アンの想い出の日々とは? わかりやすく解説

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アンの想い出の日々

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/13 01:40 UTC 版)

アンの想い出の日々』(アンのおもいでのひび、原題:The Blythes Are Quoted )は、カナダの作家L・M・モンゴメリの短編小説集。2009年に刊行された『赤毛のアン』シリーズの第9作にあたる遺作。同著者の最晩年の作品であり、原題The Blythes Are Quoted は直訳すると、「ブライス一家が噂されている」または「ブライス一家が引き合いに出される」[注 1]という意味である。

概要

L・M・モンゴメリが1942年4月24日の死の直前に書き上げたため、同著者の最後の小説である。アン・シリーズとしては最終作であるが、発表された順番としては1939年刊行の『炉辺荘のアン』以来約70年振りの新作である。これまでの同シリーズとは違い、15作の短編小説と41篇の詩と詩を巡る家族の会話の12の場面からなっており、また、本作では唯一の2部構成からなる。なお、この作品で初めて第二次世界大戦までの時代背景が描かれており、こうした時代に反映してか、アン・ギルバート夫妻の孫が作中に登場する(後述)。

モンゴメリの故郷であるカナダでは1970年代に内容を端折った形での短編集The Road to Yesterday(日本語版『アンの村の日々』)として出版された後、2009年に完全版が出版された[1]

日本では、2008年に、『赤毛のアン』シリーズの村岡花子訳の補訳作業を行っていた花子の孫[注 2]翻訳家村岡美枝の元に、カナダで出版前のゲラが持ち込まれた[1]。村岡美枝がそのまま翻訳することになり、2012年11月に日本語訳が本作のタイトルで刊行された[注 3]

L・M・モンゴメリの孫であるケイト・マクドナルド・バトラーは、日本の読者に向けてメッセージを述べている。

私の祖母、L・M・モンゴメリは、生涯を通じてストーリー・テラーでした。しかし、その作品のすべてが、明るさと喜びに満ちていたわけではありません。晩年は、人生を写実的な目で捉え、逆境に生きる人々の苦悩や人間の精神の反逆的な側面にも光を当てました。私は、カナダと日本の文化交流に多大な貢献を果たした祖母を大変誇りに思っております。モンゴメリの最後の作品集『アンの想い出の日々』は様々な議論の余地をはらんだ作品集だと思いますが、日本の読者の皆さまに楽しんでいただけましたら幸に存じます。 — アンの想い出の日々・下巻

アンの家族

アン・ギルバート夫妻とその子供達は、各短編小説では殆ど噂の中で名前のみ登場する程度で、アンの家族が本格的に登場するのは41篇の詩と詩を巡る家族の会話の12の場面のみである。なお、年は不詳だが、ジェム(ジェイムズ・マシュー・ブライス)とナン(アン・ブライス)とリラ(バーサ・マリラ・ブライス)の3人は第一次世界大戦後に既に結婚しており、いずれの3人共に子供も儲けているため、アン・ギルバート夫妻共に晴れてお祖母さん、お祖父さんになる。

  • ジェイムズ・マシュー・ブライス … フェイス・ブライス(旧姓:メレディス)と結婚。妻との間に娘のアンと息子のジェム、ウォルターを儲ける。
  • アン・メレディス(旧姓:ブライス) … ジェリー・メレディスと結婚。夫との間に娘のダイを儲ける。
  • バーサ・マリラ・フォード(旧姓:ブライス) … ケネス・フォードと結婚。夫との間に息子のギルバートを儲ける(「夢の家」に登場したアンの大事な友人レスリー・フォードと、オーエン・フォードの孫でもある)。 

