日本弁護士連合会 批判

日本弁護士連合会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 19:11 UTC 版)

批判

弁護士倫理・懲戒における身内擁護問題

日弁連は、弁護士法に基づき、所属弁護士を懲戒することはできる。一方で、単位弁護士会が下した懲戒処分懲戒請求の不服審査も行っている。

もっとも軽い戒告処分を出すのに、単位弁護士会に懲戒請求を提出し、上部組織の日弁連に3度の申し立てを行い2年間かかった例もあり、元日弁連会長の宇都宮健児は「このケースは、私も処分が軽い印象を受けますが、決議まで2年もかかったのは長すぎる。皆が忘れた頃に軽い処分というのでは“身内同士でナアナアでやっている”と思われても仕方ありません。これでは一般市民が納得しませんよ」などとして、弁護士会は身内に甘いことを批判している[26]

単位弁護士会が受け付けた懲戒請求の申立総件数に対して、実際に弁護士を懲戒する割合は、2.3パーセント(平均)[27]である。単位弁護士会が懲戒請求申立を却下したとき、日弁連は、同議決に対する異議申立を受理し、再審査することもあるが、その割合は1.2パーセント(平均)である[27]

2005年(平成17年)4月、拘束力の無い弁護士倫理に代わり、弁護士職務の「行動指針または努力目標」を定めたものとして弁護士職務基本規程を施行した[28]

産経新聞による報道

弁護士が弁護士法によって日弁連に属する各弁護士会への所属が義務付けられているため、強制加入団体の日弁連が特定の政治的意見を会長声明や理事会決議としてあげることに対し「弁護士が全員左派であると思われるのは腹が立つ」「任意団体にすべき」という意見がある、と産経新聞は報じている。2015年8月に日弁連の村越会長が安全保障関連法案廃案を訴えた抗議行動デモのために開いた会見で、強制加入団体の日弁連が特定の政治的意見を掲げることへの懸念を産経記者が会見で質問したところ、村越会長を支持する弁護士や大学教授300人から「何を言っている」「帰れ!」などの怒号が飛んでいる。村越会長自身は産経新聞に「『戦争法案』というレッテル張りはしていない。『9条を守れ』ということまではぎりぎりの範囲だと思う。政治的な発言とは考えていない」と述べている[25]

2015年(平成27年)7月には、京都弁護士会に所属する弁護士が、「弁護士自治を目的とする会の趣旨と関係のない政治的主張を行うことは違法だ」として、同弁護士会と日弁連の両会長に、公式ウェブサイト上の声明文を削除し、慰謝料を支払うよう求めた裁判を起こしている[29]。東京地裁は、当該訴訟の判決において、「本件各掲載行為が被告日弁連又は被告京弁の目的の範囲外の行為であると認めることはできない。」「本件各掲載行為が,原告ほかの思想・良心の自由等を侵害するものであると認めることはできない。」「本件各掲載行為に当たっては,いずれも被告日弁連及び被告京弁において,適切な機関決定がされたものと認めることができる。」などと判示した。主文においては、削除請求及び慰謝料請求は理由なしとして棄却され、違法確認の請求については確認の利益を欠くものとして却下されたため、原告の全面敗訴となった。訴訟費用も原告が全額負担することが命じられた[30]

2015年に産経新聞は旧日本陸軍軍医の麻生徹男の娘である天児都への取材で、作家の千田夏光が麻生が慰安婦制度の考案者であるかのように書いたことについて天児が事実とは異なるとして抗議と訂正の申し入れをしたところ、千田は天児に謝罪をしたが著書の訂正はせず千田の記述が他の著者の引用を受けるなどして広まってしまい、これについて天児が法的措置を取ろうとしたところ「日本弁護士連合会はあなたと立場が違うから弁護できない」という理由で弁護を断られたと報じている[31]

