パソコン通信 通信料の問題

パソコン通信

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/30 17:24 UTC 版)

通信料の問題

公衆電話回線を使ってパソコン通信を楽しむネットワーカーにとって、悩みの種となって常についてまわったのは、その通信料の高さである[注釈 9]。料金は接続時間から算出される仕組みとなっていて、接続時間が長い利用者が毎月電話局から請求される請求書は、数万円にも上ることもあった[14]

通信速度が早ければ早いほど、通信料は安上がりになり、通信時間短縮で回線を他のユーザーのために空けておくことにもつながり、高速化は有効な対応策となった。具体的には、モデムの高速化、通信ソフトによるオートパイロット機能の活用、ISHなどのファイル圧縮変換プログラムの利用、利用者数が手薄になる深夜・早朝のアクセス時間帯での利用などが検討された[14]

日本でもさまざまな通信回線が提供されていたことから、通信料をより安く済ませるために通信回線を選択するという手法もあった。パケット通信網(NTTのDDX-TPなど)の利用は、電話回線より安価であったが、ほとんどは1200bpsまでの対応で通信の高速化には不利であった[15]。DDX-TPに対して、TYMPASやTri-Pなどの個人向けの付加価値通信網(VAN)サービスは2400bpsサポート、料金は時分性という点でファイル転送向きではあるが、アクセスポイントまでの電話料金はユーザー負担である点で、遠方のホスト局への接続に向かないデメリットもあった[15]。NTTに対抗した新電電(NCC)[注釈 10]はサービス地域に制限があったが、契約することにより通信料を安く済ます手段になった[16]

そもそも電話回線を使用ことで高額な通信料がかかったが、アマチュア無線免許の所持者どうしで、モデムの代わりにTNC(ターミナルノードコントローラ)を用意すれば、通信料は実質無料でコンタクトすることが可能であった[16]。全世界と通信することも可能で、電話回線よりも通信速度は遅く(短波(HF)帯: 300bps、HF帯以外: 1200bps)、法律上の問題から営利目的では使用できない、暗号は使用できない、電話回線と直接接続ができないなどの制限があったものの、その他の品質は電話回線とほとんど変わらないものであった[16]


注釈

  1. ^ 小規模な局は、2018年現在も運営されている[1]
  2. ^ AOLでは画像表示もできた。
  3. ^ ISDN回線内ではデジタル信号で送信するが、電話局の交換機でアナログ信号に変換する。
  4. ^ このモデムが内蔵されている業務用TAもあった
  5. ^ 個人がプログラムを組んだリバーシゲームやチェス等の物が主だった。
  6. ^ ちなみに同書によれば、1990年頃のモデムの価格は1200bpsが2万円以下、2400bpsが4万円台。
  7. ^ 個人で運営されているネットでは、電話回線が1本というところも多く、誰かがアクセスしていると、他のメンバーは回線を使用できなかった[8]
  8. ^ ただし、チャットに夢中になって時間を忘れて利用し続けていると、ネットの課金や電話料金が多額に請求されてしまうという問題もはらんでいた[3]
  9. ^ 日本の通信料金は決して安価ではなく、(NTTの場合)市内局番の通信料は3分ごとに10円かかり、市外局番でより遠方のアクセスポイントへ接続するとなれば、その距離に応じて現在よりもかなり高額な通信料金がかかる時代だった。
  10. ^ 第二電電日本テレコム日本高速通信があった。
  11. ^ みかかまきと読む。みかかは、NTTの隠語(みかか参照)。真紀は画像フォーマットのMAKIに由来する。

