ボーイング747-8
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機体の特徴
ボーイング747-400の機体をもとに、胴体を主翼の前後で計5.7m延長して収容力を増大させる。主翼は翼端をレイクド・ウィングチップに改良、エンジンもボーイング787 で採用されたゼネラル・エレクトリック(GE)製 GEnx を装備する。
これらの改良によって、「-8IC」では3クラス467名を乗せて 14,815km(8,000海里)、-8Fで140トンの貨物を積み8,275km(4,475海里)の航続距離を実現し、さらに将来の騒音、排気ガス規制に対応する。また、内装についても787の技術が適用され、同社の他の新世代の旅客機と見劣りしないデザインと装備を持った客室となる計画であるが、787のように湿気の影響を受けにくい新素材を多用していないことから、787の売りの一つである、地上に近い(在来機の5%程度に比べ、20%以上を確保される予定)客室の湿度維持は行われない。
エアバスA380への直接の対抗というよりは、キャパシティ的に777-300ER とA380の中間となる機体を目指している。ただし、改良が加えられるとはいえ、胴体は-400型と基本的に同一の構造である(胴体直径は同一の6.1m)。また主翼面積も増加し10%程度大きくなっているが、離着陸速度、滑走路長等の設備面は-400型が発着可能な空港であれば改修の必要は無く支障なく運用可能とされている[18]。
主翼の設計が一新されたことにより、フライ・バイ・ワイヤが採用された。尾翼については-400のものを使用しているので、フライ・バイ・ワイヤではない[19]。操縦方式は-400と同様に操縦輪方式で、-400型の整備や操縦等のライセンスを有しているのであれば、短い時間の移行訓練により容易に移行可能で、-400型を保有する航空会社にとって後継機として考えるならば、ライバル機のエアバスA380を導入するより人件費等の諸経費軽減に繋がるメリットがある。
ボーイング777の長距離型でも見られたことだが、搭載エンジンの供給元がゼネラル・エレクトリック一社に限定されている。これはボーイングとGEとの利害が一致した結果であるとみなされている。すなわち、開発リスクを低減するために開発費をシェアする相手を求めていたボーイングが、GEによるエンジンの独占供給を交換条件に開発資金を出資させた、というものである。GEがグループ内にリースなどの金融部門を持っているがためにできた方策である。
2009年11月のロールアウトにより、当時は「世界最長」の民間航空機となった。これまで民間航空部門では、エアバスA340-600の75.3mが世界最長であったが、その記録を塗り替える形となった(ただし、「世界最大」の民間航空機はエアバス社のA380である)。しかし2019年3月13日、同社の新型双発機・ボーイング777-9がロールアウトしたことにより、世界最長の民間航空機は全長76.7mの同機となった。
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- ^ エアバスA380は、総2階建構造から専用搭乗ゲートを必要とする(例えば3口搭乗橋)、翼幅の関係からクリアランスに配慮する必要があるなどがある
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- ^ ボーイング747-8インターコンチネンタル、エアチャイナより5機を受注
- ^ “再送:ボーイングの大型旅客機を個人が発注、購入者めぐり憶測”. ロイター通信. (2011年6月24日)
- ^ ブリティッシュ・エアウェイズの航空機は、ボーイング747-400型機にはRB211-524Hエンジン、ボーイング777-200ERにはTrent 895というように、ほとんどがロールス・ロイス製である
- ^ いずれも日本航空のみ
- ^ -9Xは全日本空輸のみ。なお、日本航空保有分の-200/-300は全機退役済み。
- ^ -10は全日本空輸のみ
- ^ “全日空、エアバスなど大型機導入計画を凍結”. AFP BB News. (2008年12月19日)
- ^ “ANAグループ、5機種の機材発注を同時決定”. ANAホールディングス. (2014年3月27日)
- ^ ボーイング747-8インターコンチネンタル、胴体部分の結合を完了
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- ^ ボーイング747-8インターコンチネンタル:初号機をルフトハンザにデリバリー(日本語)
- ^ Lufthansa Boeing747-8
- ^ 量産1500機目となった機体には、L5/R5ドアの前に「Congraturations! BOEING 747 1500th」の塗装が施された
- ^ “747-8 Site”. Boeing. 2018年8月18日閲覧。
- ^ “Qatari emir gifts Turkey's Erdogan luxurious Boeing 747-8 jet - Xinhua - English.news.cn”. www.xinhuanet.com. 2019年2月9日閲覧。
- ^ “Mystery buyer orders Greenpoint Aerolofts for VIP Boeing 747-8” (英語). Puget Sound Business Journal. (2018年3月25日)
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- ^ “韓国大統領専用機交代へ 約260億円で5年間賃借契約”. 聯合ニュース (2020年5月29日). 2020年5月29日閲覧。
- ^ ボーイング式747-8F型航空機に対する型式証明書の交付について, 国土交通省
- ^ ボーイング747の貨物機型は前方から貨物を詰めるよう、機首にカーゴドアが設置されているが、A380の場合、機体の形状の都合で設置できない
- ^ ボーイング、747-8型フレイターの設計が50%完了
- ^ First Boeing 747-8 Freighter Leaves Paint Hangar
- ^ Boeing 747-8 Freighter Successfully Completes First Flight
- ^ このうちアトラス航空へ引き渡される予定だった1機は、後にサウディア・カーゴへ引き渡され、同社のHZ-AI3として登録された。(月刊エアライン2013 6月号 P87)
- ^ より性能の良い747-8Fを2011年10月に1機受領し、同年11月に2機を受領する予定
- ^ このうち2011年から2012年にかけてデリバリーされる最初の5機は、ブリティッシュ・エアウェイズへACMI契約として利用される予定となっている
- ^ カーゴルクス、ようやくB747-8Fを受領へ
- ^ Boeing Celebrates 747-8 Freighter Delivery with Atlas Air and British Airways
- ^ “NCA、747-8Fを4機キャンセル 2機は受領待ち”. Aviation Wire. (2015年9月8日)
- ^ “NCAの747-8F、残り2機もキャンセル 8機で完納”. Aviation Wire. (2017年3月30日)
- ^ “日本貨物航空、ボーイングと747-8Fの2機キャンセルで正式合意”. FlyTeam ニュース. (2017年3月24日)
- ^ “boeing.com”. Boeing. 2018年8月18日閲覧。
- ^ 当初は2011年度内に導入する予定であったが日本貨物航空側の都合により、2012年7月に初号機を受領した。なお、導入にあたっては新塗装となり「Nippon Cargo」のロゴが大きくなるほか、塗装パターンも変更される。(参考:イカロス出版『月刊エアライン』通巻394号 p18)
- ^ Characteristics
- ^ “747-8 Technical Characteristics(英文)”. Boeing. 2007年12月7日閲覧。
- ^ AF Identifies Boeing 747-8 platform for next Air Force One Published January 28, 2015
- ^ “米空軍、次期大統領専用機に元トランスアエロの747-8購入 新古機でコスト削減” (日本語). Aviation Wire 2018年7月28日閲覧。
- ^ Boeing Delivers Nippon Cargo Airlines' First 747-8 Freighter
- ^ 보잉코리아 소개
- ^ “韓国大統領専用機交代へ 約260億円で5年間賃借契約”. 聯合ニュース (2020年5月29日). 2022年1月17日閲覧。
固有名詞の分類
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