産経新聞は【弁護士会 矛盾の痕跡】にて、日弁連は拉致に冷淡、「朝鮮人=被害者」以外は沈黙する人権派弁護士らが運営し、朝鮮総連と強固なネットワークを持っていると報道している。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の固定資産税減免の無効確認訴訟や朝鮮学校補助金取り消し訴訟の総連側の代理人には常に、日弁連で強い影響力を持つ人権派弁護士がつくなど、総連と人権派は強固なネットワークで結ばれ、例えば戦時中の慰安婦問題を国連の委員会に訴える日弁連の活動も総連が背後から支えたと指摘されている。上記の訴訟を追求側で担当した徳永信一弁護士は「日弁連はいわば総連の工作拠点。人権派が総連に取り込まれた影響なのか、日弁連は拉致問題には終始、消極的だった」と批判している。2002年の拉致被害者数人奪還以前まで日弁連会長を務めた人権派弁護士の土屋公献は朝鮮総連機関誌の「朝鮮時報」で「日本政府は謝罪と賠償の要求に応じるどころか、政府間交渉で疑惑に過ぎない行方不明者問題や「ミサイル」問題を持ち出して朝鮮側の正当な主張をかわそうとしている。破廉恥な行動と言わざるを得ない」と講演などでも同様の発言を繰り返していた。産経新聞は北朝鮮が拉致認めた後も日弁連は拉致問題をめぐる日弁連としての意見表明は5人の帰国直後に出した会長談話1本のみであること批判し、「虚偽の歴史である強制連行のような『朝鮮人は被害者、日本人は加害者』という構図を前提に、それに当てはまらないものには沈黙する。日弁連が掲げる人権は、恣意(しい)的に選ばれたものだけを指している」としている[32]

死刑廃止宣言の採決に関する批判

全会員の約2.1%しか参加していない死刑廃止宣言の採決について、委任状がない等の手続き上の不備、更に自身の思想信条と反する活動に強制加入団体の会費が支払われている事に対し、106人の弁護士が質問状を送っている[33][34]


