カダイフ麺
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/25 16:18 UTC 版)
カダイフ麺(カダイフめん、トルコ語: tel Kadayıf、テルカダユフ、それぞれ「ワイヤー」と「薄い」の意、単にカダユフ、カダイフとも。アラビア語: عجينة الكنافة、アジーナ・アル=クナーファ、クナーフアの生地の意、ただ単にクナーファとも)は、主に中東や東地中海地域で伝統的には小麦粉と水のみから作られる極細の麺状食材である。
概要
緩めに作られた小麦粉(セモリナ粉を含む)と水の生地は多数の細い注ぎ口が付いたクーズ(アラビア語: كوز الكنافه、クーズは水差しのことで、ここではクナーファ差しの意)という器具に入れられ、200度から250度に熱せられた銅の大型円形調理用トレイ(アラビア語: صينيَّة、シーニーヤ)上に細い糸状に円を描くように垂らされ、熱を通すことによって作られる[1][2][3]。欧米ではバーミセリのようなと表現されるが、カダイフ麺はバーミセリに比べ遥かに多い水分量が生地に加えられることや熱が通されて作られていることが大きな違いであるとともに同麺の特徴となっている。形状が全く違うものの、作り方はむしろクレープに似ていると言われる[4]
頑なに伝統的原料である小麦粉と水だけにこだわる「麺焼き職人[4]」がいる一方[注 1]、技術が無くても滑らかさと弾力性を加えることが出来るデンプン(主にコーンスターチ[注 2])や、味や風味付けのために砂糖、ローズウォーターやオレンジフラワーウォーターを加わえる地域もある[5][6][7]。
テルカダユフまたは単にカダユフという名はこの麺を使用したデザート名としても使用され、バクラヴァと並んでトルコなどで人気のあるデザートである[1]。トルコだけでなく食材として中東や地中海沿いの広い地域でさまざまな伝統的デザートなどに使用され、人気が高いクナーフェも地域やタイプよって材料として使用される[8]。
通年を通して需要の高いカダイフであるが、ラマダンの最中はスフール(日の出前の食事)またはイフタール(日没後初の食事)での甘い一皿の食材と使用されるため需要が特に高まる[3][8][5]。
ドバイチョコレートの材料
2020年代には、ピスタチオとカダイフをフィリングに使用したドバイのFIXデザート・ショコラティエの「Can't Get Knafeh of It[注 3]」と名付けられた板チョコ、通称ドバイチョコレートが人気を呼び、カダイフがチョコレートの食材として広く使用されるようになった[9][10]。FIXデザート・ショコラティエを真似て、世界中で「ドバイチョコレート」が製造販売された際には、国によってはカダイフの安定供給が得られないとして、地元の麺を代用し作られた製品がドバイスタイルチョコレートとして売り出されることも起きた。
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カダイフ麺
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エジプトでは伝統的な手法でクナーファ生地を作る職人。右下の金属製の器は薄い生地を細く垂らすために底にいくつもの注ぎ口が付いたクーズという器具。
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半自動化し、回転する大型円形調理用トレイに上から生地を垂らす器具が設置されたトルコのカダイフ麺工場。
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テルカダユフというトルコのデザート
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麺状のカダイフを使用したクナーファ・キシュナ(荒いまたは粗いクナーフェの意味)
脚注
注釈
- ^ エジプトなど一部地域で小麦粉と水以外に塩が伝統的原料に加わる場合もある[5]。
- ^ 日本でカダイフにトウモロコシ粉が使われているとされているのは、イギリス英語ではコーンスターチをcornflour(文字通りトウモロコシの粉)と呼ぶことに由来すると推察される。アメリカ英語ではトウモロコシを挽いた粉は、corn flour(文字通りトウモロコシの粉だが単語間にスペースあり)で、トウモロコシから出来たデンプンの粉は日本と同様にコーンスターチと呼ばれる。カダイフに加えられるのはデンプンの方である。
- ^ キャント・ゲット・クナーフェ・オブ・イット。Knafeh(クナーフェ)と英語単語のenough(イナフ、十分)への語呂合わせで、「クナーフェを飽きることができない」、「クナーフェがいくらあっても飽き足りない」の意味。
出典
- ^ a b Ergil, Leyla Yvonne (2022年11月18日). “Turkish desserts that will warm your heart this winter” (英語). Daily Sabah. 2025年2月14日閲覧。
- ^ “Konya’daki tek kadayıf ustası!” (トルコ語). Konya Yenigün Gazetesi: Konya Haber, Konya Son Dakika, Güncel Konya ve bölge haberleri, Konya'da, Konyaspor, (2011年11月3日). 2025年2月14日閲覧。
- ^ a b “Ramazan ayının vazgeçilmez tatlısı: Tel kadayıf - En Son Haberler” (トルコ語). CNN TÜRK (2024年3月10日). 2025年2月15日閲覧。
- ^ a b Krondl, Michael (2011) (英語). Sweet Invention: A History of Dessert. Chicago Review Press. p. 105
- ^ a b c “رائحة رمضان تفوح فى قنا.. حكاية "منتصر" مع صناعة الكنافة على الفرن البلدى” (アラビア語). اليوم السابع (2025年2月1日). 2025年2月15日閲覧。
- ^ “65 derece sıcakta dökme kadayıf” (トルコ語). www.erzurumgazetesi.com.tr (2011年8月5日). 2025年2月14日閲覧。
- ^ “طعام وصيام.. الكنافة البلدي” (アラビア語). الجزيرة نت. アルジャジーラ (2023年2月26日). 2025年2月15日閲覧。
- ^ a b “Konya'da ramazan ayının vazgeçilmez tatlısı: Tel kadayıf” (トルコ語). Yeni Meram (2021年5月5日). 2025年2月13日閲覧。
- ^ Ilgar, Oyku (2024年12月12日). “SAP BrandVoice: How The Dubai Chocolate Sensation Is Creating A Supply Chain Strain” (英語). Forbes. 2025年2月14日閲覧。
- ^ Cairns, Rebecca (2024年6月19日). “The story behind the viral chocolate bar all over your TikTok feed” (英語). CNN. 2025年2月14日閲覧。
外部リンク
- Kadayif, Sweet Noodles in the Turkish Cooking Everyday Blog
- 伝統的手法で手作りされるクナーファ生地作りの写真が載ったアルジャジーラの記事。生地作りに使われる器具クーズの拡大写真あり。
- エジプトのソハーグ県で、頑固に伝統的手法でクナーファ生地(同国ではクナーファ・バラディ、地元のまたは我が祖国のクナーファの意で呼ばれる)を作るクナーファ職人の動画。(YouTube)
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