ゼータ函数正規化 ゼータ函数正規化の概要

ゼータ函数正規化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/08/14 13:53 UTC 版)

定義

発散する可能性を持つ級数 a1 + a2 + .... の和を定義するのに、ゼータ函数正規化と呼ばれる和を取る方法がいくつかある。

一つの方法として、(無限級数の)ゼータ正規化された和を、ζA(−1) が定義できるならばその値で定義する.ここで、ゼータ函数は、Re(s) が大きな数に対して次の和が収束するならばその値で定義し、そうでない(発散する)場合は解析接続することで定義する。

an = n の場合には、このゼータ函数は通常のリーマンゼータ函数となり、この方法はオイラーによって級数 1+2+3+4+… の「和」を ζ(−1) = −1/12 として求めることに使われた。他の s の値に対しても、発散する和を ζ(0)=1 + 1 + 1 + 1 + ... = -1/2, ζ(-2)=1 + 4 + 9 + ... = 0 と計算でき、一般的な場合は、Bkベルヌーイ数(Bernoulli number)として、

と表すことができる[1]

Hawking (1977) は平坦な空間の場合には、その場合はラプラシアン固有値が知られている場合が多いが、分配函数に対応するゼータ函数が明確に計算できることを示した。温度 T=β-1 の平坦な時空で体積 V を持つ大きな箱の中のスカラー場 φ を考える。分配函数は、箱の端ではゼロとなり、τ について周期 β である、τ=it という変換をして得られるユークリッド空間の上のすべての場 φ を渡る経路積分によって得られる。この状況下では、彼は分配函数から場 φ の輻射のエネルギー、エントロピーと圧力を計算した。平坦な空間の場合は、物理量に現れる固有値が一般には知られているが、一方、曲がった空間ではいつも一般的に知られているとは限らない.従って、漸近的な方法が(問題を解くために)必要である。

別な方法としては、発散する可能性のある無限積 a1a2.... を、 として定義する方法がある。Ray & Singer (1971) ではこの方法を使い、正の値を固有値 a1, a2, ...., として持つ自己随伴作用素行列式を定義することに使われた。(これのリーマン多様体への応用としてはラプラシアンとなる。)また、この場合にはゼータ函数は、形式的に A−s のトレースとなる。Minakshisundaram & Pleijel (1949) は、もし A がコンパクトリーマン多様体のラプラシアンであれば、ここで定義したゼータ函数であるミナクシサンドラム-プレイジェルゼータ函数は収束し、全複素平面へ有理型函数として解析接続されることを示した。セーレイ Seeley (1967) はこの事実をコンパクトリーマン多様体上の A の楕円型微分作用素へ拡張した。従って、そのような作用素に対しゼータ函数正規化を使い、行列式を定義することができる。解析的トーションを参照。

Hawking (1977) はこのアイデアを使い、曲がった時空での経路積分を評価できることを示唆した。彼がゼータ函数を研究したのは、逆メリン変換を使い、曲がった時空であるブラックホールの地平線上やドジッター時空という背景場での熱力学的な重力や量子化された物質の分配函数を、熱方程式の核のトレースへ関係させることで計算するためであった。

ゼータ函数正規化が有効な最初の例は、カシミール効果に現れる。カシミール効果は、3次元の空間の中の量子場のバルクの寄与を持つ平坦な空間である.この場合にはリーマンゼータ函数の -3 での値を計算せねばならない。-3 での値は明らかに発散する。しかし、s = -3 は極ではないと期待されるが、s = -3 まで解析接続することにより、有限な値が得られる。この正規化の詳細な例は、ゼータ正規化によるカシミール効果の導出に詳細な記事があり、そこで結果として出てくる和が明らかにリーマンゼータ函数となっている。(そして、解析接続は出てきた無限を取り去り、物理的に意味のある有限な値を導く)

ゼータ函数正規化の別の例は、場の量子論での粒子の場のエネルギー真空期待値の計算である。より一般的には、ゼータ函数のアプローチは、曲がった時空での全体のエネルギー・運動量テンソルを正規化することに使われる。[1] [2]

エネルギーの正規化していない値は、次の式のように真空の励起の全てのモードのゼロ点エネルギーを渡る和を取ることで得られる:

ここに、 はエネルギー運動量テンソルの第ゼロ成分で、和(積分かもしれないが)は、全て(正と負の)エネルギーモード を渡っているものと解釈する;ここの絶対値はエネルギーは正の値のみとることを想起させる.上記のように書かれた和は普通は無限大となる( は典型的には n について線型).和は次のように書くことで物理学の正規化英語版とできる。

ここで s は複素数のパラメータで、(3次元の場合には)4より大きな実数 s に対し、和は明らかに有限で、しばしば理論的に評価できる.

ゼータ正規化は、物理系の様々な対称性が保存される場合に使うことができるので、有益である.カシミール効果に加えて、ゼータ函数正規化は、共形場理論繰り込み弦理論の臨界時空次元を固定するときに使われる。




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