フィッシャー症候群 フィッシャー症候群の概要

フィッシャー症候群

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/01/03 05:37 UTC 版)

歴史

1956年Miller Fisherは急性に外眼筋麻痺、運動失調、腱反射消失を呈し、数週の経過で自然回復した3症例を報告した。先行感染、髄液蛋白細胞解離、単相性の経過からギラン・バレー症候群の亜型と位置づけることを提唱した。運動失調は臨床的に小脳性か深部感覚障害性かを判断することが困難であると記載したが腱反射消失の責任病変は反射弓を構成する部分の障害と推測し、全体像を末梢神経障害と考えた。以後、この三徴を呈する疾患はミラーフィッシャー症候群またはフィッシャー症候群と呼ばれるようになった。Miller Fisherが単一人であることからフィッシャー症候群と呼ばれることが多い。1992年chibaらによりFS患者の80~90%において血清ガングリオシドGQ1bIgG抗体が検出されることが報告されこの自己抗体が診断マーカーとして確立した。

病態

FSの三徴(外眼筋麻痺、運動失調、腱反射消失)をヒト神経系におけるGQ1bの局在により説明しようとする意見が強まりつつある。FS患者血清から高頻度にガングリオシドGQ1bIgG抗体が検出されることが報告され、さらに眼運動神経(動眼神経、外転神経、滑車神経)に傍絞輪部にはGQ1bが豊富に発現していることからGQ1b抗体が外眼筋麻痺に関与していると考えられている。さらに眼運動神経の中でもその神経終末にGQ1bの発現がより高いことも報告されており、障害部位に関しては神経幹の傍絞輪部に加えて末梢神経において血液神経関門を欠如する神経終末部も抗体介在性機序で障害されている可能性が指摘されている。

運動失調が小脳性か感覚入力障害性かも長い間議論がなされてきたが、まず本症候群では腱反射消失を伴うこと、および構音障害が認められないことは臨床的に小脳病変よりも感覚入力(特にグループⅠa求心線維)の方が考えやすい。これを支持する所見として2つの有力な報告がある。ひとつはヒト後根神経節の大型細胞にGQ1bが高発現していることが免疫組織学的に示されている。この細胞がグループⅠaニューロンであることはいまだ証明されていないが、一次感覚ニューロンの中で最も線維経が大きく、おそらく細胞体も大きいものはグループⅠaあるいは1b(ゴルジ腱器官からの入力)であることから、Ⅰaニューロンの障害がⅠa入力障害による運動失調と腱反射消失を惹起している可能性がある。また立位時の重心動揺のパワースペクトラム解析からFS患者における所見は小脳障害ではなく感覚入力障害のパターンを示すことが報告されている。ただし運動失調に中枢神経障害が関与している可能性を完全には否定はできない。

以上のような知見からヒト神経系においてGQ1b発現の高い眼運動神経とグループⅠaニューロンがGQ1b抗体により障害されて特徴的な三徴候を呈することが推定されている。

疫学

FSの発症率はGBS患者との比率で報告されてきた。FSとGBS年間発症率の比はイタリアでは両疾患合計の3%、台湾では19%、日本では34%と26%との報告があり日本を含む東アジアにおいて欧州よりもかなり頻度が高いと考えられている。日本の報告では男女比は2:1で男性優位で平均発症年齢は40歳であり地域差は確認されていない。


  1. ^ : pharygeal-cervical-brashial weakness


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