過換気症候群 機序

過換気症候群

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/02 23:15 UTC 版)

機序

何らかの原因で呼吸を必要以上に行うことがきっかけとなり発症する。パニック障害などの患者に多くみられるが、運動直後や過度の不安や緊張などから引き起こされる場合もある。

呼気からの二酸化炭素(CO2)の排出が必要量を超え動脈血のCO2濃度が減少して血液アルカリ性に傾くため、息苦しさを覚える。そのため、無意識に延髄の中枢化学受容体が反射によって呼吸を停止させ、血液中のCO2を増加させようとする。しかし、大脳皮質は、呼吸ができなくなるのを異常と捉え、さらに呼吸させようとする。また、血管が収縮してしまい、軽度の場合は手足の痺れ、重度の場合は筋肉が硬直する。それらが悪循環になって発作が重くなる。

症状

過換気症候群によって引き起こされる症状には以下のようなものがある。

  • 息苦しさ
  • 呼吸が速くなる(呼吸を深くすると胸部に圧迫を感じる)
  • 胸部絞扼感
  • 動悸
  • 目眩
  • 手足や唇の痺れ(テタニー
  • 意識障害
  • の恐怖を感じる
  • (まれに)失神

直接的にこの症状が起因して死ぬ事はない。しかし心臓発作などを誘発するケースもある。 他の病気で発熱し、息が荒くなっただけで発症するケースもある。

発症しやすい人

  • 几帳面、神経質な人
  • 心配症であり、考え込んでしまう人
  • 10~30代の若者:日本の救急外来においては20歳代の女性患者が圧倒的に多い[1][2]

対処法

深呼吸

呼吸の速さと深さを自分で意識的に調整すれば2~3分で自然に治まる。しかし、患者本人にとっては簡単にできることではない。

万一発作が起きた場合は、介助者は患者を落ち着かせ、意図的にゆっくりと深呼吸をさせるなどの呼吸管理によって、二酸化炭素を増やしながらも、酸素を取り込んで、窒息しないように呼吸管理をすることが推奨されている。

具体的には、息を吐くことを患者に意識させ、「吸う:吐く」が1:2になるくらいの割合で呼吸する。一呼吸に10秒くらいかけて、少しずつ息を吐く。また息を吐く前に1~2秒くらい息を止めるくらいがベター。胸や背中をゆっくり押して、呼吸をゆっくりするように促す。

紙袋を使う方法

かつては紙袋などに口・鼻をあて、吐いた空気を再度吸い込むという行為をくり返し、血中の二酸化炭素濃度を上げる方法(ペーパーバッグ法)がしばしば試みられた。この場合、酸素不足にならないよう、少し隙間を作っておくなどの配慮が必要でその加減が難しく、袋を用いる方法は有効性よりもむしろリスクの方が大きいという意見もある。

誤った処置(袋をぴったりと口・鼻に当ててしまい、外気を遮断してしまうなど)により、発作時には、酸素が多すぎた状態から、一気にバランスが逆転し二酸化炭素が多くなり過ぎて、窒息死に至ったケースも報告されているという[3]

また頻呼吸や過剰呼吸が見られるのは過換気症候群だけではない。例えば肺水腫で呼吸が乱れているときにペーパーバッグ法を行なうと症状が悪化し、時に死をもたらすので、慎重な鑑別診断が必要である。

投薬

一般的に発作は数時間以内に自然寛解することが多いが、不安が強い場合は抗不安薬が投与される。パニック障害うつ病などが元疾患として存在する場合は、その治療も行われる。[4]

脚注


  1. ^ 大倉隆介, 小縣正明「救急外来における過換気症候群の臨床的検討」『日本救急医学会雑誌』第24巻第10号、2013年、837–846頁、doi:10.3893/jjaam.24.837 
  2. ^ 山口陽子, 田中博之「救急車で当院へ搬送された過換気症候群653例の臨床的検討」『日本臨床救急医学会雑誌』第18巻第6号、2015年、708–714頁、doi:10.11240/jsem.18.708 
  3. ^ 救急症例検討会症例 過呼吸症候群”. 横浜市立大学附属病院 臨床研修センター. 2011年6月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年5月28日閲覧。
  4. ^ 過換気症候群の治療法。発作が起こったらどうすればいい?”. いしゃまち. 株式会社メディウィル (2017年12月7日). 2023年5月28日閲覧。


「過換気症候群」の続きの解説一覧




過換気症候群と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「過換気症候群」の関連用語

過換気症候群のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



過換気症候群のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの過換気症候群 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS