エルミート行列の境界
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/28 03:22 UTC 版)
エルミート行列 M の固有値 λi と固有ベクトル vi の間の関係は M v i = λ i v i {\displaystyle {\boldsymbol {M}}{\boldsymbol {v}}_{i}=\lambda _{i}{\boldsymbol {v}}_{i}} である。上で述べたとおり M に対するレイリー商 R(M, x) は実数で、その範囲は M の固有値の最小値 λmin と最大値 λmax の間となる: R ( M , x ) ∈ [ λ min , λ max ] . {\displaystyle R({\boldsymbol {M}},{\boldsymbol {x}})\in \left[\lambda _{\min },\lambda _{\max }\right]\,.} このことは、ベクトル x が M の固有ベクトル {vi} によって展開できることから示すことができる。x を規格化された固有ベクトル(vi*vj = δij:クロネッカーのデルタ)で以下のように展開する: x = ∑ i c i v i . {\displaystyle {\boldsymbol {x}}=\sum _{i}c_{i}{\boldsymbol {v}}_{i}.} 展開係数は固有ベクトルとの内積 c i = v i ∗ x {\displaystyle c_{i}={\boldsymbol {v}}_{i}^{*}{\boldsymbol {x}}} である。x の固有ベクトルによる展開をレイリー商に適用すれば、レイリー商が M の固有値の重み付き平均に等しくなることが示される: R ( M , x ) = x ∗ M x x ∗ x = ∑ i λ i | c i | 2 ∑ i | c i | 2 . {\displaystyle R({\boldsymbol {M}},{\boldsymbol {x}})={\frac {{\boldsymbol {x}}^{*}{\boldsymbol {M}}{\boldsymbol {x}}}{{\boldsymbol {x}}^{*}{\boldsymbol {x}}}}={\frac {\sum _{i}\lambda _{i}|c_{i}|^{2}}{\sum _{i}|c_{i}|^{2}}}.} 重み付き平均の形から、レイリー商の値域とその境界が固有ベクトル vmin, vmax によって定められることが確認できる。 レイリー商が固有値の重み付き平均に等しいという事実から、すべての固有値を特定することができる。それぞれの固有値が λmax = λ1 ≥ λ2 ≥ ... ≥ λn = λmin と降順に並べてあるとすると、x が基底 v1 に直交するという条件の下では、v1*x = a1 = 0 であり、レイリー商 R(M, x) の最大値は λ2 となる。またこのとき x = v2 である。
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