2001年以降の状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/14 09:27 UTC 版)
新作テレビ時代劇の制作は減少傾向が続き(現状については(#主なテレビ時代劇放送枠の各項目などを参照)、2011年12月19日、長らく月曜夜8時の時代劇として親しまれてきた『水戸黄門』(TBS系)が最終回スペシャルを迎え、42年の歴史に幕を閉じるという出来事があった。時代劇存亡の危機が囁かれる中、デジタル放送の普及が本格化した2010年代からは、地上波よりもシニア層の視聴者が多いとされるBSデジタル・CS放送などで時代劇の放送が増加。既存作品の再放送が多いものの、後述するように新作の放送数も増えている。 地上波民放では、翌年(2012年)3月にテレビ東京で深夜帯に1クール放送された『逃亡者おりん2』の放送終了後、2012年10月からTBS系で放送の『金曜ドラマ・大奥〜誕生[有功・家光篇]』まで半年間、新作テレビ時代劇のレギュラー放送が途絶えた。2014年には、フジテレビが開局55周年プロジェクトの一つとして、月9枠で初の時代劇作品『信長協奏曲』を放送し、2016年には映画化された。地上波民放でレギュラー放送された新作テレビ時代劇は2018年現在、2016年10-12月にテレビ東京が金曜日20時枠に『石川五右衛門』を放送したのが最後である。また、2010年代中盤以降はHuluやNetflixに代表される動画ストリーミングサービスが多数登場しているが、過去作品の配信は少なく、サイトオリジナルの時代劇は現時点で制作されていない。 一方、1997年に、東映の岡田茂とC.A.Lの加地隆雄を中心に「時代劇コンテンツ推進協議会」が立ち上がり、時代劇専門チャンネルでの放送などで、時代劇の維持と再発展を目指してきたCS放送では、スカパー!で日本映画衛星放送(現・日本映画放送)と共同で、2011年の正月にCS初の完全新作時代劇・『鬼平外伝 夜兎の角右衛門』が放送されて好評を博したことにより、2012年2月には企画第2弾となる『鬼平外伝 熊五郎の顔』を放映した。以降も年に1~2作ペースで新作を制作・放送している。 BSデジタル放送では当初NHKでの新作放送が中心だったが、2015年中盤以降、WOWOWを除くBS民放でも単発やレギュラー放送の新作時代劇が制作・放送されており、前述の水戸黄門も2017年にBS-TBSでキャスティングを改めた新シリーズが放送された。 他方、2000年代中期から2010年代以降、往年とは及ぶべくもないが時代劇映画の製作・公開が微増傾向にあり、新作時代劇はテレビから映画へと再びシフトしつつある。2010年には映画会社5社による共同企画“サムライ・シネマ キャンペーン”が行われ、同年同時期に公開される5作品(『十三人の刺客』『桜田門外ノ変』『雷桜』『武士の家計簿』『最後の忠臣蔵』)が連携してプロモーションキャンペーンを実施した。 なお、本稿ではもっぱら実写時代劇を扱っているが,日本では古くから時代劇アニメも多数制作されている。映像表現やロケ地等の制約がなく、若年層への訴求力が期待できるとあって、近年はアニメによる時代劇の制作がむしろ盛んである。また『鬼平犯科帳』『仕掛人 藤枝梅安』の漫画版を看板とした時代劇漫画専門誌(『コミック乱』・『コミック乱ツインズ』)がリイド社の軸となるなど2000年代に入ってからは安定した人気を保っている。 また、製作関係者からは日本独自の映像文化や技術が途絶えるとの危機感や現場における製作技術の維持継承の観点から、東映京都撮影所の契約社員組合などで作られた「時代劇復興委員会」が立ち上げられ、有名ではない時代劇俳優(いわゆる“大部屋俳優”)たちは太秦映画村で殺陣アトラクションを行ったりするなど、様々な方法で時代劇生存の道を探っている。 2020年代から、グリーンバックステージで人物を撮影しリアルタイムで人物とCG背景・美術をVFX合成する「バーチャルプロダクション」技術が発達しているが、東映太秦・松竹京都が京都府の支援で、時代劇のバーチャルプロダクション化の研究を始めている。歴史建造物や風景を3Dデータ化してVFX撮影に生かすことで建物の経年劣化消滅や撮影プロセスの問題を克服するための試みとなっている。
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