注釈

  1. ^ 例として大阪市の国旗国歌条例

出典

  1. ^ 日本弁護士連合会:日弁連とは”. www.nichibenren.or.jp. 2021年10月22日閲覧。
  2. ^ 日本弁護士連合会会則 (PDF)
  3. ^ 弁護士会について|第二東京弁護士会ひまわり”. niben.jp. 2020年5月11日閲覧。 “日本で弁護士業務を行おうとする場合は、必ず、日本弁護士連合会に登録すると同時に、全国52の単位会のいずれかに所属しなければなりません(これを「強制加入団体」といいます)。”
  4. ^ 日弁連の会員”. 日本弁護士連合会ホームページ. 2020年6月6日閲覧。
  5. ^ 2022年度 会長・副会長・事務総長・事務次長』(PDF)(プレスリリース)日本弁護士連合会、2022年6月1日https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/organization/yakuinichiran_2206.pdf2022年7月16日閲覧 
  6. ^ ひまわり基金法律事務所(公設事務所)の概要と紹介”. 日本弁護士連合会ホームページ. 2020年6月6日閲覧。
  7. ^ 日本弁護士連合会(編)『今こそ変えよう!家族法―婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える』日本加除出版、2011年4月。ISBN 978-4817839121全国書誌番号:21926439 
  8. ^ 民法改正を考える会『よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて』朝陽会、2010年2月。ISBN 978-4903059327全国書誌番号:21717560 
  9. ^ 別姓訴訟に関する会長応援メッセージ、2011年
  10. ^ 死刑制度問題に関する提言” (PDF). 日本弁護士連合会 (2002年11月22日). 2017年11月18日閲覧。 “『本提言について』(概略)
  11. ^ 死刑執行停止法の制定、死刑制度に関する情報の公開及び死刑問題調査会の設置を求める決議”. 日本弁護士連合会 (2004年10月8日). 2017年11月18日閲覧。 “第47回人権擁護大会より(→過去の人権擁護大会・シンポジウム~2004年)”
  12. ^ 罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言”. 日本弁護士連合会 (2011年10月7日). 2017年11月18日閲覧。 “第54回人権擁護大会より(→過去の人権擁護大会・シンポジウム~2011年)”
  13. ^ a b 毎日新聞2016年10月8日30面
  14. ^ 住民基本台帳ネットワークシステムの稼働の延期を求める意見書」(2002年4月20日)
  15. ^ 自治体が住基ネットから離脱することに関する日弁連意見」(2002年12月20日)
  16. ^ 住民基本台帳ネットワークの本格稼働の停止を求める会長声明」(2003年8月25日)
  17. ^ 個人情報保護法案に反対し、住民基本台帳ネットワークシステム施行の延期を求める日弁連会長声明」(2002年5月24日)
  18. ^ 君が代斉唱時の不起立を理由に戒告処分を受けた都立中学校教諭らの処分取消・国賠請求訴訟の上告棄却判決に対する会長声明」(2011年6月23日)
  19. ^ 君が代斉唱時の不起立を理由に再雇用拒否された元都立高校教諭らの国賠請求訴訟の上告棄却判決に対する会長声明」(2011年6月10日)
  20. ^ 卒業式の国歌斉唱時の不起立を理由とする元都立高校教諭の再雇用拒否を合憲とした最高裁判決に対する会長声明」(2011年6月3日)
  21. ^ 公立学校教職員に君が代斉唱の際に起立・斉唱を強制する大阪府条例案提出に関する会長声明」(2011年5月26日)
  22. ^ 「国旗・国歌」を強制する都教委通達を合憲とした東京高裁判決に対する会長声明」(2011年2月9日)
  23. ^ 秦郁彦 1999, p. 334
  24. ^ 西岡力世界中にばら撒かれた「慰安婦問題」が捏造である完全なる根拠 (5/7)」『SAPIO』2012年8月22・29日号、小学館、2012年9月13日、2017年11月18日閲覧  ※ 現在はインターネットアーカイブ内に残存
  25. ^ a b 日弁連の“左巻き”政治活動に内部からも異論噴出 日弁連会長「9条守れは政治的発言じゃない」、産経新聞、2015年9月10日、2016年9月14日閲覧
  26. ^ 弁護士が1億円の所得隠しでも注意で済ませる弁護士会を信用できるか - デイリー新潮《『週刊新潮』2016年3月31日号・「ワイド特集 さまざまの事おもひ出す桜かな」より;2017年11月18日閲覧》
  27. ^ a b 懲戒請求事案集計報告(日本弁護士連合会・2010年) (PDF)
  28. ^ 弁護士職務基本規程 (PDF)
  29. ^ 「政治的な声明は違法だ」 弁護士が日弁連などを提訴 - 2015年7月1日 産経ニュース
  30. ^ 東京地方裁判所平成29年2月27日民事第18部判決(東京地方裁判所平成27年(ワ)第18254号及び同平成28年(ワ)第12921号事件)LEX/DBインターネット ID=25551279
  31. ^ “【歴史戦 第2部 慰安婦問題の原点(1)後半】軍医論文ヒントに「完全な創作」世界に増殖 誤りに謝罪しながら訂正せず”. 産経新聞 (インターネットアーカイブ). (2015年5月20日). https://archive.vn/hUHHm 2021年5月29日閲覧。 
  32. ^ 【弁護士会 矛盾の痕跡(1)】「北朝鮮に腰が引けている」拉致に冷淡、「朝鮮人=被害者」以外は沈黙…〝人権派〟が朝鮮総連と強固なネットワーク…”. archive.vn (2021年5月29日). 2021年10月22日閲覧。
  33. ^ a b 異例の紛糾、組織内の亀裂あらわに 日弁連定期総会 産経新聞2017年5月26日
  34. ^ a b 日弁連の死刑廃止活動「賛成派弁護士の会費も使われている」弁護士グループが質問状 弁護士ドットコム
  35. ^ https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/news/2020/200311_sokuhou.pdf
  36. ^ 「もし中国が尖閣占領を…」〝日本有事〟直視しない反安保決議 少数派が主導権握る日弁連執行部 - 産経新聞・2017年4月7日付
  37. ^ 日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:会長声明・意見書等
  38. ^ 橋下大阪市長アンケートに対する法的な見解~弁護士会の声明
  39. ^ 自由と正義”. 日弁連ウェブサイト. 2021年7月13日閲覧。






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