「有」についての諸論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/12 04:54 UTC 版)
客人はまず導入として、既成の「実在(有)」に関する説を一覧することにする。 「実在(有)」についての既成の説としては、 「実在するもの(有)」は3つあり、その内の或るものは時に戦い合い、時に親しくなって結婚し子供を生む、という説。 「実在するもの(有)」には「湿-乾」ないしは「熱-冷」の2つがあり、結婚して結びつく、という説。 「実在するもの(有)」は、全て1つ、という説。(エレア派) 「実在するもの(有)」は、「多」であると共に「一」であり、愛憎によって統合されている、という説。(ヘラクレイトス派) 「実在するもの(有)」は、ある時はアプロディーテ(愛の女神)の力によって「一」となり、ある時は争いのために「多」となる、を交互に繰り返すという説。(エンペドクレス説) といったものがあるが、客人はこれらはどれも、子供に語り聞かせる物語(ミュートス)のようであり、我々一般大多数がその意味するところをしっかりと理解できないまま、自己完結的に話を片付けてしまっていると指摘する。 例えば、「多」や「一」や「2つのもの」等が「実在する(有)」「生じた」「生じつつある」とか、「熱」と「冷」が「分離」「結合」するだとかいった説明で、彼らが一体何を言いたいのか理解できるかと、客人は問う。 そして客人は、先の議論で出てきた「有らぬもの(非有)」に関しても、若い頃は何となく分かった気になっていたが、よくよく考えるとよく分かっておらず、様々な「困難」に直面することになるように、この「有るもの(有)」に関しても、同じことが言えると指摘する。テアイテトスも同意する。
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