学歴 学歴の概要

学歴

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/07 02:41 UTC 版)

概説

国際標準教育分類 (ISCED 2011) ではレベル0から8までの9段階の学歴水準を規定している[2]

  • レベル0 - 就学前教育(幼稚園、保育所、特別支援学校幼稚部等)レベル
  • レベル1 - 小学校、特別支援学校小学部レベル
  • レベル2 - 中学校、特別支援学校中学部、専修学校高等課程1年制以上の学科(高等専修学校)レベル
  • レベル3 - 高等学校、前期中等教育修了以上の各種学校で修業年限2年以上、専修学校高等課程2年制以上の学科(高等専修学校)、特別支援学校高等部レベル
  • レベル4 - 専修学校専門課程1年制以上の学科(専門学校)、高等学校専攻科1年制以上の学科、特別支援学校高等部専攻科1年制以上の学科、高等教育機関進学準備(予備校等)、就職準備(職業訓練校等)レベル
  • レベル5 - 短期大学、高等専門学校、後期中等教育修了以上の各種学校で修業年限2年以上、専修学校専門課程2年制以上の学科(専門学校)レベル
  • レベル6 - 大学の学部の学士課程レベル
  • レベル7 - 大学の大学院の修士課程(博士前期課程)・専門職学位課程レベル
  • レベル8 - 大学の大学院の博士課程(一貫性博士課程、博士後期課程等)レベル

歴史

近代社会における学歴

近代以前の社会においては、人々の社会的地位や職業はその身分家柄財産によって定められ、世襲や血縁地縁などを加味して人材の選抜・配置が行われていた。

ところが、18世紀から19世紀ごろにかけて、近代的な官僚制度が生じ、官僚たちが試験によって任用されるようになり、また同じころ、専門的知識・技術が必要とされる職業についても試験制度が取り入れられ、学歴もそれらの職業につくための基礎資格として徐々に重要性を増していった[3]

産業革命と市民社会が進展したイギリスにおいて、1853年東インド会社によってインド高等文官の任用が会社理事による推薦から公開競争試験に移行し、1870年にはイギリス本国高等文官にも同様の試験が導入され、試験による人材の選抜・登用が官僚のみならず各種専門職などでも行われるようになった。このような人事制度は、「人々の能力・業績を公平かつ客観的に図る方法」などと謳われつつ導入され、「身分制社会から社会を解放して社会問題を解決する手段」として各国に普及した。ノーバート・ウィーナーは学歴社会を「統治者は永久に統治者であり、兵士は永久に兵士であり、労働者は労働者に運命づけられている」と定義づけている[4]

学歴のインフレ化

先進国においては、社会の高学歴化が起きた(後述)が、そうした仕組みの中で、大量の人々に学歴が与えられるようになり、学歴のインフレーションが進んだ。 つまり高学歴を持っている人の数が非常に増え、相対的に高学歴者の価値は下がった(例えばフランスなどもそうである[5])。日本でも少子化で定員割れの大学が増えている。

学歴社会という事象は、歴史の節で説明したように、学歴が特定の職業的地位を獲得するための手段となったときに始まったと見ることができる[3]。学歴社会が生まれた要因としては、体系的な学校制度の進展と近代官僚制の成立により、いわゆる「ホワイトカラー」が誕生したことがあげられる[3]。学校教育制度について言えば、上級学校への進学者に対して一定の学歴を求める傾向が強くなったことと、多くの人々に学歴が賦与されるようになった[3]。企業組織の官僚制化ということに関して言えば、20世紀には大企業が多数出現した。これら大企業ではホワイトカラーの従業員の供給源を学校卒業者に依存する傾向を強めた[3]。かくして、18-19世紀に官僚になったり専門的職業に就く時だけ必要とされた学歴が、次第に様々な組織での任用の基礎的な資格として用いられるような状況になり、学閥を形成したのである[3]

学歴が、特定の専門職に必要な知識の一指標として用いられている限りは、学閥として合理性を有してはいるといえる[3]。もっとも、今日では技術の進歩は速く、学歴は過ぎ去った過去に習得された古い技術の指標にすぎないにもかかわらず、学歴が学閥として派閥活動の元になり、一生にわたって人々の能力評価の尺度とされることもしばしばある[3]。このような学歴の持つ有害な側面(学歴コンプレックス)は社会にとって不要なものであることから、2018年問題を好機として、学歴社会を解消する為に、ICTを利用し、スマートフォンなどでも教育を利用できる放送大学をより発展的に拡大し、貧富の差がなく、学歴を意識せずとも、高等教育が社会のあらゆる層に満遍なく行き渡るよう通信教育を広げる文教政策が取られ始めている。

アメリカ合衆国における学歴

アメリカにおける25歳以上の学位と失業率・給与のグラフ。高学歴ほど失業率が低く、給与が高い。
アメリカにおける25歳から64歳までの雇用された民間人の職業分野別の学歴[6]。専門職や管理職では、学士以上の学位英語版の割合が高く、農業では高学歴の割合が低下する。

注釈

  1. ^ 例えば、安宅産業は、年少者に卒業後の就職を前提にした給費生制度を実施していた
  2. ^ ただし、高等学校もしくは中等教育学校を卒業した者であること、または高等学校卒業程度認定試験などによって「高等学校を卒業した者と同等以上の学力を有する者」と認められること。

出典

  1. ^ 広辞苑 第五版【学歴】
  2. ^ International Standard Classification of Education”. Education Policy and Data Center. 2016年12月29日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h 平凡社『世界大百科事典』第五巻 p.189【学歴社会】
  4. ^ The Human Use of Human Beings (1950, 『人間機械論』 みすず書房)、P50
  5. ^ マリー・ドュリュ=ベラ 『フランスの学歴インフレと格差社会: 能力主義という幻想』2007
  6. ^ https://www.oecd-ilibrary.org/sites/0c0b63ae-en/index.html?itemId=/content/component/0c0b63ae-en#:~:text=Educational%20attainment%20and%20employment%20rates,OECD%2C%202021%5B3%5D).
  7. ^ 学歴別にみた初任給”. 厚生労働省. 2017年10月7日閲覧。
  8. ^ 「放送大がなかったら心が折れていた」難関大中退の女子大生が抱く夢〈AERA〉(AERA dot.)”. Yahoo!ニュース. 2019年6月20日閲覧。
  9. ^ a b c d e f 筑波大学の図書館情報メディア研究科で社会情報学やコミュニケーション思想史を教えている[1] 後藤嘉宏による評価・分析。[2]http://www.slis.tsukuba.ac.jp/~ygoto/jouhoutoshokugyou20070302-1.pdf
  10. ^ 太田肇(2022)『日本人の承認欲求:テレワークがさらした深層』新潮社。
  11. ^ a b 天野郁夫『学歴の社会史…教育と日本の近代』(初版)平凡社平凡社ライブラリー〉(原著2005年1月6日)、pp. 63-76,80-81,84-88,145-174,186-190,343-357頁。ISBN 4-582-76526-2 
  12. ^ 最終学歴とは? 中退や在学中の場合はどうなる? 履歴書の書き方を解説 マイナビエージェント、2022年12月19日
  13. ^ a b 九鬼太郎『“超”格差社会・韓国』扶桑社、2012年。 


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