篠島 地理

篠島

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/05 14:16 UTC 版)

地理

三河湾三島の中ではもっとも沖合に位置し、知多半島師崎渥美半島伊良湖岬を結ぶ線上に位置する。北約3kmの距離に日間賀島南知多町)が、北東約7kmの距離に佐久島西尾市)があり、南知多町の本土との最短距離は約3kmである[1]。知多半島・渥美半島との距離がそれぞれ10km以内と近く、また本土との生活交流が活発なため、国土交通省による離島分類では内海本土近接型離島にあたる[注 2]。面積は0.94km2であり、佐久島の約半分、日間賀島の1.2倍である。島の周囲は豊かな漁場であり、篠島港の突堤はクロダイ釣り場となっている[3]。篠島と日間賀島の間には構造線が走っているため、三河湾三島の中で篠島だけ地質が異なり、領家帯花崗岩から成る[5][2]。三河湾は平均水深約9.2mの浅い湾だが、構造線に沿って水深約40mの深みがある[5]

中央部には49.1mの最高標高地点があり、この場所は三河湾三島の中でもっとも高い地点である[6]。東岸には「さんさんビーチ」と呼ばれる天然の渚があり、緩やかな弧を描いて800m続いている。中央部の丘陵地には家屋が密集しているが、これまでに大火事の記録はない[7]。北部には島民が「五万坪」と呼ぶ埋立造成地があり[注 3]、造成地の南側には碁盤の目状に区切られた土地に住宅や民宿などが、北側には9ホールのゴルフ場跡などがある[8]。ゴルフ場跡は荒地となっているが、観光振興ゾーンとして整備される予定である[9]

属島

万葉の丘より松島を望む
海によって隔てられている属島
  • 木島、大磯島、築見島、野島、松島、戸亀島、平島
本島と陸続きになった属島
  • 小磯島、中手島

小島が点在する篠島一帯は、その風光明媚な景観から「東海の松島」と呼ばれ[10][3][6]、本島から西方の松島方向を見た際の景色が「日本の夕陽百選」に選出されている[6]。島の周囲には木島、小磯島、大磯島、築見島、中手島、野島、松島、戸亀島、平島の計9の無人島が属島として存在したが[11][注 4]、現代の埋め立て工事によって小磯島と中手島は篠島本島と陸続きとなった[12]。かつて築見島は干潮時に篠島とひと続きだったとされており[11]、小磯島・中手島・築見島の3島を浦磯3島という[13]。中手島にはおんべ鯛の調製所があり、島自体を伊勢神宮が所有・管理している。

篠島の南0.8kmにある野島は面積0.03km2の無人島であり、篠島小学校がサバイバルキャンプなどに利用していたことがある[6]。野島には篠島の属島では唯一、灯台(野島灯台)と社(野島神社)が設置されている。野島灯台は1957年(昭和32年)12月に初点火されたものであり、野島神社は7月の野島祭の際に信仰の対象となる[14]。篠島の北西0.2kmにある木島は面積0.03km2、最高標高36mの無人島である[6]

1958年(昭和33年)に三河湾一帯が三河湾国定公園に指定されると、名古屋鉄道は篠島一帯を海上動物公園にする構想を示した[15]。観光に加えて日本モンキーセンターの繁殖研究をも目的とし、木島にはカニクイザルが、築見島にはアヌビスヒヒが、野島にはニホンザルが放された[16][6]。無人島の築見島には年間数千人の観光客が来島し、これらのサルは1974年(昭和49年)まで飼育された[16][6]

人口

江戸時代後期にまとめられた尾州徇行記による人口は584人であり、同史料で938人の日間賀島よりも少なかったが、1874年(明治7年)には1,006人、1891年(明治24年)には1,562人と、1世紀余りの間に人口が3倍近くに増加し[17][18]、日間賀島の人口を上回った。その後も人口は増え続け、1950年(昭和25年)には過去最大値の3,785人を記録[2]。その後は1960年(昭和35年)の国勢調査で3,403人、1970年(昭和45年)の調査で2,807人、1980年(昭和55年)の調査で2,576人、1990年(平成2年)の調査で2,352人、2000年(平成12年)の調査で2,039人、2010年(平成12年)の調査で1,763人と減少が続いている[18]。2000年調査での高齢者人口比率は22.6%だったが、2010年調査では29.4%に大きく上昇した[18][2]。2000年調査による人口密度は2,192人/km2であり、日間賀島(2,882人/km2)、池島(長崎県、2,641人/km2)に次いで日本の離島中第3位だった[19][注 5]

世帯数 / 人口
1792年(寛政4年)-1822年(文政5年)頃
家数130・人数584 尾州徇行記[17]
1874年(明治7年)
戸数267・人数1,006 南知多町[18]
1891年(明治24年)
戸数285・人数1,562 角川日本地名大事典[17]
1930年(昭和5年)
468世帯・2,374人 国勢調査
1950年(昭和25年)
669世帯・3,785人
1970年(昭和45年)
685世帯・2,807人
1990年(平成2年)
655世帯・2,352人
2010年(平成22年)
634世帯・1,763人
2015年(平成27年)
622世帯・1,653人

