甲殻類 形態

甲殻類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/02 21:32 UTC 版)

形態

体は複数の体節(somites)からなり、前端は先節と直後5節の体節の癒合でできた頭部(head, cephalon)で、残りの胴部の体節は多くが前後で胸部(thorax)と腹部(abdomen、軟甲類の場合は pleon)としてまとめられるが、その構成は系統によって様々である[4]。多くが併せて十数節ほどであるが、少ないものでは数節(鰓尾類)、多いものでは数十節に達し(カブトエビ、多くのムカデエビ)、胸部と腹部の区分が見られないものもある(ムカデエビ)[6][5][4]。頭部と胸部全体、または頭部と胸部の一部の体節は更に癒合が進み、頭胸部(cephalothorax)を構成することがある[4][7]。頭部ないし頭胸部は背面から伸びた甲羅状の構造があり、背甲(carapace)と呼ばれる[4]。これによって頭部と胸部、あるいは全体を覆っているものが多いが、全くこれを欠くものもある。

先節由来のは側眼(複眼)と中眼(単眼)の両方、もしくは片方のみをもつ。中眼は主にノープリウス幼生期(後述)で顕著に見られ、ノープリウス眼(nauplius eye)と呼ばれている。複眼は原則として他の節足動物のように頭部の表面に密着するが、能動的な眼柄に突出(十脚類、無甲類など)、もしくは透明の頭部の内部に収まる(ミジンコ類など)ように変化した場合もあり、全く眼を欠くものもある(ムカデエビ、カシラエビなど)[6]

様々な甲殻類のニ叉型付属肢(en:内肢、ex:外肢、ep:外葉)

体の各体節には基本として1対の付属肢関節肢)があり、第1触角以外の付属肢の基本形は途中から外肢(exopod)と内肢(endopod)に分かれた二叉型(biramous)で、これらの分岐より前の原節(protopod)は2節から3節に分れる、外側に副肢(epipod、または外葉 exite)、内側に内葉(endite、または内突起)という付属体がある[8][9]。これらの構造は種類により多様な機能に合わせ変形したり退化している[9][4]

ヨーロッパザリガニ大顎(a)、第1小顎(b)、第2小顎(c)、および第1-3顎脚(d-f)

頭部には第1-2体節由来の2対の触角があり、前後それぞれ第1触角(first antenna、antennule)および第2触角(second antenna、antenna)と呼ばれる。第1触角は基本として単枝型であるが、軟甲類とムカデエビでは複数の二次的な分岐をもち、二叉型や三叉型のように見える[10]。通常、第1触角は第2触角に比べて退化的であるが、カイアシ類とムカデエビの場合はむしろ第1触角の方が発達で、第2触角は小さく目立たない[6]。第2触角の直後にがあり、その直前には頭楯(clypeus、または口前部 epistoma)と上唇(labrum)という先節由来の2枚の構造体、直後には第3-5体節由来の大顎(mandible)・第1小顎(first maxilla, maxillula)・第2小顎(second maxilla, maxilla)という3対の付属肢(顎)があり、口の周りで口器を構成する[4]。大顎と小顎の間には、1対の擬顎(paragnath)という第3体節の腹板から変化した構造体をもつ[11]。また、基部1節の肢節のみからなる六脚類多足類の大顎とは異なり、甲殻類の大顎は多くが大顎髭(mandibular palp)という、それ以降の肢節に当たるの部位を外側にもつ[12]

胴部の付属肢(胴肢 trunk limb、胸部の場合は胸肢 thoracopod)は主に移動(歩行もしくは遊泳)に使われるが、多様な特化様式が見られ、例えばその内肢は把握用のや鎌(亜鋏状)、外肢は退化消失、内葉は咀嚼用の顎基(gnathobasee)、副肢は呼吸用のに変化した場合がある[10][9][4]。前方1対もしくは複数対の胴肢が顎脚(maxilliped)に特化し、直前の顎とともに口器に加わる場合もある[13][12][4]。腹部はほとんどの場合では付属肢を欠くが、軟甲類の場合は胸肢とは形態が異なった腹肢(pleopod)をもつ(そのため、軟甲類の「腹部」は他の甲殻類の腹部に相同でなく、単なる「特化した胸部の後半部」ではないかという説もある)[14]肛門をもつ末端の部分は尾節(telson)で、体節ではないが、肛門節(anal somite)とも呼ばれ、1対の尾叉や尾鞭(caudal furca、caudal ramus)などという可動の構造をもつことが多い[14][4]

フクロムシのメス成体(左)とそのノープリウス幼生(右)

寄生性の種類では付属肢や体節が失われていたり、極端な場合はフクロムシシタムシのように節足動物に見えない姿のものがある[7]

甲殻類は既知最小級と最大級の現生節足動物を同時に含んだ分類群であり、体の大きさはヒメヤドリエビが全長0.09 mmから、タカアシガニの足を広げて3mまでの広い範囲にわたる[15]








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