ダイビング器材 アクセサリー

ダイビング器材

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/22 01:23 UTC 版)

アクセサリー

主要器材以外に安全性、利便性、快適性を向上させるために種々のアクセサリーが使用される。

計器類

残圧計

タンク内の利用可能な呼吸ガス量を把握するための圧力計である。

水深計

現在の水深を測定するための圧力計である。

ダイビングコンピューター

に参照。

時計型ダイビングコンピューター

減圧症への罹患を回避するため、水深の履歴から減圧停止の必要性、手順などを計算しダイバーに指示する電子機器である。略してダイコンともいう。その時々の環境圧から、ダイバーの身体組織に溶解・排泄される窒素量を計算し、窒素量が飽和、すなわち水面まで浮上した際に体内で気泡を発生する限界量に接近した場合に減圧停止の指示を発生する。溶解窒素量の計算モデルとしては、ビュールマン (Bühlmann) モデル、ハルダーン (Haldane) モデル、RGBMモデル、DCIEMモデル等の、いくつかのモデルが知られている。現在では、レギュレーターに接続し、その時々の空気消費量を計算する機能等の付加機能を有する製品も多くなってきている。

ダイビングコンピューターが使用されるようになる以前は、潜水深度として潜水中の最大深度のみを用い、ダイブ・テーブルと呼ばれる早見表を利用して潜水可能時間[注 8]を決定していた。しかしこの方法では、たとえ一瞬しか最大深度に滞在しない場合でも、ほとんどの時間その深度に滞在する場合と同じ潜水可能時間で浮上しなければならなくなる欠点があった[注 9]。ダイビングコンピューターの登場によって、無駄な余裕度を確保する必要がなくなり、比較的長時間の潜水を安全に実施できるようになった。

しかし、ダイブコンピューターが示す無減圧時間や減圧スケジュールは、あくまで計算上のシミュレーションであり、ユーザーの体内の窒素の増減を計っているわけではないので、過信は禁物である。例えばダイブコンピューターが「ここではあと5分潜れる」と伝えたとしても、本当はそのダイバーの限界をすでに越えてしまっている可能性は常にあるということである。減圧症を避けるためには表示されるデータを基に常に控えめな潜水を心がけることに尽きる。体調管理はいうに及ばない。もちろん、頻繁に減圧停止指示が出てしまう潜水など、もっての外である。

コンパス

水中で方向を把握するための方位磁針である。大半はアナログであるが、デジタルコンパスも少数存在する。

コンソール

従来は、上述の各計器類を全て個別に携行していたが、現在では、コンソールと呼ばれる、これらの計器の2つ以上を一つの筐体にまとめたものがよく使用される。 水深計、残圧計、コンパスが一体となったタイプを一般的に3ゲージ、水深計が無いタイプを2ゲージと呼び、21世紀初期にはダイビングコンピューターの普及により、2ゲージコンソールを持つダイバーが多くなった。

ナイフ

ダイビング用のナイフ。ベルトで足首などに装着する。鞘の緑色の部品がリリースボタンである。

水中ではロープ海草などに絡まるなどして動けなくなる事故は、空気残量の問題から生命に関わる。この緊急時における脱出手段を提供するのがダイバーズナイフ(水中ナイフ、ダイビングナイフとも)である。サメなどの水中生物と戦うための武器と勘違いされることもあるが誤りで、あくまで作業用ナイフとしての位置づけである。

ダイビング用のナイフには、峰側にロープ等の切断に便利な波状の刃と釣り糸等の切断に便利なラインカッターが付いている製品が多い。鋼鉄製の刃物に比べると切れ味は劣るが、海中でも錆びにくいステンレスチタニウムプラスチック等からできている。鋭い切れ味よりも道具としての強度が求められるため、厚い刀身を備える製品が多い。手袋をしたままでも扱い易いよう、ワンタッチで鞘から抜けるが、潜る際には天地逆さとなる場合もあるので、ひっくり返っても鞘から抜け落ちないよう、一定の脱着機構を持つ。プロユースの物では、ウェイトの機能を果たすように真鍮製の鞘を持つ物もある。

緊急脱出以外にも、レジャーダイビングで行われる場合がある「フィーディング」と呼ばれる魚の餌付けに際し、その餌を切り分ける際にも利用される。 他の用途として、一緒に潜水中の仲間に何かを伝える際にボディランゲージやボードによる筆談を行うが、これらは相手がこちらを見ている時以外は意思を伝えることが出来ない。このため相手の注意を喚起するためにタンクや石を叩いて音を出すために、その道具としてナイフの柄の部分が利用されることがある。ダイビングナイフの多くではその用途に向くよう、柄に金属が露出した部分が設けられている。毒を持つ・噛み付くなど素手で触ると危険な生物を指し示す際にも利用される。ただしこれらの目的に対しては、ナイフの代わりに、ダイビング専用の指し棒(指示棒)が使用されることも多くなっている。

21世紀初期におけるレジャー目的のグループダイビングでは、仲間やインストラクターの誰か一人が一本持っていれば事足りるとして、必ずしもナイフを携行せずに潜水することも多い。業務としてスクーバ等の呼吸装置を用いた潜水を行わせる事業者は、潜水作業者に鋭利な刃物を携行させなければならないことが、厚生労働省の定める高気圧作業安全衛生規則(第三十七条)に定められており、違反した場合には労働安全衛生法(第百十九条)により処罰の対象になる。