出典

  1. ^ パソコン通信“最後のホスト”「死ぬまで続ける」と語る理由、文春オンライン、2018年5月28日。
  2. ^ a b c d 多田太郎「まだネットワーキングしていない人のためのワープロ/パソコン通信入門」『マイコンBASICマガジン』1990年3月号, p. 44
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 多田太郎「まだネットワーキングしていない人のためのワープロ/パソコン通信入門」『マイコンBASICマガジン』1990年3月号, pp. 46–47
  4. ^ 小口, 覺「試行錯誤の通信システム」『パソコン通信開拓者伝説』小学館、1988年4月20日、96-100頁。ISBN 4-09-346041-8 
  5. ^ a b c d e f g 杉井, 鏡生「草の根ネットワークに始まるパソコン通信―ユーザー主導で、あっという間に10万人の利用者」『ザ・PCの系譜 : 100万人の謎を解く』コンピュータ・ニュース社、1988年2月17日、180-183頁。ISBN 4-8061-0316-0 
  6. ^ ピクニック企画, 堤大介, ed. (1 March 1990). "パソコン通信". 『電脳辞典 1990's パソコン用語のABC』. ピクニック企画. p. 182. ISBN 4-938659-00-X
  7. ^ ばるぼら『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』翔泳社、2005年、p.432
  8. ^ a b 多田太郎「まだネットワーキングしていない人のためのワープロ/パソコン通信入門」『マイコンBASICマガジン』1990年3月号, p. 46
  9. ^ 小林憲夫『ゼロから会員200万人を達成した ニフティサーブ成功の軌跡』コンピュータ・エージ社、1997年、p.49
  10. ^ 「PC-VAN、ニフティサーブ 2大ネットで3分の2」『中日新聞』1995年7月7日号。当時、商用パソコン通信サービス利用者は300万人でそのうち3分の2を両サービスが占めたという記事。
  11. ^ 小林、1997年、p.2
  12. ^ a b 多田太郎「まだネットワーキングしていない人のためのワープロ/パソコン通信入門」『マイコンBASICマガジン』1990年3月号, p. 45
  13. ^ a b c 多田太郎「まだネットワーキングしていない人のためのワープロ/パソコン通信入門」『マイコンBASICマガジン』1990年3月号, p. 43
  14. ^ a b 池田将「ワープロ/パソコン通信で電話代をとことん節約する方法」『マイコンBASICマガジン』1990年3月号, p. 50
  15. ^ a b 池田将「ワープロ/パソコン通信で電話代をとことん節約する方法」『マイコンBASICマガジン』1990年3月号, p. 51
  16. ^ a b c 池田将「ワープロ/パソコン通信で電話代をとことん節約する方法」『マイコンBASICマガジン』1990年3月号, p. 52
  17. ^ 電子フォーラム|プロバイダ ASAHIネット”. asahi-net.jp. 2019年6月6日閲覧。
  18. ^ FORSIGHTライブラリィ[1]より
  19. ^ 『ヒット商品物語』p.251 インターコム営業本部部長 米田守 (1988年当時)
  20. ^ a b c 安田幸弘『パソコン通信の常識読本』日本実業出版、1989年、64頁。 
  21. ^ a b c 長沢英夫 編『パソコンベストソフトカタログ』JICC出版局、1988年、155-157頁。 
  22. ^ a b c 「DataSheet-通信ソフト」、『ネットワーカーマガジン 1992年秋号』所収、アスキー、1992年10月、PP203-208。
  23. ^ 『ヒット商品物語』pp.250-251
  24. ^ 『ヒット商品物語』pp.252-254
  25. ^ または遊び全部。『ヒット商品物語』 pp.247-249, p.251
  26. ^ 『ヒット商品物語』 p.231
  27. ^ 東京電脳倶楽部『パソコンソフト徹底評価』1994年、134頁。ISBN 4-534-02244-1 
  28. ^ 『徹底評価』p.136
  29. ^ 東京電脳倶楽部『パソコンソフト徹底評価』1994年、142頁。ISBN 4-534-02244-1 
  30. ^ 東京電脳倶楽部『パソコンソフト徹底評価』1994年、138頁。ISBN 4-534-02244-1 
  31. ^ 『徹底評価』p.140
  32. ^ 川上弘美「受賞者のことば」より






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