アオキタヒトデ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/06 17:45 UTC 版)
| アオキタヒトデ | |||||||||||||||||||||
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| 分類 | |||||||||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||||||||
| Evasterias troschelii (Stimpson, 1862) |
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| シノニム[1] | |||||||||||||||||||||
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| 英名 | |||||||||||||||||||||
| mottled star false ochre sea star Troschel's true star |
アオキタヒトデ(学名:Evasterias troschelii)は、マヒトデ科に分類されるヒトデの1種。カムチャツカ半島から北アメリカ大陸北西部まで、北太平洋に分布する。半径は30cmほどで、体色は青色や橙色など多様である。主に二枚貝を捕食する。
分類
1862年にウィリアム・スティンプソンによって、Asterias troschelii として記載された。彼はその前年に、学会で本種に関して発表していた[3]。ホロタイプはワシントン州のピュージェット湾で採集された[3][4]。現在は腕の一部がスミソニアン博物館に収蔵されている[4]。
1914年にアディソン・エメリー・ヴェリルは Evasterias 属を設立し、本種をタイプ種とした。ヴェリルは alveolata、densa、parvispina、rudis、subnodosa という5つの変種を発表し、 1914年には E. acanthostoma を記載した[4]。Alexander Michailovitsch Djakonovは、これらの変種をシノニムとしたが、alveolata と E. acanthostoma は本種の型とされた[2]。
形態
半径は最大28cmと大型である。盤は小さく、5本の細長い腕を持つ。腕は先端が上を向いていることが多い。腕は盤の縁から少し離れた場所で最も太くなる。盤の反口側は石灰質の骨板で覆われ、板には2mmの棘がある。骨板の周囲にはより小さな棘と、交差した直線的な叉棘がある。腕の中央部には、白色の棘が不規則に並ぶ。反口側は全体的に手触りが粗い。口側では口から腕の先端まで、長い歩帯溝が伸びる。その両側には4列の管足と叉棘および棘が並ぶ。体色は橙色、茶色、灰緑色、灰青色、淡紫色など様々で、斑点が入ることもある。腕は反口側の体色と異なる色で縁取られることもある。口側は黄土色である[5][6]。
分布と生息地
北アメリカではアラスカ州のプリビロフ諸島から、南はカリフォルニア州のモントレー湾まで分布し、ピュージェット湾以南では珍しい。カムチャツカ半島のベチェビンスカヤ湾にも分布する[2][5]。岩場や礫底、砂地にも生息し、水深70-75mまで見られる[2][6]。湾などの閉鎖的な水域では、同海域で個体数の多いPisaster ochraceusよりも優占している[6]。
生態
繁殖
生息域の北部では、4-6月にかけて繁殖する。体外受精を行い、多くの小さな卵を産卵する。孵化したビピンナリア幼生は動物プランクトンであり、海流によって分散する[6]。
摂餌と食性
主に二枚貝を捕食する。管足を使って貝の殻をこじ開け、隙間に胃を挿入する。その後消化酵素を用い、貝の組織を分解する。フジツボ、ヒザラガイ、腹足類、ホヤ、腕足類も獲物となる[6]。数種のカサガイ類は、本種の存在を感知して回避行動をとることが知られている[5]。
エクソンバルディーズ号原油流出事故により放出された炭化水素などは、本種の摂食や成長に大きな影響を与えた。ムラサキイガイは本種よりも影響が小さかったため、石油汚染によってムラサキイガイが潮間帯の環境で優占することが推測された[7]。
他種との関係
ウロコムシ科の Arctonoe fragilis は、ヒトデの表面または歩帯溝に寄生する[6]。繊毛虫の Orchitophrya stellarum はヒトデに寄生し、普段は体や腕の棘の間に潜むが、ヒトデの繁殖期には生殖孔から生殖腺に侵入し、精子を餌とする[8][9]。
タラバガニの幼生は、ヒトデの表面や腕の間に付くことが知られている[5]。成体のタラバガニはヒトデの天敵である[6]。その他にもカモメ、エゾニチリンヒトデ、ヒマワリヒトデに捕食される[5]。
画像
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橙色の個体
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青色の個体
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褐色の個体
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体表の多孔質の拡大
出典
- ^ a b Mah, Christopher (2025). “Evasterias troscheli (Stimpson, 1862)”. World Register of Marine Species. 2025年11月6日閲覧.
- ^ a b c d Дьяконов, А.М. (1950) (ロシア語). Морские звезды морей СССР [Определители по фауне. 34 (Tableaux analytiques de la faune de l'URSS 34)]. St. Petersburg: Акаде́мии Нау́к СССР. pp. 130–131
- ^ a b Stimpson, William (1862). “On New Genera and Species of Starfishes of the Family Pycnopodidæ (Asteracanthion Müll. and Trosch.)”. Proceedings of the Boston Society of Natural History 8: 267–268 2019年11月18日閲覧。.
- ^ a b c Verrill, Addison Emery (1914). “Monograph of the shallow-water starfishes of the North Pacific coast from the Arctic Ocean to California”. Harriman Alaska Series 14: 151–167. doi:10.5962/bhl.title.25926 2019年11月16日閲覧。.
- ^ a b c d e Dave Cowles. “Evasterias troscheli (Stimpson, 1862)”. Invertebrates of the Salish Sea. 2012年4月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年5月18日閲覧。
- ^ a b c d e f g Philip Lambert. “Evasterias troschelii (Stimpson, 1862)”. Sea Stars of British Columbia, Southeast Alaska and Puget Sound. Royal BC Museum. 2025年11月7日閲覧。
- ^ O'Clair, C. E.; Rice, S. D. (1985). “Depression of feeding and growth rates of the seastar Evasterias troschelii during long-term exposure to the water-soluble fraction of crude oil”. Marine Biology 84 (3): 331–340. Bibcode: 1985MarBi..84..331O. doi:10.1007/BF00392503.
- ^ Vevers, H. G. (1951-02). “The biology of Asterias rubens L. II. Parasitization of the gonads by the ciliate Orchitophrya stellarum Cépède”. Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom 29 (3): 619–624. doi:10.1017/S0025315400052814. ISSN 0025-3154.
- ^ Burrowes, Robert B. (1936). “Further observations on parasitism in the starfish”. Science 84 (2180): 329. Bibcode: 1936Sci....84..329B. doi:10.1126/science.84.2180.329. PMID 17757665.
関連項目
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