エンブレム・ブックとは? わかりやすく解説

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エンブレム・ブック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/01 09:27 UTC 版)

ジョージ・ウィザー『Book of Emblems』(1635年、ロンドン)から - 知恵のエンブレム

エンブレム・ブックエンブレム本寓意(詩)画集emblem book)とは、16世紀17世紀ヨーロッパで発達した特殊なスタイルの図解入りののこと。通常、約100の絵とテキストの組み合わせからできている。

概略

当該のエンブレムが、視覚的なイメージなのか、添えられたテキストなのか、それともそれら2つの組み合わせなのかについては、研究者たちの意見は分かれている。最初のエンブレム・ブックと言われるアンドレーア・アルチャートの『エンブレマタ』は、はじめ未許可版が世に出た(1531年アウクスブルク)。その中の木版画はアルチャートが提供したものではなく印刷業者が選んだもので、アルチャートは絵入りでない写本の形式でテキスト(エピグラム)を配布していた。初期のエンブレム・ブック、とくにフランスの出版業者Denis de Harsyが出したものは、絵入りではなかった。しかし、時がたつにつれて、読者は絵とテキストの組み合わせを含むエンブレム・ブックを期待するようになった。1行またはそれ以上のテキストが添えられた木版画またはエングレービングから成るそれぞれの組み合わせは、読者を一般的な教訓を熟考しようという気にさせる(絵とテキストを両方一緒に読むことから)意図があった。絵はたくさんの解釈を生む。テキストを読むことによってのみ、読者は作者が意図した意味を確信することができた。

世俗的・宗教的両方のエンブレム・ブックはヨーロッパ大陸、とくにオランダベルギードイツフランスで大変な人気を博した。『エンブレマタ』の他には1593年出版のチェーザレ・リーパ(Cesare Ripa)の『イコノロギア(Iconologia)』が有名だが、これは厳密にはエンブレム・ブックではなく、博識な寓意集だった。

アタナシウス・キルヒャーのような、ヨーロッパの初期のヒエログリフ研究は、ヒエログリフをエンブレムと主張し、その寓意を想像力豊かに解釈した。

代表的なエンブレム・ブック

ヘンリー・ピーチャム『Minerva Britannia』から『イニティウム・サピエンティア』
ギヨーム・ド・ラ・ペリエール『良き創意の劇場』(1545年)の木版画

イギリス

  • ジョージ・ウィザー『A Collection of Embleme』(16世紀)[1]
  • ヘンリー・ピーチャム(Henry Peacham)『Minerva Britanna』(1612年)

スペイン

  • Juan de Borja『Empresas Morales』(1581年、プラハ
  • Francisco de Guzmán『Triumphos morales』(1565年、アルカラ・デ・エナーレス
  • Juan de Horozco y Covarrubias『Emblemas morales』(1591年、セゴビア、editio optima)
  • エルナンド・デ・ソト『Emblemas moralizadas』(1599年、マドリード
  • Juan Baños de Velasco『L. Anneo Séneca ilustrado en blasones políticos y morales』(1670年、マドリード)
  • Sebastián Covarrubias y Horozco『Emblemas morales』(1610年、マドリード)
  • Juan Francisco Fernández de Heredia『Trabajos y afanes de Hércules, floresta de sentencias y exemplos』(1682年、マドリード)
  • Herman Hugo『Affectos divinos con emblemas sagradas』(1658年、バリャドリッド
  • Antonio de Lorea『David pecador y David penitente: empresas morales político-cristianas』(1674年、マドリード)
  • Andrés Mendo『Príncipe perfecto y ministros ajustados, documentos políticos y morales』(1662年、リヨン
  • Lorenzo Ortiz『Memoria, entendimiento y voluntad. Empresas que enseñan y persuaden su buen uso en lo moral y en lo político』(1677年、セビリア)&『Ver, oír, oler, gustar, tocar. Empresas que enseñan y persuaden su buen uso en lo político y en lo moral』(1687年、リヨン)
  • Antonio Pérez『Retrato al vivo del natural de la fortuna』(1625年、Rhodanusia(パリ?))
  • Cristóbal Pérez de Herrera『Proverbios morales y consejos cristianos』(1618年、マドリード)
  • Alonso Remón『Discursos elógicos y apologéticos. Empresas y divisas sobre san Pedro de Nolasco』(1627年、マドリード)
  • Juan Solórzano Pereira『Emblemata regio-política in centuriam una redacta』(1650年、マドリード)
  • Juan Francisco de Villava『Empresas espirituales y morales』(1613年、バエサ

フランス

ハンガリー

イタリア

オランダ

  • ダニエル・ヘインシウス(Daniel Heinsius)『Quaeris quid sit amor』(1601年)&『Emblemata Amatoria』(1608年)
  • オットー・ファン・フェーンOtto van Veen)『Amorum emblemata』(1608年)&『Amoris divini emblemata』(1615年)
  • P・C・ホーフト『Emblemata Amatoria』(1611年)
  • アンソロジー『Thronus Cupidinis』(1618年) - 作者はBredero、Roemer Visscher、アンナ・フィッセル(Anna Visscher)、オットー・ファン・フェーン、フォンデル、P・C・ホーフト。
  • Jacob Cats『Sinne- en minnebeelden』(1618年)
  • ヤン・ルイケンJan Luyken)『Jesus en de ziel』(1678年)

脚注

外部リンク




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