資の支援を受けているとされ、統合型PDFに分類される。識者の中には、KNDP「少数民族武装組織と一般市民との良好な関係」とみなす者もおり、また、PDFではなく独立したEAOに分類すべき、あるいはクーデター前は活動が停滞していたKNPP/KAの復活組織として分類すべきだと主張する者もいる[9][10][11]。
KNDFはミャンマー軍(以下、国軍)と戦っており、特に第66軽歩兵師団と衝突している[12]。
目的
国民統一政府(NUG)と国民統一顧問評議会(NUCC)が掲げる連邦民主制度に賛同しており、カレンニー州、シャン州南部のモービィ郡区、ペーコン郡区、パウンラウン郡区、そして、ネピドーのピンマナ東部の山岳地帯と、カレン州レイクト(Leiktho)北部を統合して、新たなカレンニー州とすることを目的に掲げている[13]。また、「春の革命」が成就した後は、兵器を連邦国家に返還し、カレンニー州軍として活動すると公言している[14]。
活動
2021年クーデター後、カレンニー州のロイコー、ディモーソー、シャン州南部のモービィ、ペーコンなどでカレンニー族のPDFが生まれた。当初、彼らはカレンニーPDF(KPDF)と名乗っていたが、2021年5月の第1週、カレンニー州諮問評議会(KSCC)の下で、カレンニー州軍(KSA)として4個大隊に編成され、ディモーソーで初めて国軍の部隊と衝突した。その後、5月31日、名称をKNDFに変更。創設メンバーの多くは、ロイコーにおけるアウンサン像設置反対運動に関わった委員会のメンバーだった。カレンニー族の若者たちは、生涯にわたる政治的所属を義務づけるKNPPよりも、革命的義務を基盤とする献身を提供してくれたKNDFへの入隊を好んだのだという[13][15][11][14]。
2021年12月のクリスマス・イブ、ディモーソー郡区のある村を国軍が襲撃して、35人の市民が殺害されると、翌月、KNDFは報復として、ロイコー郡区とディモーソー郡区への攻撃を開始した。2023年後半には、シャドー郡区を占拠。同年11月、KNDF、KA、カレンニー民族人民解放戦線(KNPLF)、その他PDF合同で1111作戦を発動し、2024年3月までにカレンニー州の90%を掌握した[16][17]。しかしその後、国軍の度重なる空爆と高度化したドローン攻撃を受け、KNDF連合軍はロイコーから撤退[18]。2025年7月には、シャン州南部のモービィ郡区が国軍により占拠された[19]。
組織
組織構造

元政治活動家のクンベドゥが議長を務める。クンベドゥはNUGの天然資源・環境保全担当副大臣も兼務していたが、のちにKNDFの活動に専念するために辞任。また、カレンニー州暫定執行評議会(IEC)の副議長も兼務している[14]。
IECはカレンニー州の事実上の政府であり、カレンニー州諮問評議会(KSCC)は戦略的な方向性を決定している。そして、統合型PDFであるKNDFは、カレンニー民族進歩党(KNPP)の指導者・ビートゥー(Bee Htoo)、直接的にはカレンニー軍(KA)総司令官・アウンミャッ(Aung Myat)の指揮下にあり、正式にはアウンミャッはKNDFの総司令官である。しかし実際には、KNDFの部隊は2人の副司令官、マルウィ(Marwi)とクレドゥ(Khu Reh Du)の指揮下にある[14]。
クレドゥは、KNDF第10大隊の2周年記念式典で、次のように演説している[20]。
死や殺人を恐れるなら、同志にはならないでください。ここで言う殺人とは、大義のために殺すことです。敵に立ち向かうには勇気が必要です。殺す勇気を持たなければなりません。死に値する者は死ななければなりません。 — クレドゥ
ちなみに、組織名に「カレンニー」を掲げていることからも推察されるように、KNDFの幹部は、カヤー族、カヤン族、カヤウ族などのカレンニー族のサブグループ、シャン族、パオ族、ビルマ族、インド系など多種多様な人種から構成されている[14]。
兵力
2024年9月20日の時点で、8個旅団31個大隊を抱えており、兵力は約8,000人。ただ、武装しているのは、そのうちの2,000~3,000人であある。兵器は国軍の基地から鹵獲したもの、三兄弟同盟から提供されたものが主で、即席爆発装置(IED)、ドローン、迫撃砲を自前生産しているが、常に資金不足と兵器不足に悩んでいるのだという[14][21]。
活動地域
カレンニー州
ロイコー県
- ロイコー郡区:2025年7月現在、KNDFが一部制圧しているが、市街地の大部分は戦場となっている。町は廃墟と化し、住民は避難民となっている[14]。
- ディモーソー郡区:KNDFが支配[14]。
- パルソ郡区:戦場、住民が避難民化[14]。
- シャドー郡区:KNDFが支配[14]。
ボーラケ県
シャン州南部
関連項目
脚注
- ^ ““We are Getting Stronger to Complete the Revolution”: Karenni Resistance Leader”. The Irrawaddy. (2022年6月15日). オリジナルの2023年7月29日時点におけるアーカイブ。 2023年7月29日閲覧。
- ^ “ကရင်နီပြည်နယ် မယ်စဲ့မြို့ ၌ တိုက်ပွဲပြင်းထန်နေ” (ビルマ語). DVB. (2023年6月20日). オリジナルの2023年6月25日時点におけるアーカイブ。 2023年7月30日閲覧。
- ^ “4K ၊ မယ့်စဲတိုက်ပွဲ နှင့် ကရင်နီပြည်မှစစ်ရေးအရွေ့” (ビルマ語). People's Spring. (2023年6月20日). オリジナルの2023年7月2日時点におけるアーカイブ。 2023年7月30日閲覧。
- ^ Wei, Brian (2024年1月26日). “Myanmar Military Now at War With Ethnic Pa-O Army And Allies in Southern Shan State”. The Irrawaddy. オリジナルの2024年1月26日時点におけるアーカイブ。
