全日本自動車産業労働組合総連合会 歴史

全日本自動車産業労働組合総連合会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/17 02:03 UTC 版)

歴史

初代委員長の塩路一郎

第二次世界大戦の敗北後、日本社会党日本共産党の指導によってマルクス主義の影響を強く受けた急進的労働運動は、戦後復興の中核と期待された自動車産業にも及んだ。1948年には当時の四輪車生産メーカーの3社、日産・トヨタ・いすゞの各労働組合が中心となって全日本自動車産業労働組合(全自動車)が結成され、全労連の中心組合、次いで日本労働組合総評議会(総評)の最左派組合として1950年のトヨタ争議や1953年日産争議などで人員削減(指名解雇)阻止のための激しい闘争を展開していた。しかし、日産争議で敗北すると、その闘争支援資金を巡る問題などで分裂し、1954年に全自動車は解散していた。

一方、日産争議で全自動車(同日産分会)から脱退した労働者によって結成された日産自動車労働組合(後の自動車労連、現在の日産労連)や[5]、全自動車を解散に追い込み企業内組合として組織防衛に成功したトヨタ自動車労働組合(旧全自動車トヨタコロモ分会、現在のトヨタ労連の中核)[6]などは1958年に全国自動車労組懇談会(全懇)を発足させ、労使協調路線の組合による緩やかな全国組織を復活させた。これは1962年にトヨタ・日野・いすゞ・スズキによる全国自動車結成、さらに1965年の自動車産業労働組合協議会(自動車労協)結成へとつながり、日本の自動車産業労働運動の主導権を握った[7]

1972年、さらなる産別機能の強化が図られる事になり、日産系の自動車労連も参加した自動車総連が発足した。初代の委員長には自動車労連会長の塩路一郎が就任し、日産争議以来20年近くにわたって彼の進めた同盟型労使協調路線の完成形となった。以後、自動車総連は製造部門での週休2日制実現や共済制度の発足などで自動車産業労働者の保護や生活改善を進め、日産自動車の経営危機などでも日産労連を通じてカルロス・ゴーン社長が進める「日産リバイバルプラン」に協力して社員の退職奨励(社員数の削減)に応じながらも指名解雇の実施は阻止した。一方、前身の自動車労協時代に行った全日本金属産業労働組合協議会(金属労協、IMF-JC)への加盟を継続し、さらに国際自由労働連合組合(ICFTU)への加盟を行い、さらには労働戦線の統一の主導役として全民労協や連合の発足にも参加した。また、自動車産業の発展に伴って自動車総連自体も組織を拡大し、労働運動が冬の時代と評される現在でも発足時の50万人を大きく増加させた強力な組合として存続している。


  1. ^ 自動車総連公式サイトより。
  2. ^ ただし、「東京山梨」・「大阪奈良」・「山陰」(鳥取・島根)・「東四国」(香川・徳島)・「西四国」(愛媛・高知)・「福岡佐賀」の6地方協議会は2都府県にまたがる。
  3. ^ 2003年第43回衆議院議員総選挙。この時は日本共産党のみが対立候補を擁立し、古本は新人ながら181,747票(得票率89.6%)で全国の小選挙区で最高の得票数・得票率を記録した。
  4. ^ ユニオン・ショップにより、労働組合からの除名が企業からの解雇に直結する。ただし、最高裁判所の判例で別組合への加盟を条件に解雇は回避されるともされた(最一小判平成元年12月14日・民集43巻12号2051頁)。
  5. ^ 日産労連の公式サイト、「生いたち」より[1]
  6. ^ トヨタ自動車労働組合の公式サイト、「歩み」より[2]
  7. ^ 例外的に全懇と日本労働組合総評議会(総評)系の全国金属労働組合(現在のJAMの前身の一つ)にも加盟していたプリンス自動車の労働組合(全金プリンス自工支部)も、1966年に会社が日産と合併すると自動車労連に加盟し、やがて日産労組と統合した。ただし、同労組員のごく一部は独立の組合を維持し、現在は共産党との関係が深い全国労働組合総連合(全労連)系の日本金属製造情報通信労働組合(JMITU)の日産自動車支部として存続している。


「全日本自動車産業労働組合総連合会」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「全日本自動車産業労働組合総連合会」の関連用語

全日本自動車産業労働組合総連合会のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



全日本自動車産業労働組合総連合会のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの全日本自動車産業労働組合総連合会 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS