アンダーソンの義務論理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 01:46 UTC 版)
Anderson (1967) は、義務演算子 O {\textstyle O} を、様相演算子 ◻ {\textstyle \Box } および義務定項 s {\textstyle s} とによって定義する方法を示した。 s {\textstyle s} は直観的にはサンクションが生ずるということを表す。アンダーソンの定義は、 O A ≡ ◻ ( ¬ A → s ) {\textstyle OA\equiv \Box (\lnot A\to s)} というものである。この定義の直観的な意味は、「Aしなければならない」とは「必然的に、Aしないならサンクションが生ずる」ということだ、というものである。この定義は、直観に適うのみならず、自然言語においても観察されうるものである。実際、日本語表現「Aしなければならない」は、「Aしなければ」が「 ¬ A {\textstyle \lnot A} ならば」ということを、「ならない」が「サンクションが生ずる」ということを、各々意味していると考えることができる(Anderson 1967: 204)。 アンダーソンの義務論理は、様相演算子 ◻ {\textstyle \Box } に対する通常の様相論理の公理(必然化規則Nおよび分離公理K)に加えて、義務定項 s {\textstyle s} に対して次の公理を追加するだけで得られる。その公理とは、 ¬ ◻ s {\textstyle \lnot \Box s} (もしくはこれと論理的に同値な ◊ ¬ s {\textstyle \Diamond \lnot s} でもよい)というもので、その直観的な意味は、「すべてのサンクションを回避するということは可能である」というものである。アンダーソンの義務論理のこのバージョンは、標準義務論理と同等である。 しかし、様相公理T( ◻ A → A {\textstyle \Box A\to A} )を加えたならば、アンダーソンの義務論理においては O ( O A → A ) {\textstyle O(OA\to A)} が証明できる。これは標準義務論理では証明できない論理式である。アンダーソンの義務論理では、義務演算子 O {\textstyle O} は不可避的に様相演算子 ◻ {\textstyle \Box } と連動することになるので、場合によっては問題含みとなりうる。
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