- ^ “Pyusawhti militia”. Myanmar Now. オリジナルの2022年5月12日時点におけるアーカイブ。 2023年1月22日閲覧。
- ^ “Myanmar Resistance Claims Victory Over Junta Outpost”. The Irrawaddy. (2022年5月13日). オリジナルの2022年6月16日時点におけるアーカイブ。 2022年6月22日閲覧。
- ^ “မြေပြင်စစ်ကူဝင်နိုင်သည့် လမ်းကြောင်းများကို မြောက်ပိုင်းမဟာမိတ် ထိန်းချုပ်” (ビルマ語). The Irrawaddy. (223-11-03) 2023年11月3日閲覧。
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の日付が不正です。 (説明)⚠ - ^ J, Esther (2023年11月10日). “After attacking military target in Karenni State, KNDF and KNPLF announce launch of ‘Operation 1107’”. Myanmar Now. オリジナルの2023年11月10日時点におけるアーカイブ。 2023年11月10日閲覧。
- ^ 国民統一政府国防省. “Defence Policy – ကာကွယ်ရေးဝန်ကြီးဌာန”. 2021年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年3月25日閲覧。
- ^ “Karenni Nationalities Defense Force (KNDF) will carry out NUG's defense policies”. Burma News International. オリジナルの2021年7月6日時点におけるアーカイブ。 2022年3月25日閲覧。
- ^ a b CAGa 2025, pp. 26, 39.
- ^ “Thousands flee air strikes as fighting erupts in Myanmar”. CNN. (2022年2月25日). オリジナルの2022年3月25日時点におけるアーカイブ。 2022年3月25日閲覧。
- ^ a b “How Myanmar’s Smallest State Became a Giant-Killer on the Junta’s Doorstep”. The Irrawaddy. 2025年7月30日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m CAGc 2025, pp. 37–40.
- ^ “An interview with the Karenni Nationalities Defense Force (KNDF) information officer”. Burma News International. オリジナルの2022年3月25日時点におけるアーカイブ。 2022年3月25日閲覧。
- ^ “Who’s Who in the Two Major Anti-Regime Offensives in Myanmar?”. The Irrawaddy (2023年12月12日). 2025年7月9日閲覧。
- ^ Wei, Brian (2024年3月25日). “Myanmar’s Junta is Nearing Its End in The Thai Border State of Karenni”. The Irrawaddy
- ^ “Fighting Resumes in Myanmar’s Loikaw as Karenni Resistance Forces Return”. The Irrawaddy. 2025年7月11日閲覧。
- ^ a b “Why Myanmar Junta’s Face-Saving Counteroffensive is Doomed to Fail”. The Irrawaddy. 2025年7月30日閲覧。
- ^ “The Karenni Teacher Turned Commander Handing Lethal Lessons to Myanmar’s Junta”. The Irrawaddy. 2025年7月30日閲覧。
- ^ “KNDF ၏ ၃၁ ခုမြောက်တပ်ရင်းတိုးချဲ့ဖွဲ့စည်း” (ビルマ語). People’s Spring. (2024年9月20日)
参考文献
- A Scalable Typology of People’s Defence Forces in Myanmar. Centre on Armed Groups. (2025)
- Funding the People's Defence Forces in Myanmar. Centre on Armed Groups. (2025)
- Towards a Deeper Understanding of Myanmar’s People’s Defence Forces. Centre on Armed Groups. (2025)
外部リンク
- KNDF本部 - YouTube
- KNDFデモーソー - YouTube
- KNDF本部 (KNDF.HQ) - Facebook
- KNDFデモーソー (kndfdemoso) - Facebook
- KNDFぺコン (KNDFB03) - Facebook
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