財産権の制限(29条2項)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/08 21:09 UTC 版)
「財産権」の記事における「財産権の制限(29条2項)」の解説
日本国憲法第29条第2項により、財産権は公共の福祉の制約を受ける(第29条第2項)。最高裁は森林法違憲判決で第29条第2項について「社会全体の利益を考慮して財産権に対し制約を加える必要性が増大するに至ったため、立法府は公共の福祉に適合する限り財産権について規制を加えることができる、としているのである。」と判示している(最判昭和62年4月22日民集第41巻3号408頁)。 財産権の規制には、内在的制約と政策的制約あるいは消極的目的の規制と積極的目的の規制のように二重の基準がある。 内在的規制 - 他者の生命・財産を守る消極目的による当然に受忍されるべき規制相隣関係(民法第209条等)、食品の販売・管理(食品衛生法等)、災害予防(消防法、宅地造成等規制法等) 政策的規制 - 社会政策・経済政策上の積極目的による規制私的独占の禁止・不正な取引の禁止(独占禁止法等)、地主・家主の財産権の制限(借地借家法) 財産権の内容の規制の形式について憲法第29条第2項は「法律でこれを定める」としており命令による規制はできない。論点となるのは地方公共団体の自主立法である条例による規制である。憲法第29条第2項の文言や財産権が全国的な取引の対象となりうるものであることから、法律による委任がない限り条例による規制はできないとする否定説もある。しかし、多数説は肯定説に立ち、条例は地方議会という民主的基盤に立って制定されるもので法律と実質的には差異がなく、地方的な事情により地方公共団体が財産権を規制することが適切な場合にまで憲法が条例による規制を否定しているとはいえないとする。判例では、最高裁が奈良県ため池条例事件で「ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法でも、民法でも適法な財産権の行使として保障されていないものであって、憲法、民法の保障する財産権の行使の埒外にある」とし「事柄によっては、特定または若干の地方公共団体の特殊な事情により、国において法律で一律に定めることが困難または不適当なことがあり、その地方公共団体ごとに、その条例で定めることが、容易且つ適切なことがある。」として条例による規制について肯定説をとっている(最大判昭和38年6月26日刑集第17巻5号521頁)。
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