気候

三河湾三島地域の気候は温暖であり、年平均気温は16度前後である[2]。結氷や降霜は少なく、降雪はほとんどみられないが、冬季には強い季節風が吹く[2]。1970年代の年平均降水量は1,310mmであり、2005年から2011年の平均が1,469mmだった南知多町の本土や愛知県の平均と比べてやや少ない[18]

(参考)佐久島の気候
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
平均最高気温 °C°F 10.1
(50.2)
10.4
(50.7)
12.8
(55)
17.8
(64)
21.0
(69.8)
24.6
(76.3)
27.9
(82.2)
29.4
(84.9)
26.8
(80.2)
22.4
(72.3)
17.5
(63.5)
12.4
(54.3)
19.5
(67.1)
日平均気温 °C°F 7.0
(44.6)
7.2
(45)
9.6
(49.3)
14.7
(58.5)
18.7
(65.7)
22.6
(72.7)
26.0
(78.8)
27.4
(81.3)
24.4
(75.9)
19.6
(67.3)
14.4
(57.9)
9.1
(48.4)
16.8
(62.2)
平均最低気温 °C°F 4.3
(39.7)
4.4
(39.9)
6.6
(43.9)
12.3
(54.1)
16.6
(61.9)
21.1
(70)
24.7
(76.5)
25.9
(78.6)
22.4
(72.3)
17.1
(62.8)
11.5
(52.7)
6.3
(43.3)
14.5
(58.1)
降水量 mm (inch) 52
(2.05)
65
(2.56)
84
(3.31)
121
(4.76)
145
(5.71)
135
(5.31)
136
(5.35)
100
(3.94)
197
(7.76)
151
(5.94)
67
(2.64)
42
(1.65)
1,310
(51.57)
出典:名古屋大学空電研究所資料
(参考)南知多町の気候
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
日平均気温 °C°F 4.1
(39.4)
6.6
(43.9)
7.4
(45.3)
13.0
(55.4)
18.3
(64.9)
22.9
(73.2)
26.6
(79.9)
27.6
(81.7)
24.7
(76.5)
18.7
(65.7)
14.4
(57.9)
7.8
(46)
16.0
(60.8)
降水量 mm (inch) 38
(1.5)
81
(3.19)
103
(4.06)
124
(4.88)
184
(7.24)
179
(7.05)
191
(7.52)
84
(3.31)
177
(6.97)
169
(6.65)
70
(2.76)
70
(2.76)
1,469
(57.83)
出典:名古屋地方気象台[18]

注釈

  1. ^ 離島振興法による指定地域名であり、篠島、日間賀島佐久島を指す。
  2. ^ 国土交通省が策定した離島振興計画では、離島を本土近接型と隔絶型に分け、さらに本土近接型を内海型と外海型に分けている。本土との距離が近く、航路の安定性が高く、通勤通学が可能な離島が内海本土近接型離島とされる。
  3. ^ 造成地の面積は実際に5万坪(=約1.5km2)を超えている。
  4. ^ 国土地理院発行の1:25,000地形図「佐久島」(平成17年発行)と「伊良湖岬」(平成21年発行)には、木島、小磯島、築見島、中手島、野島、松島、戸亀島、広亀島の名前が記されている。『日本歴史地名大系』に掲載されている属島では大磯島と平島が記されておらず、その代わりに広亀島が記されている。
  5. ^ なお、池島炭鉱は2001年に閉山となり、2010年代の池島の人口密度は約300人/km2まで急減している。
  6. ^ 日本の島事典によれば7ヶ月、日本歴史地名大系によれば6ヶ月である。
  7. ^ なお、通俗的には「愛知三島」ではなく「三河湾三島」と呼ぶことのほうが多い。
  8. ^ 三河湾三島それぞれに失業中の独身女性が80日間滞在し、それぞれの特技を生かして島の魅力を島外に発信するというキャンペーンである。
  9. ^ 日間賀島ではタコをモチーフにした「たこみちゃん」が、佐久島では大アサリをモチーフにした「あさりん」がお披露目されている。