ホイッスル

水面上での合図用。多くはBCの顔面に近い位置に装着される。

撮影器具

一眼ハウジング

通常のカメラは、水中では内部に浸水してしまい使うことができない。この問題を解決するため、本体に防水性を持たせた水中カメラや、「防水ハウジング」と呼ばれる、カメラを収納し外部からの操作を可能にした専用防水ケースが用いられる。かつて水中カメラや防水ハウジングは高価であり、これらを使用するダイバーも限られていたが、最近ではデジタルカメラ用の防水ハウジングが比較的安価に入手できるようになったことから、多くのレクリエーショナルダイバーが水中撮影を行うようになっている。

防水ハウジングはコンパクトデジタルカメラ用、ミラーレス一眼用、一眼レフ用に大別され、価格と大きさもおおむねその順である。

ただし水中では、光の減衰率が特に長波長(赤色寄り)において高く、良質な写真を撮影するには光量を確保するための外部光源などが必要になる。外部光源とは外付けのストロボや、強力かつ均一な光を放つ撮影用ライトを指す。

フロート

万一の漂流に備え、ダイバーにはシグナルフロートの携帯が強く勧められる。ダイバーに特に人気の高いパラオでは法律で携帯が義務付けられている。 普段はBCDのポケットに入れておいて、万一の際には膨らませて海上の自分を見つけてもらうための、文字通りシグナルとして用いる。

マーカー・ブイ

マーカー・ブイ(: marker buoy)。水上の船舶から水中のダイバーを発見することは非常に困難であり、船舶が航行する水域で潜水する場合には、事故(船体と衝突する、スクリューに巻き込まれる、水流で巻き上げられる)防止のために潜水中を示す標識を水上に設置する必要がある。国によっては(北欧等)、船舶の航行の有無にかかわらず潜水標識の設置を法律で義務付けている場合もある。

水中ライト

水中で使用できるよう防水構造になっているライト。水中では光の減衰率が大きいため、陸上で用いるライトよりも強力なライトが必要となる。光源の種類は様々で、強力な物だとHIDが、手軽な物としてはキセノン球、ハロゲン球、クリプトン球がある。前者は撮影用ライトなどに使われる。現在ではLEDライトが主流となっている。

水中ノート・スレート

水中ノートには耐水紙が使われ、元々ある程度のページ数があり、増やすことも可能なので大量の記録が可能である。 水中スレートとは一般的に艶消しの白い下敷き状の薄い板で、水中ノート同様、鉛筆で記入する。 21世紀初期の日本では、マグネットを利用したお絵かきボードを持つダイバーも多い。細かい書き込みはできないが、瞬時に消せるため、コミュニケーションツールとして非常に有効。 ほとんどのガイドダイバーがゲストへの説明用ツールとして使っている。

撮影器具や水中ライトなどの精密・電気(電子)機器は、水に対して弱い性質のものであるため防水構造とする必要がある。防水は主にOリングなどのガスケットを用いて行われるが、機器が複雑・精密になればなるほど少量の浸水も許容されない(本質的な許容量のみならず、浸水により破損した際の経済的ダメージも大きい)ため、より高度な防水構造を備えざるを得ず、機器自体の価格も相俟って非常に高価なものになる傾向がある。 1万円前後の水中ライトや2万円程度のハウジング(コンパクトデジタルカメラ用)から50万円を越えるハウジング(一部の一眼レフ用)や一部の高性能ライトが市場に混在しているのが現状である。


注釈

  1. ^ 「イクイットメント」など他の音写形も無いわけではない。
  2. ^ キーワード検索[ ダイビング 3点セット ]。なお、例外もある。
  3. ^ キーワード検索[ ダイビング 軽器材 ]
  4. ^ 日本語と同じ漢字文化圏でも、中国語では「足 + (みずかき)」の意で「脚蹼」という。
  5. ^ 水泳バタフライ泳法で行う「ドルフィンキック」は、両脚を揃えて足の甲で水を上下に打つキック泳法であり、本文で論旨としている「水中における(脚の)上下運動」を人体のみで行っていることになる。
  6. ^ 現在の専門家および専門業者は「スクーバ」を正式名称と定め、「スキューバ」を用いないことから、「スキューバセット」という用語は目にしない。
  7. ^ 高圧ガス保安協会等の公的機関では高圧ガス容器と呼んでいる。
  8. ^ 減圧の手順を決定できる減圧表と呼ばれる早見表も存在するが、レクリエーショナルダイビングにおいては通常、減圧を実施しなければならない潜水は行わない前提としている。
  9. ^ ダイブ・テーブルの元来の作成目的であった作業ダイビングにおいては、できる限り短時間で作業深度まで到達し、浮上も同様に行うため、潜水時間と最大深度への滞在時間はほぼ同一であり、ダイブ・テーブルを用いて潜水計画を立ててもあまり問題はなかった。

出典

  1. ^ equipment”. 英辞郎 on the WEB. アルク. 2020年4月16日閲覧。





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