汎函数行列式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/21 13:14 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動井戸型ポテンシャル
井戸型ポテンシャルの中の量子力学的粒子の運動を記述する次の式で定義される汎函数行列式の計算をしよう。
ここに A はポテンシャルの深さで L は井戸の幅とする。作用素を対角化し固有値を掛け合わせることで、行列式を計算しよう。そこで、あって欲しくない発散定数に悩まされないためには、深さ A の作用素と深さ A = 0 の作用素との間で割り算をし、商を計算しよう。このポテンシャルの固有値は
に等しい。
このことは
であることを意味する。さて、正弦函数のオイラーの無限積を使い
となり、このことから同様な双曲正弦函数を導くことができる。
これを適用して、次のことが分かる。
他の作用素の行列式を計算する方法
1-次元のポテンシャルでは、汎函数行列式の形を少し変える変形が存在する。[5]それは次の表現を考えることにベースがある。
ここに m は複素数の定数で、この表現は m の有理型函数で、m がポテンシャル V1(x) を持つ作用素の固有値に等しいときにはゼロ点を持ち、V2(x) を持つ作用素の固有値の時には極を持つ。ここで、次の方程式を満たす函数 ψm1 と ψm2 を考える。
また、この函数は次の境界条件を満たすとする。
もし、函数
で、m の有理型函数となっているものを考えると、計算しようとしている行列式の商として同じ極とゼロ点を持っていることがわかる。もし m が作用素番号1の固有値であれば ψm1(x) は ψm1(L) = 0 を意味する固有値であり、分母に対しても同じことが言える。リウヴィルの定理によって2つの同じ極とゼロ点をもつ有理型函数は互いに比例関係にあるはずである。今の場合は、比例定数は1であることが判明しているので、m のすべての値に対して
を得る。m = 0 に対しては、
を得る。
井戸型ポテンシャルの再検討
前節の問題は、この定式化をさらに簡単に解くことができる。函数 ψ0i(x) は次の関係式に従う。
さらに、次の解を与える。
このことは次の最終的な表現を与える。
脚注
- ^ (Branson 1993); (Osgood, Phillips & Sarnak 1988)
- ^ See Osgood, Phillips & Sarnak (1988)さらにスペクトル函数の項の一般的な定義は、Hörmander (1968)、Shubin (1987).
- ^ 一般化されたラプラス作用素の場合は、ゼロでの正規化と同様である。Berline, Getzler & Vergne (2004, Proposition 9.35)を参照のこと。楕円型擬微分作用素についての一般的な場合は、Seeley (1967)を参照のこと。
- ^ フルビッツゼータ函数(Hurwitz zeta function)は、発見者のAdolf Hurwitzから名前をとっているゼータ函数の一種である。Re(s) > 1 であり Re(q) > 0 となる複素変数 q に対し形式的に次の式で定義される。
- ^ S. Coleman, The uses of instantons, Int. School of Subnuclear Physics, (Erice, 1977)
参考文献
- Berline, Nicole; Getzler, Ezra; Vergne, Michèle (2004), Heat Kernels and Dirac Operators, ISBN 978-3-540-20062-8
- Branson, Thomas P. (2007), “Q-curvature, spectral invariants, and representation theory”, SIGMA. Symmetry, Integrability and Geometry. Methods and Applications 3: Paper 090, 31, ISSN 1815-0659, MR2366932
- Branson, Thomas P. (1993), The functional determinant, Lecture Notes Series, 4, Seoul: Seoul National University Research Institute of Mathematics Global Analysis Research Center, MR1325463
- Hörmander, Lars (1968), “The spectral function of an elliptic operator”, Acta Mathematica 121: 193-218, doi:10.1007/BF02391913, ISSN 0001-5962, MR0609014
- Osgood, B.; Phillips, R.; Sarnak, Peter (1988), “Extremals of determinants of Laplacians”, Journal of Functional Analysis 80 (1): 148-211, doi:10.1016/0022-1236(88)90070-5, ISSN 0022-1236, MR960228
- Ray, D. B.; Singer, I. M. (1971), “R-torsion and the Laplacian on Riemannian manifolds”, Advances in Math. 7 (2): 145-210, doi:10.1016/0001-8708(71)90045-4, MR0295381
- Seeley, R. T. (1967), “Complex powers of an elliptic operator”, Singular Integrals (Proc. Sympos. Pure Math., Chicago, Ill., 1966), Providence, R.I.: American Mathematical Society, pp. 288-307, MR0237943
- Shubin, M. A. (1987), Pseudodifferential operators and spectral theory, Springer Series in Soviet Mathematics, Berlin, New York: Springer-Verlag, ISBN 978-3-540-13621-7, MR883081