タイトル

※括弧内は原題、日本語訳のタイトルは村岡美枝訳より引用。第1部が第一次世界大戦前、第2部が戦後から第二次世界大戦勃発頃まで描かれている。

第1部

  • 序(Frontispiece)
  • 笛吹き(The Piper) [注 4]
  • フィールド家の幽霊(Some Fools and a Saint)
  • 炉辺荘の夕暮れ(Twilight at Ingleside)
    • 願わくば……(I Wish You)
    • なつかしき浜辺の小径(The Old Path Round the Shore)
    • 故郷の家の客用寝室(Guest Room in the Country)
  • 思いがけない訪問者(An Afternoon with Mr. Jenkins)
  • 第二夜(The Second Evening)
    • 新しい家(The New House)
    • 駒鳥の夕べの祈り(Robin Vespers)
    • 夜(Night)
    • 男と女(Man and Woman)
  • 仕返し(Retribution)
  • 第三夜(The Third Evening)
    • 愛する我が家(There Is a House I Love)
    • 海の歌(Sea Song)
  • ふたごの空想ごっこ(The Twins Pretend)
  • 第四夜(The Fourth Evening)
    • 理想の友(To a Desired Friend)
  • 想い出の庭(Fancy's Fool)
  • 第五夜(The Fifth Evening)
    • 真夏の一日(Midsummer Day)
    • 記憶の中で(Remembered)
  • 夢叶う(A Dream Comes True)
  • 第六夜(The Sixth Evening)
    • さようなら、なつかしき部屋よ(Farewell to an Old Room)
    • なつかしい幽霊たちの部屋(The Haunted Room)
    • 冬の歌(Song of Winter)
  • ペネロペの育児理論(Penelope Struts Her Theories)
  • 第七夜(The Seventh Evening)
    • 成功(Success)
    • 夢の扉(The Gate of Dream)
    • 年老いた顔(An Old Face)
  • 仲直り(The Reconciliation)
  • パットはどこへ行く?(The Cheated Child)
  • 幸運な無駄足(Fool's Errand)
  • 割れ鍋と煤けたやかん(The Pot and the Kettle)

第2部

  • 続・炉辺荘の夕暮れ(Another Ingleside Twilight)
    • 間奏曲(Interlude)
    • さあ 行こう(Come, Let Us Go)
    • 六月の昼下がり(A June Day)
    • 秋の風(Wind of Autumn)
    • 活気みなぎる自然の中で(The Wild Places)
    • 愛こそあれば(For Its Own Sake)
    • 変化(The Change)
    • ぼくは知っている(I Know)
  • 弟に気をつけて!(Brother Beware)
  • 続・第二夜(The Second Evening)
    • 風(The Wind)
    • 花嫁の夢(The Bride Dreams)
    • 五月の詩(May Song)
  • 花嫁がやって来た(Here Comes the Bride)
  • 続・第三夜(The Third Evening)
    • 別れゆく魂(The Parting Soul)
    • 我が家(My House)
    • 想い出(Memories)
  • あるつまらない女の一生(A Commonplace Woman)
  • 続・第四夜(The Fourth Evening)
    • カナダの黄昏(Canadian Twilight)
    • ああ 春とともにそぞろ歩いて(Oh, We Will Walk With Spring Today)
    • 悲しみ(Grief)
    • 部屋(The Room)
  • 奇跡の出会い(The Road to Yesterday)
  • 最終章 また会う日まで(Au Revoir)
    • 願い(I Want)
    • 巡礼(The Pilgrim)
    • 春の歌(Spring Song)
    • 余波(The Aftermath)

参考文献

脚注

注釈

  1. ^ 村岡美枝訳による。
  2. ^ 花子は美枝の母・みどりの伯母(養母)であるため、実際は美枝の大伯母(美枝は花子の大姪)に当たる。
  3. ^ カナダ国外での出版は、フィンランド2010年9月刊行)、ポーランド2011年5月刊行)に続き3番目である。
  4. ^ 後に挿入された形で執筆し、亡くなる3週間前にサタデイ・ナイト紙に投稿。1942年5月2日に遺作として掲載された。モンゴメリ生涯最後の作品である。

出典




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