滑走路建設問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 00:35 UTC 版)
2007年(平成19年)に硫黄島に代わるアメリカ海軍空母艦載機の陸上空母離着陸訓練(FCLP)に利用する可能性が報道された。これに対し種子島・屋久島1市3町は反対決議を可決した(なお2018年(平成30年)2月16日までに「反対色が強い活動が原因で」米軍基地等馬毛島移設問題対策協議会は解散している)。2009年(平成21年)12月には、沖縄県宜野湾市にある普天間飛行場の移設候補地としても検討された。馬毛島開発は島で土木工事を進めており、4,000m級の滑走路を建設するとしていた。 2010年(平成22年)、防衛省は「新たな自衛隊施設の整備」として、馬毛島の自衛隊使用を計画した。それによると、同島を南西シフト態勢の上陸演習場、事前集積拠点、そして災害派遣時の物資集積場として使用するとしている。防衛省ホームページ「国を守る」に、防衛省はその利用方法を掲載している。また、種子島などの地元への説明会でも、同様の内容を提示している。 2011年(平成23年)5月には、北沢俊美防衛相が、米空母搭載機の陸上での離着陸訓練施設の候補として検討を指示していることが報道された。馬毛島は過去に汚職の舞台となり、また立石建設およびその子会社である馬毛島開発の社長を務めていた実質的なオーナー立石勲および法人としての立石建設工業株式会社が、法人税3億2000万円を脱税したとして在宅起訴され、2011年(平成23年)6月に有罪判決を受けている、などの事情から、防衛省では島の敷地の買い取りを前提としているが、立石はリースによる利用を主張していた。2011年6月になり土地の99.6%を所有するタストン・エアポート(馬毛島開発から商号変更)と防衛省の間で、用地交渉開始の合意書が締結された。また日米安全保障協議委員会(2プラス2)において、FCLPの移転先として馬毛島を検討対象とすることが共同文書に明記された。 報道等では、馬毛島開発が島を十字に横切る「滑走路」を建設しているとしている。馬毛島開発はあくまでも測量名目で樹木を伐採し表面を整地しており、この開発は鹿児島県への森林伐採届および林地開発の許可を得ていたが、実際には届出よりも大規模な伐採・整地・盛り土をおこなっているとされている。 2011年(平成23年)7月には、開発工事によりマゲシカが2000年以降半減しているとの研究者による調査結果が報道され、これを受けて実態調査を鹿児島県に要望する動きも出ている。 2011年(平成23年)9月には、タストン・エアポート社による乱開発により土砂が流出して漁場が破壊されたとして、地元種子島の漁師らが工事の差し止めや漁獲量の減少に対する慰謝料を求める訴訟を起こした。またこの他に、地元住民が行政(鹿児島県・国)を相手に開発の違法性を放置した責任を問う行政訴訟、および馬毛島の港周辺の入会地の一部を入会権を有する漁民の一部が旧馬毛島開発社に切り売りしたことの無効性を問う入会権裁判も起こしている。 なお、地元西之表市は、タストン・エアポート社による馬毛島の森林開発等の現状を確認するための立ち入り調査を再三申し入れているが、同社は一貫して拒否しており、2011年9月15日には鹿児島県が同社の大規模造成に対して違法伐採の疑いや課税上の問題があるとして現地調査の受け入れを要請している。 2018年(平成30年)7月15日、防衛省が馬毛島を海上・航空両自衛隊の拠点として活用する方針を固めたことが報じられた。鹿屋航空基地のP-3Cや新田原基地のF-15Jを馬毛島に展開し、離着陸や防空などの訓練を行うことを想定しているほか、航空自衛隊が導入し、新田原基地に配備することが検討されているF-35Bと、F-35Bの離着艦が可能な事実上の空母に改修される、いずも型護衛艦の訓練拠点として使用することも視野に入れている。ほか、航空自衛隊は南西方面で唯一の拠点である那覇基地が攻撃されることを想定して、馬毛島にF-15Jを分散配置することも検討している。 用地買収契約合意(後述)に当たり、西之表市の八板俊輔市長は2019年(令和元年)11月30日、FCLPの移転に対し「地元の理解は得られていない」と延べて慎重な考えを示した。これに対し菅義偉官房長官は地元の理解を求めて行く考えを表明した。
※この「滑走路建設問題」の解説は、「馬毛島」の解説の一部です。
「滑走路建設問題」を含む「馬毛島」の記事については、「馬毛島」の概要を参照ください。
- 滑走路建設問題のページへのリンク