箸
三度栗の伝説 神功皇后が三韓征伐においでになる途中、鳥取の海田でお休みになった。土地の人が、米の粉で作った団子に、勝栗の枝で作った箸をそえて差し上げた。神功皇后は「我が軍は勝利に決まった」とお喜びになり、「海田の勝栗よ。来年からは1年に3度実れ」とおっしゃって、箸を土にさして出発された。箸は芽を吹いて立派な木となり、年に3度実をつけた(鳥取県倉吉市)。
『日本の伝説』(柳田国男)「御箸成長」 地面にさした箸が成長して大木になった、との話が方々にある。東京・向島の吾妻神社の脇にある相生の松(根もとから4尺ほどの所から2股に分かれている)も、その1つだ。昔、日本武尊がここで弟橘姫を祭り、楠の箸を土の上に立てて、「末代天下泰平ならば、この箸2本とも茂り栄えよ」と仰せられた。すると箸が根づいて、現在のような大木になったという。
★2.箸が川を流れ下る。
『古事記』上巻 スサノヲは高天原を追われ、出雲の国、肥の河上(=斐伊川上流)に位置する鳥髪の地へ降り立った。箸が川を流れ下って来たので、スサノヲは川上に人がいると察して捜し尋ね、少女(=クシナダヒメ)を中において泣く老夫婦と出会った〔*『日本書紀』巻1・第8段本文では箸は流れず、「川上に人の泣き声が聞こえた」と記す。一書第1~第6にも、箸についての記述はない〕。
*高天原を追われたスサノヲが、まず新羅へ降下し、それから出雲へやって来る→〔山〕3bの『日本書紀』巻1・第8段一書第4。
★3.箸で身体を傷つける。
『日本書紀』巻5〔第10代〕祟神天皇10年(B.C.88)9月 倭迹迹日百襲姫命(やまとととびももそひめのみこと)は、夫(=大物主命)が蛇体であることを知り、驚いて叫んだ(*→〔箱〕2)。夫は「お前は私に恥をかかせた。今度は私がお前に恥をかかせてやろう」と言い、大空を踏んで御諸山(三輪山)に登って行った。姫は悔いてその場に座りこみ、箸が陰部に突きささって死んだ。姫は大市(おほち)に葬られ、人々はその墓を「箸墓(はしのみはか)」と名づけた。
『今昔物語集』巻31-34 天皇の娘である女のもとに、夜な夜な通う夫は、神であった。女は、夫が蛇体であることを知り、おびえて逃げる。夫は怒って女の陰部に箸を突き立て、女は死んだ。女の墓は、大和国・城下(しきのしも)の郡(こほり)に築かれた。現在、「箸の墓」と言われるのが、その墓である。
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