ボーイング747-8 機体の特徴

ボーイング747-8

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/03 04:06 UTC 版)

機体の特徴

巨大航空機4機種の比較図
ボーイング747-8(インターコンチネンタル)は青色。
赤色はエアバスA380-800
黄色はヒューズ H-4 ハーキュリーズ
緑色はAn-225 ムリーヤ
を示している
747-8のコックピット

ボーイング747-400の機体をもとに、胴体主翼の前後で計5.7m延長して収容力を増大させる。主翼は翼端をレイクド・ウィングチップに改良、エンジンボーイング787 で採用されたゼネラル・エレクトリック(GE)製 GEnx を装備する。

これらの改良によって、「-8IC」では3クラス467名を乗せて 14,815km(8,000海里)、-8Fで140トン貨物を積み8,275km(4,475海里)の航続距離を実現し、さらに将来の騒音、排気ガス規制に対応する。また、内装についても787の技術が適用され、同社の他の新世代の旅客機と見劣りしないデザインと装備を持った客室となる計画であるが、787のように湿気の影響を受けにくい新素材を多用していないことから、787の売りの一つである、地上に近い(在来機の5%程度に比べ、20%以上を確保される予定)客室の湿度維持は行われない。

エアバスA380への直接の対抗というよりは、キャパシティ的に777-300ER とA380の中間となる機体を目指している。ただし、改良が加えられるとはいえ、胴体は-400型と基本的に同一の構造である(胴体直径は同一の6.1m)。また主翼面積も増加し10%程度大きくなっているが、離着陸速度、滑走路長等の設備面は-400型が発着可能な空港であれば改修の必要は無く支障なく運用可能とされている[18]

主翼の設計が一新されたことにより、フライ・バイ・ワイヤが採用された。尾翼については-400のものを使用しているので、フライ・バイ・ワイヤではない[19]。操縦方式は-400と同様に操縦輪方式で、-400型の整備や操縦等のライセンスを有しているのであれば、短い時間の移行訓練により容易に移行可能で、-400型を保有する航空会社にとって後継機として考えるならば、ライバル機のエアバスA380を導入するより人件費等の諸経費軽減に繋がるメリットがある。

ボーイング777の長距離型でも見られたことだが、搭載エンジンの供給元がゼネラル・エレクトリック一社に限定されている。これはボーイングとGEとの利害が一致した結果であるとみなされている。すなわち、開発リスクを低減するために開発費をシェアする相手を求めていたボーイングが、GEによるエンジンの独占供給を交換条件に開発資金を出資させた、というものである。GEがグループ内にリースなどの金融部門を持っているがためにできた方策である。

2009年11月のロールアウトにより、当時は「世界最長」の民間航空機となった。これまで民間航空部門では、エアバスA340-600の75.3mが世界最長であったが、その記録を塗り替える形となった(ただし、「世界最大」の民間航空機はエアバス社のA380である)。しかし2019年3月13日、同社の新型双発機・ボーイング777-9がロールアウトしたことにより、世界最長の民間航空機は全長76.7mの同機となった。


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  25. ^ ブリティッシュ・エアウェイズの航空機は、ボーイング747-400型機にはRB211-524Hエンジン、ボーイング777-200ERにはTrent 895というように、ほとんどがロールス・ロイス製である
  26. ^ いずれも日本航空のみ
  27. ^ -9X全日本空輸のみ。なお、日本航空保有分の-200/-300は全機退役済み。
  28. ^ -10は全日本空輸のみ
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  52. ^ ボーイング747の貨物機型は前方から貨物を詰めるよう、機首にカーゴドアが設置されているが、A380の場合、機体の形状の都合で設置できない
  53. ^ ボーイング、747-8型フレイターの設計が50%完了
  54. ^ First Boeing 747-8 Freighter Leaves Paint Hangar
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  56. ^ このうちアトラス航空へ引き渡される予定だった1機は、後にサウディア・カーゴへ引き渡され、同社のHZ-AI3として登録された。(月刊エアライン2013 6月号 P87)
  57. ^ より性能の良い747-8Fを2011年10月に1機受領し、同年11月に2機を受領する予定
  58. ^ このうち2011年から2012年にかけてデリバリーされる最初の5機は、ブリティッシュ・エアウェイズACMI契約として利用される予定となっている
  59. ^ カーゴルクス、ようやくB747-8Fを受領へ
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