比島防衛の作戦要綱とその矛盾点とは? わかりやすく解説

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比島(フィリピン)防衛の作戦要綱とその矛盾点

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 05:29 UTC 版)

レイテ島の戦い」の記事における「比島フィリピン防衛作戦要綱とその矛盾点」の解説

第14方面軍司令官山下大将が、大本営から指示され比島防衛作戦要綱次のとおりである。 第14方面軍司令官は、南方軍司令官に隷し全比島防衛任じるこのため米軍比島侵攻には、まず南部比島予想しこの際には海軍空軍をもって決戦とする。次に米軍ルソンに来攻する場合は、陸軍をもって決戦する。 全比島治安維持関し必要に応じ比島政府協力する。但し比島政府との交渉は、南方軍司令官及び大本営これに当る問題は1である。 はじめの一文に、第14方面軍司令官は全比島防衛任じると書かれてあるが、実際違っていた。それは日本軍指揮系統統一図られていなかったからである。陸軍海軍とが完全に独立していたことはいうまでもなく、同じ陸軍内でも第14方面軍の上機関である南方軍マニラにあり、方面軍司令官は、第4航空軍司令官第3船舶司令官と同じ立場にあって南方軍総司令官寺内寿一元帥隷下にあった。つまり、第14方面軍司令官フィリピン全島防衛という任務にもかかわらずフィリピン所在する同じ陸軍航空船舶部隊すらも指揮できなかったのである作戦考案一つにとっても海軍司令長官航空軍司令官船舶司令官協議してその賛同求めそのあと上司寺内元帥許可を得なければならなかった。 次に米軍ルソンに来攻する場合は、陸軍をもって決戦するという一文である。もともとフィリピン島国のためにアメリカ軍がどこから侵攻するのか、判断難し地域であった。この点についてフィリピン防衛に関する計画捷一号作戦)では、アメリカ軍侵攻フィリピン中南部予想して、その侵攻地点航空海軍総力をあげて決戦行い陸軍地上部隊基本的役割上陸した残敵所在部隊が叩くというものとされた。陸軍決戦主力となるのは、予想外れてルソン島上陸があった場合のみに限定されていた。山下大将はそれを自ら確認した上でルソン決戦準備進めていた。 ところが台湾沖航空戦において海軍戦果誤認から「空母11隻を撃沈など大戦果をあげた」とする誤った戦果報告天皇奏上し、御嘉尚の勅語まで発表された。国民は「アメリカ機動部隊せん滅の大勝利」に沸きかえった。しかし、大本営海軍部は、16日索敵機が台湾沖で空母7隻を含むアメリカ機動部隊発見したとの報告を受け、極秘戦果報告の再判定行い大戦果が誤認であることを確認していた。にもかかわらず、「幻の大戦果」であったという事実は、20日フィリピン防衛戦向けた陸海軍合同作戦会議においても陸軍には伝達しなかった。 この虚報乗ってしまった陸軍上層部は、レイテ島大規模な増援部隊送り地上決戦を行う「レイテ決戦」への戦略転換図った寺内司令官は、作戦根底から覆す命令山下大将下した一方台湾沖航空戦戦果疑っていた山下反対した。戦力乏しく制空権奪われている以上、レイテ兵員物資輸送するのはほとんど不可能に近いと判断したからである。マニラからレイテ島までの距離(約730km。これは東京-岡山と同じ)を考えれば山下判断は適当であった第14方面軍参謀たちも大本営南方軍レイテ決戦論に反対した。 しかし、10月22日寺内元帥山下司令官を南方軍総司令部呼んで叱り飛ばし、『元帥命令する』と一言述べた山下はもう何も言えなかった。そして、「海軍大戦果を上げているのに、陸軍後れをとってはならない」との空気の下、次のような南方軍命令下された。「一、驕敵撃滅神機到来である。 二、第14方面軍は海空軍協力し、なるべく多く兵力以ってレイテ島に来攻する敵を撃滅せよ。」 こうしてフィリピン攻防戦ターニング・ポイントであるレイテ決戦決定された。 昭和天皇戦後に「陸軍海軍山下意見が違ふ。斯様な訳で山下も思切つて兵力注ぎこめず、いやいや戦つてゐたし、又海軍無謀に艦隊出し、非科学的に戦をして失敗した。」「参謀本部は、現地事情知りぬいてゐる現地軍に作戦一任せず、東京から指揮する有様であつた。」と語られている

※この「比島(フィリピン)防衛の作戦要綱とその矛盾点」の解説は、「レイテ島の戦い」の解説の一部です。
「比島(フィリピン)防衛の作戦要綱とその矛盾点」を含む「レイテ島の戦い」の記事については、「レイテ島の戦い」の概要を参照ください。

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