コーポレート・ガバナンス
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コーポレート・ガバナンスの方法
エージェンシー理論によれば、株主が経営者の非倫理的又は非効率的な行動を抑止するためには、株主と経営者との間の利害を一致させるか、両者の情報の非対称性を緩和する必要がある。このうち、情報の非対称性の緩和は、主に企業会計(財務会計)の課題であり、コーポレート・ガバナンスの対象は、主に株主と経営者との利害の一致に向けられる。その方法は、次のように分類される[18]。
- 株主が何らかの制度を利用して経営者を統治する方法(モニタリング・システム)
- 組織型コーポレート・ガバナンス
- 市場型コーポレート・ガバナンス
- 経営者にインセンティブを与え、自己統治させる方法(インセンティブ・システム)
組織型コーポレート・ガバナンス
組織型コーポレート・ガバナンスは、トップ・マネジメント組織を通じたガバナンスの方法である。
株主は、株主総会で、株主の利益に沿わない経営者を解任し、新たな経営者を選任することができる。
また、取締役等の経営者は会社に対して注意義務・忠実義務を負っており、それに反して会社に損害を与えた場合には会社に対し損害賠償義務を負う。そして、株主が、会社に代わって取締役等に対して損害賠償請求をすることができる制度を、株主代表訴訟という。株主代表訴訟の脅威は、取締役等に取締役会で真剣な議論をさせるという圧力を生み出しているとされる[19]
市場型コーポレート・ガバナンス
市場型コーポレート・ガバナンスとは、証券市場(株式市場)を通じたガバナンスである。
経営者の経営成績が悪く、利益を生まない場合には、市場で株式を売却する株主が増え、株価が下落・低迷する。株価が低迷すれば、新株発行(増資)による資金調達が困難になるとともに、株価の下落は信用の低下を意味するので、借入れによる資金調達も難しくなる。したがって、株価の下落は、経営者に対し、株主の利益に反する行動を控えさせるプレッシャーを与える[20]。
それでも経営者が経営を改めない場合、企業買収 (M&A) の脅威がコーポレート・ガバナンスの上で大きな役割を果たすことになる。
インセンティブの付与
経営者にインセンティブを与える制度としては、ストック・オプションがある。これは、経営者に対する報酬として、一定の価格で一定数の自社株を購入できる新株予約権を与えるというものであり、経営者が常に株価を高めるような経営を行うことを狙ったものである[21]。
しかし、エンロン事件やワールドコム事件に見られるように、ストック・オプションは、むしろ不正な会計処理による株価維持・株価つり上げを助長しているとも指摘されている[22]。
注釈
- ^ 例えば西ドイツの製造業の場合、1980年代のデータによれば、負債比率がおおむね70%前後、自己資本比率は30%前後であった。菊澤 (2004: 55)。原出典:日本銀行『国際比較統計1992』。
- ^ 1996年には、ドイツ(統一後)の製造業における自己資本比率は50.4%、負債比率は49.6%である。菊澤 (2004: 61)。原出典:日本銀行『国際比較統計1999』。
- ^ 住友銀行のイトマンに対する不正融資(1990年)、富士銀行などでのニセ証書事件、日本興業銀行から尾上縫に対する巨額融資、東洋信用金庫の巨額ニセ預金証書発行事件(1991年)などが明らかになった。田村 (2002: 10)。
- ^ 日本合成化学、不二越と総会屋の癒着(1990年)、4大証券会社、平和堂(1991年)、髙島屋(1996年)、味の素、旧第一勧業銀行、松坂屋、日立、東芝、三菱地所(1997年)、旭硝子、日本航空(1998年)などの総会屋への利益供与が発覚した。菊澤 (2004: 30-31)。
- ^ 日東あられ、マクロスの粉飾経理事件(1991年)、アイペックの粉飾経理事件(1992年)、二信組事件(1995年)、三田工業の粉飾経理(1998年)などが発覚した。菊澤 (2004: 31)。
出典
- ^ “コトバンク - 出典 株式公開支援専門会社(株)イーコンサルタント株式公開用語辞典について、株式会社ストライクM&A用語集について”. 2019年10月4日閲覧。
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- ^ “【日本】金融庁と東証、コーポレートガバナンス・コードの適用を正式決定”. Sustainable Japan (2015年3月8日). 2015年3月9日閲覧。
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