出典

  1. ^ a b c d e f g 篠島・日間賀島の概要 2 両島の概要 (PDF) (2013年6月26日時点のアーカイブ)南知多町、2012年
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m 愛知県離島振興計画 Ⅱ 離島の現況愛知県、2013年
  3. ^ a b c d e f g ゼンリン (1997)、132頁
  4. ^ あいちの離島振興 | 愛知県
  5. ^ a b 日本地誌研究所 (1969)、28頁
  6. ^ a b c d e f g h i j k l 日本離島センター (2004)、203-205頁「篠島」
  7. ^ 愛知県史編さん専門委員会民俗部会 (1998)、48頁
  8. ^ 愛知県史編さん専門委員会民俗部会 (1998)、2頁
  9. ^ 篠島地区振興基本計画南知多町
  10. ^ a b c 中日新聞社開発局 (1977)、382頁
  11. ^ a b c d e f g h i j 平凡社 (1988)、517-518頁
  12. ^ a b c d e 日外アソシエーツ (1991)
  13. ^ 愛知県史編さん専門委員会民俗部会 (1998)、25頁
  14. ^ 愛知県史編さん専門委員会民俗部会 (1998)、28頁
  15. ^ 「離島航路(パノラマの彼方 明鉄物語第3部:7)」朝日新聞、1998年12月8日朝刊、愛知
  16. ^ a b 「沖の小島にはヒヒが住んだ(潮騒が聞こえる:9)」朝日新聞、1997年9月18日朝刊、愛知
  17. ^ a b c d 角川日本地名大辞典編纂委員会 (1989)、643頁
  18. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 篠島・日間賀島の概要 3 各種データ南知多町、2012年
  19. ^ 日本離島センター (2004)、857頁「人口密度の高い島BEST20」
  20. ^ 角川日本地名大辞典編纂委員会 (1989)、642頁
  21. ^ a b c d e f g 菅田 (1995)、54頁
  22. ^ 木簡字典 奈良文化財研究所
  23. ^ 矢野 (1992)、181頁
  24. ^ スポット案内 其の一 篠島観光協会
  25. ^ a b 愛知県史編さん専門委員会民俗部会 (1998)、17頁
  26. ^ 愛知県史編さん専門委員会民俗部会 (1998)、15頁
  27. ^ 角川日本地名大辞典編纂委員会 (1989)、533頁
  28. ^ 愛知県史編さん専門委員会民俗部会 (1998)、49頁
  29. ^ a b 篠島・日間賀島の概要 1 沿革南知多町、2012年
  30. ^ 愛知県史編さん専門委員会民俗部会 (1998)、51頁
  31. ^ 「『急ぎすぎ』 美浜・南知多住民投票」朝日新聞、2005年2月28日朝刊、愛知1、27頁
  32. ^ 「今後の厳しさ強調 美浜町・南知多町合併協解散 2町長会見」朝日新聞、2005年3月4日朝刊、愛知1、27頁
  33. ^ 離島に来てね 「80日間チャレンジ」女性トリオ抱負中日新聞、2011年9月6日
  34. ^ 「紡ぐ3島物語 愛知のPR企画、開始1カ月」朝日新聞、2011年10月8日夕刊、1総合、1頁
  35. ^ 「『島娘』充実の80日間 愛知の3島PR企画、まもなく終了」朝日新聞、2011年12月24日夕刊、1社会、9頁
  36. ^ 「離島のゆるキャラお披露目 あさりん・たこみちゃん・しらっぴーな、3島PR」朝日新聞、2012年10月4日朝刊、名古屋・1地方、25頁
  37. ^ a b c d 航路図・時刻表名鉄海上観光船
  38. ^ a b 愛知県史編さん専門委員会民俗部会 (1998)、4頁
  39. ^ 加藤 (2013)、49頁
  40. ^ a b c d e f 篠島について 篠島観光協会
  41. ^ a b c 静岡県教育委員会・愛知県教育委員会 (2003)
  42. ^ 参考資料1 トラフグ漁獲量 愛知県
  43. ^ 愛知の離島(資料編)愛知県地域振興課
  44. ^ 日本地理風俗大系編集委員会 (1959)、187頁
  45. ^ a b 愛知県史編さん専門委員会民俗部会 (1998)、40頁
  46. ^ a b c 愛知・篠島 伊勢神宮と豊漁の島 壮観、天日干しの鯛日本経済新聞、2011年12月24日
  47. ^ a b c 1 正月行列・大名行列 篠島の祭礼
  48. ^ a b 7 祇園祭・野島祭 篠島の祭礼
  49. ^ a b c 10 おんべ鯛奉納祭 篠島の祭礼
  50. ^ 愛知県史編さん専門委員会民俗部会 (1998)、7頁
  51. ^ 矢野 (1992)、179頁
  52. ^ a b 愛知県史編さん専門委員会民俗部会 (1998)、8頁
  53. ^ 愛知県史編さん専門委員会民俗部会 (1998)、12頁
  54. ^ a b 上田編 (1988)、120頁
  55. ^ a b c 上田編 (1988)、121頁
  56. ^ 上田編 (1988)、121-122頁
  57. ^ 矢野 (1992)、183頁
  58. ^ 愛知県史編さん専門委員会民俗部会 (1998)、13頁
  59. ^ a b 篠島から御幣鯛船 内宮に干鯛奉納”. 伊勢新聞 (2013年9月11日). 2013年11月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年12月9日閲覧。
  60. ^ a b 川口 (2010)、177頁
  61. ^ a b 川口 (2010)、174頁
  62. ^ 篠島を知る 篠島の祭礼






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