ケミカルタンカー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/23 01:36 UTC 版)
海運用海ケミカルタンカーは、通常載貨重量トンにして5,000 トンから40,000 トンほどで、これは特定の積み荷に特化しているという船の性質や、荷役のために寄港するターミナルの大きさの制約などの理由により、他の種類のタンカーの平均的な大きさよりかなり小さなものとなっている。
ケミカルタンカーは通常、いくつかに分けられたタンクを持ち、それぞれはフェノールエポキシ樹脂や亜鉛ペイントなど特別なコーティングがされていたり、ステンレス鋼で造られていたりする。コーティングやタンクの材質によって、そのタンクが運ぶことができる積み荷の種類が決定される。硫酸やリン酸などの強い酸の積み荷にはステンレス鋼のタンクが必要とされる一方で、より単純な積み荷、植物油などはエポキシ樹脂コーティングのタンクで運ぶことができる。
ケミカルタンカーは、特定の積み荷の粘度を保つためにタンクを暖める装置を持っていることがある。典型的にはこのシステムは、積み荷のタンクの中にステンレス鋼の加熱管が通されていて、圧力の掛かった蒸気をここに送り出すボイラーがある。これにより熱が積み荷に伝わり、対流によりタンク内で循環する。多くの現代のケミカルタンカーは二重船体構造を特徴としており、タンクそれぞれにポンプがあり、独立したパイプ系統がつながっている。これは、各タンクに別な積み荷を積んで、互いに混じり合うようなことが無く運べることを意味する。積み荷を降ろした後のタンクのクリーニングはケミカルタンカーの運航ではとても重要なもので、これは適切に洗浄されなかったタンクの残留物が次の積み荷の純度に悪影響を与えることがあるからである。タンクをクリーニングする前には、タンクが適切に換気され、爆発性の気体が溜まっていないことを確認することがとても重要である。
ほとんどの新しいケミカルタンカーは日本、大韓民国、中華人民共和国の造船所で建造されており、他の建造国としてはトルコ、イタリア、ドイツ、ポーランドがある。
ケミカルタンカーによる輸送市場は様々な船会社の間で競争が行われており、ストルトニールセン (Stolt-Nielsen)、オドフェル (Odfjell)、MOL Chemical Tanker、飯野海運、Navig8、Fairfield Chemical Carrier、Hansa Tanker、Womar、興洋海運、MTMMなどである。最終的な船の使用者である荷主は、石油メジャーや化学専門企業、総合商社のケミカルトレーディング部門、独立系のケミカルトレーダーなどである。
ケミカルタンカーの貨物運送契約するために、多くの荷主は最も安い借り賃を得るために専門のブローカーを利用する。また近年多くの海運会社のウェブサイトも充実してきたので、船会社のウェブサイト経由で荷主と船会社がブローカーを挟まずに契約する事も増えている。
- ^ (月岡 1994, pp. 125–127)
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- ^ 日本鋼管「二塩化エチレン運搬ケミカルタンカー“FORMOSA ONE”&“FORMOSA TWO” (PDF) 」 『船の科学』第34巻第11号、船舶技術協会、1981年11月10日、 36-45頁、2020年10月11日閲覧。
- ^ (月岡 1994, pp. 135–136)
- 1 ケミカルタンカーとは
- 2 ケミカルタンカーの概要
- 3 専用船の種類
- 4 参考文献
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